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部下の報告の仕方に困っています。一生懸命話をしているのはわかるのですが、お世辞にもうまい報告とは言い難く、話を聞いているうちにイライラしてくる自分に気付いて反省することもあります。そんな気持ちを抑えて指導してはいるのですが、なかなかうまくいかず、どうすればいいのかなぁ……と考えているうちに部下の報告が終わってしまう、ということを繰り返しています。報告下手な部下に対するいい指導方法はあるのでしょうか?(埼玉県 TYさん)

上司と部下という関係の中で、どれだけ多くの時間が報告に割かれているでしょうか。

TYさんのように、妙に時間がかかる部下の報告や要領を得ない報告に悩まされている上司は多いことでしょう。近年では、組織のフラット化やプロジェクトチーム化が進んでいるために、1人の上司が多くの部下をマネジメントしています。このような環境では、数多くの部下の報告を聞くこと自体が上司の仕事だとも言えますし、報告のクオリティがあなたの仕事に直接的に関わってくるわけです。

忙しい合間にだらだらと何を言いたいのかがわからない報告を聞くのは、確かに苦痛でしょう。その意味においては、報告の質の向上は重要な意味を持ってきます。

まず「報告」の意味を再確認してみましょう。

ほうこく【報告】
つげ知らせること。特に、研究や調査の結果、与えられた任務の結果などについて述べること。また、その内容。 (三省堂提供「大辞林 第二版」より)

大事なのは、「与えられた任務の結果などについて」という部分です。

上司が受けたい報告とは、自身が与えた任務についてどのようになったのかという結果です。上司は、部下に仕事を与えた段階で、頭の中でいくつかの仮説を立てているはずです。その仮説に合致したのか、あるいは想定外の結果に終わったのか……これを一刻も早く知りたいのに、部下がその結果を話さないということがイライラの原因の大半を占めているのではないでしょうか。

耳の痛い情報を歓迎する

ところで、部下の報告の仕方に困っているとのことですが、これはTYさんにとって「いつものこと」なのでしょうか? というのは、部下が報告しなければいけない内容によって、報告の仕方が変わるということはおおいにあり得ます。つまり、良い内容なのか、悪い内容なのかによって報告の出来が違うのではないか、ということです。

上司や会社にとって望ましい結果を報告するのであれば部下は気楽でしょう。問題は、部下がマイナスの内容を報告しなければならない時です。

例えば、悪い内容の報告を受ける時、あなたは部下に対してどのような表情をしていますか? 部下を責めるような、怖い表情をしていることはないでしょうか。あるいは報告の途中で、「なぜそんなことになったんだ! 原因は?」などとさえぎっていませんか?

上司が悪い内容の報告を冷静に聞く態度を身に付けないと、部下はマイナスの報告をなるべくぼかそうとしてしまいます。結果を話す前に、様々な理由や環境を延々と伝え、上司の怒りに火がつかないように工夫してしまうのです。これでは当然、わかりやすい報告になるわけがありません。

悪い情報にこそ、組織にとってプラスに転化できる大きな意味を持つ場合が多いものです。どこを修正すればいいのか、何が予測できなかったのかといったことを早く知ることは、上司にとっても組織にとっても重要です。どんな情報も冷静に聞く空気がある部署なら、部下も悪い情報を隠そうとすることはなくなり、わかりやすい報告の仕方が育つ土壌があると言えます。

悪い情報こそ早く報告する、そして上司がそれを受け入れるという環境を作ることを意識し、事あるごとに部下にこのことを伝えることで、部下の報告の仕方や報告内容は徐々に変わってくるはずです。

実際に、内容で報告を判断するのではなく、報告の仕方にも注目しなければならないということは難しいものです。

極端なことを言えば、「良い報告」に緊急性はないと言ってもいいでしょう。良い報告なら、報告の仕方がおかしかったとしても実害はさほどないはずです。問題は、マイナスの情報です。これはすぐに対応しなければいけないケースが多いはずです。だからこそ、マイナス情報の報告をしてくれた部下に、「大切な情報をしっかり伝えてくれてありがとう」という姿勢が伝わるコミュニケーションが重要になってくるのです。

執筆者プロフィール

佐藤高史 (Takashi Sato)
株式会社コラージュ代表取締役。ビジネスコンサルタントとして人材教育・研修などで活躍する傍ら、実はプロのミュージシャンとしても活動中。

『出典:システム開発ジャーナル Vol.6(2008年9月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。