クラウドをベースとしたシステムを検討する際、プラットフォームとして、大きな注目を集めているOpenStack。さまざまな活用メリットがある一方で、問題点もまだ抱えており、双方を適切に理解しておく必要がある。今回は、OpenStackを利用するうえでどのようなメリットあるのかについて説明しよう。

OpenStackを利用するメリットとしては、「プライベート/パブリック双方のクラウド基盤として構成可能」「環境ごとに必要な機能のみを柔軟に利用可能」「オープンだからこそ多彩な機器との連携が可能」「多くの企業や開発者によるスピーディな機能実装」が挙げられる。以下、それぞれのメリットについて紹介しよう。

プライベート/パブリック双方のクラウド基盤として構成可能

OpenStackを利用することで、社内システムとしてAWS(Amazon Web Services)のようなIaaS基盤を実現することが可能になる。このシステムを外部に公開すれば、IaaSサービスの事業を始めることもできる。

また、豊富なサードパーティ製品との連携機能によって、既存の基盤にも対応するので、投資の保護にもつながるほか、IaaS基盤を利用したい開発者に対してAPIを公開することも可能だ。

さらに近年では、DBaaS(Database as a Service)のようなPaaS機能の追加も積極的に行われているため、OpenStackを導入することでさまざまな可能性が広がっていく。

環境ごとに必要な機能のみを柔軟に利用可能

OpenStackは各種モジュールが独立して開発されており、WebのREST APIで相互接続される構成となっている(図1)。これらすべてのモジュールは独立して動作可能なため、必要な機能だけ利用することもできる。

例えば、ストレージサービスのモジュールのみを用いることで、社内のマルチベンダストレージへのアクセスをAPIで標準化することも可能だ(図2)。また、GUIを独自開発したい場合も、APIが公開されているため容易に行える。このように、OpenStackは柔軟なシステム構成を取ることができる。

図1:APIによる各種モジュール間の相互接続

図2:Cinderのみを用いた、ストレージアクセスの標準化

オープンだからこそ多彩な機器との連携が可能

近年では、ネットワーク機器やストレージ機器のベンダーがOpenStack用のドライバーを提供することが標準となっており、OpenStackはさまざまな機器に対応できる。もちろんオープンソースをベースとして、すべての機能を提供可能なように設計されている。

信頼できる既存の機器を利用したい場合や先進的な機能を利用したい場合など、環境に応じてサードパーティの機器が利用できるため、ユーザーにはさまざまな選択肢が提供される。

多くの企業や開発者によるスピーディな機能実装

オープンソースソフトウェアにおいて、問題点の改修や機能追加が継続されるかどうかは、開発コミュニティにかかっている。OpenStackではコミュニティの活動が非常に活発で、多くの企業が参加している。

各種統計情報を表示するサイトで最新バージョン「Juno」の統計情報を見ると、130以上の企業が参加して開発されたことがわかる(図3)。このようにコミュニティ活動が活発なため、OpenStackは今後も安心して利用できると言えるだろう。

図3:「Juno」のコントリビューション状況

以上が、OpenStackを利用することで得られるメリットとなる。ただ、先にも述べたように、OpenStackを利用する際、注意点もいくつかある。そこで、次回は、OpenStackを利用するうえでの注意点を紹介しよう。

荒牧 大樹
ネットワンシステムズ株式会社 経営企画本部 第2応用技術部 クラウドソフトウェアチーム
シスコシステムズの認定資格「CCIE #14716」を保持。OpenStackおよびCisco/VMwareなどのさまざまなクラウドソフトウェアを担当している。