英国に本拠を置くハイテク市場動向調査会社であるOmdia主催の「第44回 ディスプレイ産業フォーラム」が、オンデマンドバーチャル形式で2023年2月末まで開催されていた。そこで、その中から、主要な講演内容について複数回に分けて紹介したい。
同フォーラムの冒頭は、Omdiaディスプレイ担当シニアディレクタのDavid Hsieh氏が登壇。「2023年以降のディスプレイの10大トピックス」を以下のように紹介した。
- ディスプレイの歴史の中で、2022年は出荷数量が初めて減少した年となった。2023年は、出荷面積は回復するものの、出荷数量が回復するのは2024年以降になるだろう。出荷金額は、2021年に前年比26%増となった後、2022年に同22%減となった。2023年以降、毎年数%ずつゆっくりと回復していくだろう。
- TVの買い替えサイクルは、従来は6~7年ごとだったが、最近は大画面を求めて買い替えサイクルが3~4年と短くなっている。
- ディスプレイの供給過剰の状態は終わったが、供給不足になるのは早くて2023年下期以降だろう。
- 2022年以降、TV用パネルの生産能力増強計画はなく、増強計画があるのはIT向けやOLEDだけである。古い製造ラインは閉鎖の方向にある。
- 産業用およびパブリックディスプレイは、AUO、Innolux、BOEやTianmaなどのパネルメーカーが注力しようとしている。
- 新しいTV向けパネルは大型化の傾向にある。大型化にはミニLED、QD、OLED、QD OLEDやマイクロLEDなどさまざまな選択肢がある。
- 新型コロナ感染拡大による、いわゆるコロナ特需がITディスプレイの需要を押し上げたが、その後供給過剰でもっと新しい技術、特にOLEDを求める声が高まった。
- モバイルOLEDの普及率は40~50%に達しており、中国勢が韓国勢を脅かすほどシェアを獲得している。
- 折り畳み式や伸縮可能な(トランスフォーマブル)技術は徐々に実用化しているものの、顧客の好みはいまいちで、最適な応用分野はこれから開拓しなければならない。
- 2021-2022年に景気の著しい乱高下を経験した後、パネルメーカーの戦略は、「経営多角化で成功をめざす」か「不採算部門をたたんで生き残る」かの厳しい二者択一になってきている。
ディスプレイ業界天気図 - 最悪の時期を脱し晴れ間が見える
Hsieh氏に続いてOmdiaのディスプレイ技術・市場調査リーダーのCharlie Annis氏が、ディスプレイ産業天気図を示した。
ディスプレイ業界は、20年以上の歴史の中で最悪ではないにしても、ダウンサイクルにあり、短期中期の見通しは依然とし不確実性が漂っている。この非常に困難な環境にもかかわらず、FPD業界の先行指標とモデル化された指標は、最悪の時期は過ぎ去ったことを示唆しており、楽観的な理由としては、以下のようなものが見られるという。
- 現在、パネルメーカー、セットメーカーともに在庫はなく、売り切れ状態になっている
- 最近のショッピングホリデーでは、テレビの大型化需要の顕著な伸びが見られた
より多くの購入活動が予想され、それはゆっくりではあるがうまくいけば着実な回復を開始するはずである。
さらに、Annis氏が楽観視する根拠として次のような事柄が挙げられるという。
- FPDの需要は、より大型パネルへのシフトにより、将来も十分に成長すると予測されている。2022年から2027年までの面積需要は、20%増加するとモデル化されている。FPDの使用は、特に自動車、AR/VR、パブリックディスプレイなどの新しいアプリケーションで増加し続けている。
- ディスプレイ技術は、アプリケーションの範囲を拡大し続けている。
- AppleのスマートフォンであるiPhoneへのOLEDの採用促進は、Gen 8.7 RGB OLED、マイクロLEDやOLEDoS(OLED on Silicon:ガラスの代わりにシリコンを使用することで画素サイズの小型化とパネルの薄型化を実現する新規ディスプレイ技術)などの技術を進化させ、新工場への投資を促進させている。
このため、2022年は、ほぼ雨だったディスプレイ業界だが、2023年には、晴れ間が出て曇りのち晴れ状態に改善される見込みであると、Annis氏は期待を込めて指摘した。