実際の役立ち度合を測定することも視野に
それでは具体的にどのようにしてそれを開発に反映させていくのか。それが、画像10のICFに基づく開発コンセプト(アセスメント)シートだ。その記入例が、画像11である。これまでは、動作単体の、例えば「移乗」ということであれば、持ち上げてベッドから車いすに移す(もしくはその逆)というところだけを考えがちだが、それを「何のために」移乗するのかということを考え、移乗した先で排泄であれば、トイレで排泄しやすいように移乗できるかどうか、そういう生活の中でどう使われるかどうかを意識してしなければならないというわけだ。現在は、そういうコンセプトを、確認しながら開発が進められているのである。
また、実際に開発した後、介護施設に導入して、ロボット介護機器がどういう風に役に立っているか、例えば移乗の回数はどの位あってどの位効果があるのか、介護活動の業務を記録して分析できる機器も開発を進めているという(画像12)。
さらに、産総研製のヒューマノイドロボット、ここではHRP-4C 未夢が紹介されていたが、ヒューマノイドロボットや人体シミュレータを介護者や被介護者の代わりとして、力学面の効果評価に使うということも考えられている(画像13)。介護者用としては、機器を利用することで腰にかかる腰痛の原因となり得る力が減少しているかということ。被介護者用としては、機器の間に発生する圧力や剪(せん)断力(快適性や床ずれ=褥瘡に関連する)がかかっていないかなどだ。人ではなかなか測定できないようなものを、こうして行うというわけだ。
なお、この後、講演では割愛されたが、「性能評価指標・検証」についても触れられている。性能に関する評価項目は、「機器の有用性や安全性を得るために機器が持つべき性能」、「ロボット介護機器の各重点分野で定義されている要件を含む」、「既存の福祉用具などの関連する規格やガイドラインなども参照する」としている。また、性能の定性的/定量的な基準を定義し、その確認方法を「性能検証手法」として定義。また、新たに必要な検証方法を開発するとした。
さらに、リスク安全性に関しては、「NEDO生活支援ロボット実用化プロジェクト」で出てきた成果を活用して、リスクアセスメントシートの雛形(画像14)を作って、各企業には使ってもらっているという。
そして倫理的注意点としては、「倫理審査の必要性(被験者保護、研究資金の適切な活用(税金→質の担保)、広告表示の客観性(企業として)」と、実験計画の注意点を挙げる。被験者負担の注意点としては、「"garbage in , garbage out"にならないように」ということと、「実験計画の注意点(結果の一般化、ケアサービスとロボット介護機器、生活面への影響)」とした。
また、プロジェクト全体の今後の開発スケジュールは、画像15の通り。事業全体は5年間(平成30年度まで)、重点分野の開発は2もしくは3年間となっている。毎年ステージゲートの審査があり、重点化として企業(ロボット介護機器)の数が絞られていったり、新たなテーマが立てられたりしながら、事業は進められていくとした。
そしてロボット介護機器を導入する時の対象施設だが、老健/特養と呼ばれている施設や、民間の有料老人ホームなどがあるが、ターゲットは、サービスの質の向上を目指すことで入居率および利益率のアップにつながる民間有料老人ホームが、ロボット介護機器を導入することにマッチしているという。ロボット介護機器は、こうした民間の有料老人ホームからまずは導入されていくだろうとした。
なお、今回の事業の公式サイト「介護ロボットポータルサイト」には、47社(機)のロボットの詳細を確認することも可能だ。そのほか、今後策定されるようなものも、ここで随時公開されていく予定である。