英国に本拠を置くハイテク市場動向調査会社であるOmdia主催の「第43回(2022年年央)ディスプレイ産業フォーラム」が、7月末から1か月間オンデマンドオンライン形式で行われている。
フォーラムの冒頭、Omdiaディスプレイ調査部門のシニア調査ディレクターのDavid Hsieh氏が登壇。「2022年は、一言でいえば、供給過剰の年である。ロシアによるウクライナ侵攻が当初の想定より長期化しており、インフレもひどくなってきている。2020~2021年の巣ごもり消費で前倒し需要があった反動も出ており、買い替えを含めた購買意欲は大きく低下している。2023年には諸問題が解決に向かい、需給がバランス化することを期待しているが、依然として先行きは不透明だ」として、2022年年初の想定を引き下げたことを明らかにした。
また同氏は、2022年から2023年にかけての世界ディスプレイ産業の10大トピックスを以下のように挙げた。
- 2022年のディスプレイ市場は売上高も出荷数量も出荷面積もすべてマイナス成長の年。
- 2022年は、インフレ、経済状況、交換サイクルの減速により、供給過剰の年。2023年はゆっくりと回復することが期待される。
- 中国でのTV増産のための投資はもはや無く、ITやOLEDなどの新技術向けが中心
- LCD TVパネルメーカーの出荷は2020年から2022年にかけて毎年マイナス5%。TVパネルは、サイズが大きいほど、より多くのシェアを獲得。
- TVディスプレイのサプライチェーンは変化している。韓国のバイヤーは依然として強力だが、中国勢が急成長。
- ITパネルも供給過剰が予想される。ミニLEDバックライトとOLEDが競合。
- 新しいディスプレイ技術(ミニLEDバックライト、マイクロLEDディスプレイ、IT用RGB OLEDなど)は進化し続けているが、コスト削減がこれからの鍵。
- スマートフォン(スマホ)のOLEDは、2022年に40%以上のシェアで主流になるが、LCDはまだ存在している。スマホディスプレイは中国のOLED増産で成熟。
- 新しいディスプレイアプリケーション(トランスフォームディスプレイとメタバース/ AR/VRディスプレイ)はプロセス、テクノロジー、コストともに急速に進化。
- パネルメーカーは現在、「(技術とビジネスモデルによる)多様化」と「(キャッシュフローとサプライチェーンによる)生き残るための戦い」の時代に突入している。業界は合併をさらに促進か。(BOE + CHOT、ChinaStar + Visionox、AUO + Innoluxなど様々なうわさが出回っている)
業界天気予報、2022年は雨模様、2023年は曇りがち
次に、Omdiaのディスプレイ製造・技術調査担当アナリスト(日本駐在)のCharles Annis氏が恒例のディスプレイ産業天気予報を示した。
2021年は、製造装置市場を除き、おおむね曇りがちの晴れだったが、2022年のFPD業界の天気予報は、ほとんど雨に激変している。例外的に、製造装置市場は雨から曇りへとやや回復し、生産能力は晴れから曇りへとやや後退。2023年には雨模様の装置と需給バランスを除いてほかのカテゴリは雨から曇りに回復する見込みだとしている。
ロシアによるウクライナ侵攻、世界的なインフレ、および新型コロナの継続的な影響により、ディスプレイ業界は現在、供給過剰や過剰在庫が発生している。Annis氏は、「今後、需要がなかなか回復しない場合、新規投資が遅れる可能性があり、さらなるM&Aへの圧力が高まるだろう」と指摘している。また、「荒天にもかかわらず、ディスプレイ業界は依然として巨大であり、ディスプレイは、人間とコンピュータの間の重要なインタフェースであり続ける」として、ディスプレイの重要性を強調していた。