Google Analyticsを活用し、「サイトに訪問したユーザーがどのコンテンツを経由し、コンバージョンに至ったのか」を理解し、より効果的なコンテンツの制作やキャンペーンの運用を行うことを目的に進めてきた本連載。

第4回となる本稿からは、コンテンツを閲覧しに訪れたトラフィック(以下、訪問者)の質を把握し、各キャンペーンの効果測定を行う「具体的な計測設計」と「レポートの活かし方」という話に移りたいと思います。

自社製品のブランドサイトであれ、購入プロセスを提供するeコマースサイトであれ、ビジネスで運用されるWebサイトにはそれぞれ、明確な存在目的があります。その目的を達成するため、各担当者は工夫を凝らしてサイトを運営・分析しています。

特に集客のための戦略では、さまざまなタイプのキャンペーンを同時に走らせ、DSPやリターゲティング広告など各種ベンダーの広告サービスを利用し、それぞれのキャンペーンに合ったクリエイティブを作っているほか、最終的にはそれらのキャンペーンが相互に補完するよう設計し、サイトの目的達成を目指しているのではないでしょうか。

それぞれのターゲットやフェーズに合わせた複数のキャンペーンを運用するわけですから、それぞれからデータを収集するだけでなく比較し、有効な施策は更に強化しつつい、思ったほどの効果がでていないクリエイティブは変更案を打ち出すなど、施策の改善を常に行っていかねばなりません。

ディスプレイ広告などを用いたキャンペーンの効果を計測してみよう

では、具体的にどのように効果を計測していくのかという「計測設計」について考えてみましょう。ここでは例として、キャンペーンチャネルの集客に、ディスプレイ広告とディスカバリー(記事のレコメンデーションによるコンテンツ拡散)の手法を採用したとします。

その際、次のチャネルを使って、それぞれ下記のようなキャンペーンを同時に走らせます。この事例では、商品Aと商品B、ブランド、さらには商品カテゴリに関するキャンペーンを、ディスプレイ広告とディスカバリーを使って実施するとします。

次に、上記の表の右側にあるキャンペーンサイトとその期間、対象、目的を整理し、それぞれの評価指標と目標値を整理します。

ここまで整理されたら、次は計測の準備に入ります。

読者のみなさんも、それぞれのキャンペーンを複数の手法で実施していると思いますが、ここでは「実際にどのキャンペーンが最も効果的か」の計測を目的に、それぞれのキャンペーンの「タイプ(ディスプレイorディスカバリー)」、どの企業の広告サービスかという「ベンダー」、そしてキャンペーンの種類を区別するため "UTM タグ" を活用します。

UTM(Urchin Tracking Module) タグとは?

UTM タグとは、キャンペーンサイトへ誘導するリンクURLの後ろ部分に付与するクエリ文字列のこと。読者のみなさんもメルマガやバナーなどをクリックした際に、URLの後ろに付いた長い記号を見たことがあるのではないでしょうか。

ここでは次のように、タイプ・ベンダー・キャンペーンを区別するために3つの階層構造を設定し、UTM タグを付与していきます。この例では、以下のように割り振ってみます。

そして、先ほどのキャンペーン構造全体を、UTM タグとそれぞれの値に置き換えます。

例えば、商品Aのキャンペーンサイト「www.xyz.com/prodA/story/1.html」への誘導を目的に、2015年の第4四半期、ディスカバリーを使ってキャンペーンを実施した場合のURLは、次のようになります。

UTM タグは、キャンペーンタイプ・ベンダー・キャンペーンのそれぞれで共通の値を設けるため、キャンペーンページへの訪問者の中で「ob社のディスカバリーサービスを通じて来た訪問者の数」や「ディスプレイ広告を比較すると、どのキャンペーンが最も効果的なのか」など全体像から細かいレベルまで分析することができます。

以下は、あるキャンペーンでディスカバリーとディスプレイ広告を活用したときの集計です。

タグ付けしたUTMを活用し、さらにデータを深掘りすることも可能です。たとえば、ob社のディスカバリーを活用した場合に最も効果的なキャンペーンは何なのかを見る場合、ここから discovery/ob を選んで、「キャンペーン」をプライマリディメンションに選ぶだけで、それぞれのキャンペーンの内訳を見ることができます。

そしてこの数値から、各キャンペーンで設定した目標値と実際の数値を比較してみましょう。このとき、キャンペーンの目標に対するKPIを見ることが重要であり、すべてを同じ指標で評価することはまったく意味がありません。

また、ある特定のセクションの訪問者やPVなど、Google Analyticsにある既存のレポート機能で分析する指標もあります。この場合でも、UTM タグでキャンペーンをタグ付けすれば、例えば「prodA_promoキャンペーンで集客されたユーザー」という条件でセグメントを作り、商品Aのセクションでの訪問者数やPVを簡単に分析できます。

まとめ

さて、コンテンツを閲覧しに訪れた訪問者の質を把握し、各キャンペーンの効果測定を行う「具体的な計測設計」と「レポートの活かし方」をご紹介しました。これからお分かりいただけたかと思いますが、集客キャンペーンからの訪問者の質を把握し、各キャンペーンの効果測定を行うためには、必ずUTM タグを活用するようにしましょう。

理由としては、参照元 URL を用いた分析では、UTM タグを使った場合のような整ったフィルタかけや比較の実施が不可能となることがあり、Google Analyticsでは、「広告キャンペーンはタグ付けされている」という想定で作動するレポートがいくつか設けられていることから、UTM タグをつけていないキャンペーンが存在すると、レポートの数値は的外れになってしまうためです。

さて、次回は、キャンペーンとコンテンツの効果を比較したのち改善サイクルを動かすため、その準備とプロセスについてお話しします。

執筆者紹介

アウトブレイン ジャパン 筒井 祐介

世界規模のコンテンツレコメンデーションプラットフォームを活用し、企業のコンテンツマーケティングを支援するアウトブレインジャパンのシニアアカウントストラテジスト。Web解析ツールのエキスパートとして、データを用いたマーケティング施策改善のためのコンサルティングを行う。アウトブレイン入社前は、オーストラリアを拠点に約8年間、デジタルマーケティングの分野でサイト解析や効果分析の業務に携わる。なお、アウトブレインの公式Webサイトは、こちらから。