ロボット活用で重要なことは、どこを対象にするのかをよく考えること

こうした技術を組み入れることで、双腕ロボットならこれまで人が行っていたありとあらゆる作業を代わって受け持てたり、これまでの単腕のロボットアームではできなかった作業に利用できたりするのかというと、そうではない。どこにまず注力するかということで、製造のどのラインを対象とするかということを考える必要がある。

ラインとしては大まかに分けて、メイン、サブ、そして配膳(物流)の3種類があるわけだが、「製品を組み立てる」という話になると、その製品を構成するパーツを組み立てるというパートもあれば、そうしたものをメインラインに供給したりとか、そうしたサプライパーツを組み立てるためのもっと小さな部品を取ってきたり身近なものを取ってきたりという配膳のパートなどの自動化が考えられるという。

そしてその内でさらにどの部分を効率化するのか、ということになるわけだが、「作業のムダ廃止」、「付随作業の削減」、「正味作業の削減」の3点を挙げる。結局、さまざまなことを自動化したりロボットで支援したりするというのは、どこを対象にするのかというのをよく考えないといけないという。実際、さまざまなメーカーと話をすると、メインの部分の正味作業をやってくれるということも将来的には考えられるそうだが、現在、人がやっていてボトルネックになっているのが、配膳的なところの物理作業だそうだ。

例えば溶接ロボットなどでも、溶接すること自体はもちろんロボットが自動でやってくれるわけだが、箱からパーツを取り出してセットして、溶接し終わったパーツをまた別のところに運ぶといった作業が、実はまだまだ人が関わっているということで、そうした部分の作業の自動化を行えないかという要望が、大きな話として、業種を問わずさまざまなメーカーに聞くことができるとする。

その配膳作業の改善事例の1つとして、広島の中小企業にランダムピッキングロボットを入れようとした時に、ネックになったこととして、前述したようなものの認識や計画を立てるといったことがあったとする。そういった諸々のことを現場で入れていくとなると産総研としては実際の現場を持っていないので、画像14にあるように、まず広島県と共同し、経産省中国経済産業局の支援も受け、広島県立総合技術研究所やひろしま生産技術の会、東友会などの協力を得て、人手に頼っている部品供給の自動化の開発活用、連携体制構築を進めているという具合だ。ここで得られたノウハウから、次は中国地域に展開し、最終的には全国展開するという計画である。

なお、中小企業に展開しようとした時に技術的な話も当然あるわけだが、例えば細かい部品というのは型が変わったら形状もわずかだが変わってしまうのだが、そういうわずかな変化にも対応できるようにするのに、毎回メーカーに頼るのも大変なので、現場で解決できるように、また課題も見出して改善していけるように、そういうことを使いこなせる人、それを運用できる人といった人材育成も結構大きな話だろうという。技術開発だけでなく、その技術をどう伝えるかという人材育成も課題ととらえ、取り組みをしているのである。

画像14。産総研が取り組んでいる、人手に頼っている部品供給の自動化の各フェーズにおける流れ

続いては少し先の話ということで、メインの部品組み立て作業の自動化について。例えば、スナップジョイントがあるようなパーツを、ツメを引っかけてカチっとはめるようなパーツの組み立て作業では、どうしても位置制御だけでは難しいそうである。現場にもう少しで入る、というレベルではないそうだが、力制御、モーメント制御も含めて基本的な制御の仕組みを用意して、それぞれの場面に対応できるようなものも研究・開発が進められているとした。現在、産総研で開発が進められている技術は、制御側の切り替えに基づく組み立て作業を実現しており、「Control Basis Approach」と呼ばれる位置/力制御の一般化、制御側の切り替えが容易な仕組みとして、画像15のような流れでそれを実現している。

画像15。部品組み立て作業の自動化の流れ