サンクネット 代表取締役社長 片町吉男氏

事業を継続していくなかで、リスクマネジメントは企業にとっての重要な課題である。企業がアウトソーシングを活用する理由の1つとして、事業継続性の確保がある。言い換えれば、アウトソーシング事業者には、事業継続性を担保できる体制構築が求められるというわけだ。

そうしたなか、アウトソーサーであるサンクネットが、本社、コールセンター、物流センターの立地ひとつをとっても、事業継続性を意識した取り組みを行い、委託元の事業を継続できる体制を整えている点は見逃せない。

例えば、本社がある江東区木場は、皇居からも約15分という距離にあり、災害時の各種規制などを受けにくい環境にあるとの判断をもとに選ばれた。そして、物流センターを埼玉県入間郡三芳町に置いているのも、岩盤の強い環境であり、事業を継続できる立地であることが背景にある。またコールセンターも、東京、埼玉、名古屋、大阪に設置。分散することで事業継続が可能に体制を確立している。

東日本大震災の際も、同社は事業を継続することができた。複数のネットワーク回線を持っていたことで、コールセンター業務も滞らなかったほか、社員の安否確認にもこのインフラを活用できた。また、震災による被害情報を収集するとともに、コールセンターやWebサイトにおける対応についても、各社がどんな形で情報を発信しているのかを収集し、それをもとに、顧客に対し適切な方法を迅速に提案した。

そのほか、エンドユーザーがコールセンターに電話をした際の待ち時間に音声案内の後ろで流れる音楽にも配慮し、音楽がない音声案内を急遽録音して、それを流すといった対応も行ったという。

「お客様の事業を継続するためにはどうするか、さらに災害時にはどんなサービス内容に変更すべきかといったことを常に考え、それに対する体制づくりを進めてきた。アウトソーシング事業者としては当然のこと」と、片町吉男社長は語る。

従業員が複数の業務を担うことができる「多能工化」していたことも、今回のような緊急時にはプラスに働いた。

コールセンターでは、お客さま企業の電話オペレータとして業務のみに従事するだけではなく、空いた時間にデータ処理などの付帯業務も行うといった体制を構築。さらには、物流センターのスタッフも、物流センター内に設置されたコールセンター施設を活用して、オペレータ業務を支援することも可能になっている。こうした柔軟性もサンクネットの特徴だ。

サンクネットは、2012年には設立15周年を迎えることになる。片町氏は、「30年、40年と長生きできる企業になるためには、何が必要かということをもっと考えていきたい」と語る。

その回答の1つが「より専門性を高める」ことだ。これまでの連載でも紹介してきたように、同社は、「テクニカルサポートアウトソーシング」と「ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)」の2つの事業を抱え、それぞれにフィールドサポート、コールセンター、物流センターの各部門を活用したサービスを展開している。

「すべての業務において、さらに専門性を高めることで、より満足していただける体制を構築したい」と片町氏は語る。

専門性の強化という意味では、同社のグループ会社や資本提携会社にも見て取ることができる。POS・レジ・デジタルサイネージといった店舗内機器に特化した保守・サポート専業会社、流通倉庫運営に特化した物流専業会社などがその一例だ。

「専門性を持った企業を広げていくことで、アウトソーシング展開ができる業種の専門性を広げ、新たな柱を増やしていきたい」というのが、片町氏の方針だ。

現時点では具体的な業種ターゲットを想定しているわけではないが、すでにアウトソーシング事業を開始しているデザイン、印刷、人材教育、ロボットといった領域での専門性強化などが見込まれる。

「創業以来、売上高、利益ともに微増ながら右肩上がりで成長を遂げている。これからも少しずつ成長していけばいいと考えている。むしろ、大切なのはお客様に喜んでいただけるアウトソーシングサービスを提供すること。継続したサービスを提供することが重要だ。創業以来、現在まで会社を存続できたのは、社会において、当社の存在意義があるということ。30年後、40年後も存在意義がある会社でありつづけたい」と片町社長は語る。

サンクネットは、「私たちは、お客様企業の最良のビジネスパートナーを目指します」と宣言する。それがアウトソーシング事業者にとっての基本姿勢だと言え、その姿勢はこれからも変わらないだろう。