未知なる環境に災害対策ロボットをいかに対応させるのか
さて、今回から複数回にわたって、「次世代ロボット研究開発動向」の講演5人目として、(福島)原発用の探査ロボットを題材とした、HRP-4C 未夢の開発者として知られる知能システム研究部門の横井一仁副研究部門長兼ヒューマノイド研究グループ長(画像1)による「災害対応ロボット」をお届けしたい。
講演はまず、2013年12月20・21日開催の米国DARPA ROBOTICS CHALLENGE(DRC:画像2)の紹介からスタート。この技術競技会は、もちろん、米国の国防高等研究計画局ことDARPAの主催であることから、米軍がロボットを軍事利用するための側面がゼロということはないはずだが、災害対応ロボットを対象としている(福島原発の事故も開催のきっかけの1つということらしい)。
具体的には、「ビークル(移動能力)」、「テレイン(不整地踏破の移動能力)」、「ラダー(ハシゴを登る能力)」、「デブリ(ガレキ除去能力)」、「ドア(ドア開閉能力)」、「ウォール(壁に穴を開ける能力)」、「バルブ(バルブを回す能力)」、「ホース(ホースで放水する能力)」の8つのタスクに挑戦する形だ。ヒューマノイドロボット限定ではないが、現在エントリーが確認できる6機の内、4機が完全な2足歩行型だ。残りの1機は2脚だが足が車輪になっているタイプ、もう1機は4脚型となっている。
日本において、災害対応というと現在は自衛隊の大きなミッションだが(もちろん、消防や警察なども動くが)、実は米国でもハリケーンや大型プラントの大規模事故などの緊急事態に国防活動の一環として軍に出動要請が出る。そういう時に人命尊重という意味からも、それらの事態に対処できるようなロボットシステムが求められているというのが、少なくとも表向きの理由だ。
なお、DRCには産総研が直接エントリーしているわけではないが、米国以外では唯一、日本の東京大学のベンチャーであるSCHAFT(先日、Googleによる買収報道がされた)がエントリーしている。SCHAFTの開発した機体は、実は名機「HRP-2 PROMET(プロメテ)」(画像3)をベースとした2足歩行型で、身長1480mm、体重95kg、全幅は1309mmとなっている(画像4)。
それでは産総研は現在、災害対応のロボット開発としてどのような研究を行っているのか。そこで紹介された技術の1つが、「未知環境での遠隔操作」だ(画像5)。災害現場は、福島原発のように水素爆発でガレキが散乱し、未知の環境となってしまうことがある。そういう環境に送り込まなければならないとなると、ロボットに複数のカメラを取り付け、熟練オペレータが操作を担当したとしても非常に難しい。
そこで、まずはレーザーレンジファインダ(LRF)などを駆使して計測した周辺環境のデータをシミュレータの中に取り込み、そこで行き先を指示し、ロボットに半自動で歩いて行かせるというのがこの技術である。同技術の撮影許可は出なかったので映像や画像では紹介できないのだが、障害物のある環境でプロメテを半自動で歩かせるというデモンストレーションを実際に見ることはできた。
こうした技術があるのであれば、ぜひ2回目、3回目のDRCが開催されるのであれば、産総研もトライしてほしいものである(産総研がSCHAFTに技術協力をしているのかどうか、もししているのであればどのような形かということまでは確認できなかった)。