5.波形/設定の保存/呼出
デジタル・オシロスコープの内部でデジタル・データ化された「画面イメージ」や「表示波形」や「パネル設定」は簡単に、メモリに保存したり、オシロスコープに再度呼出したりすることができます。波形/設定の保存/呼出はデジタル・オシロスコープならではの機能です。波形の保存/呼出機能と設定の保存/呼出機能を使えば、遠い現場にあるオシロスコープのデータを活用したり、繰返し行わなくてはならない作業を省略することができ、仕事をおおいに効率化できます。
(1) 画面イメージを(写真に撮ったように)保存 > PCで呼出す
画面イメージを写真に撮ったように保存できます。BMP形式やJPEG形式やPNG形式でUSBメモリに保存しますので、PCで開き、レポートの作成に使えます。
(2) 波形数値データをCSVフォーマットで保存 > PCで呼出す
表示波形を数値データとして保存できます。保存形式としてCSVを選べば、USBメモリに保存してPCで開き、表計算ソフト(Excelなど)で解析ができます。
(3) 波形数値データを保存 > 後に、波形を画面に再現する
表示している波形を数値データとして保存できます。保存形式として機器依存の特殊な形式(内部形式と呼ばれる)を選び一旦USBメモリに保存しておけば、後に、同種のオシロスコープに呼び戻すことができます。内部形式の数値データは、USBメモリからオシロスコープ内部の比較用メモリ(リファレンス・メモリと呼ばれる)に移動され、画面上にリファレンス・メモリ波形として表示されます。
表示波形をリファレンス・メモリに直接保存することもできます。リファレンス・メモリに保存された波形は、すぐに、オシロスコープ画面にリファレンス・メモリ波形として表示することができます。リファレンス・メモリに保存された波形は自由度が高く、移動させたり、拡大/縮小させたりできますので、オシロスコープで取り込まれたライブな波形と比較することが容易です。装置の特性改善を施した場合の効果を確認するため、改善前の波形をあらかじめリファレンス・メモリに保存しておき、改善後の波形をオシロスコープに入力し、リファレンス・メモリ波形と比較することができます。
使用例 波形の保存・呼出機能を使えば、時間的に制限のある現場において、次々と波形を保存しておき、後でじっくりと解析することができます。
(4) 設定を保存 > 後に、同じ設定を再現する
オシロスコープのパネル設定(垂直軸、時間軸、トリガ・レベルなど)が保存できます。保存先としてUSBメモリおよび内部設定メモリが選べます。後でオシロスコープに呼び戻すことにより、まったく同じ設定を復元することができます。同じ機種(シリーズ)であれば互換性がありますので、遠隔地にあるオシロスコープで保存したパネル設定を、机上のオシロスコープで再現することができます。
使用例 今使用しているパネル設定を、後日再度使いたいとか、設計と製造との間で同じパネル設定を使ってデータを検証したいとか、パネル設定に依存するバグを再現させたいとか、工程に合わせた複数のパネル設定を切り替えつつ製造する場合などに効果を発揮します。
著者
稲垣 正一郎(いながき・しょういちろう)
日本テクトロニクス テクニカルサポートセンター センター長