Q

「私にはもうできません」 ある日突然、プロジェクトのリーダーを任せている部下から相談を受けました。確かに、度重なる予算や人員の削減といった要素がプロジェクトに負荷をかけていたのは事実ですが、「できる人材」だと思って仕事を任せていたので……どのように対処すればいいのかわからなくて困っています。(IKさん)

A「できる人」は悩みを隠す

あなたが安心して仕事を任すことができる「できる部下」は、聞いてみないとわからない(聞いてもわからない)悩みをたくさん抱えているはずです。

「もはや利益の見込みが立たなくなったこのプロジェクトを続ける意味はあるのだろうか」「このままだと倒れるかもしれない」「いつもできないヤツの尻拭いばかり」「言うことを聞かないプロジェクトの問題児」「メンバー同士は悪口ばかり」「ルール命で融通がきかない社内の管理部門」「いつも仕事ばかりの旦那にイライラする妻」……そして、「言うことだけは立派だが、まったく仕事をしない上司(もしかするとあなたのことです)」

このようなことを潜在的に抱えながら仕事の負荷がどんどん増える状況になれば、どんなまともな人間でも、今回の相談内容のように、どこかでポキッと折れてしまうことは目に見えています。

「できる部下」はこのようなことを表に出さずに仕事を黙々とこなすから「できる」と思われている部分もあるはずですので、彼らはこのような要素をどんどん無意識のうちにため込みます。

このようなタイプの人材が、うつ病を発症することが多いことはよく知られていますが、彼らはギリギリまで追いつめられないと危険信号が表面化しないため、結果として手遅れになってしまうケースが多々あります。

彼らが長期欠勤を余儀なくされるようになれば、プロジェクトそのもに大きな問題が生じることは避けられません。ですから上司のあなたとしては、このような状況を「任せているから」と言って「放置」するのではなく、対処することが求められます。

『出典:システム開発ジャーナル Vol.9(2009年3月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。