英Omdia主催の第42回ディスプレイ産業フォーラム(42nd Display Japan Forum)が2022年1月27日~2月28日の期間、 オンデマンドバーチャル形式にて開催されている。主要講演の要点を整理して、5回にわけてレポートする。
まずフォーラムの冒頭で、Omdiaディスプレイ調査部門のシニア調査ディレクタのDavid Hsieh氏が、2021年から2022年にかけての世界ディスプレイ産業の10大トピックスを以下のように挙げた。
- 2022年は、新型コロナウィルスの影響が長引き、ディスプレイ産業のサプライチェーンは変化が激しく、状況が目まぐるしく変化する。
a) 素材メーカーはコスト高に陥っているが、パネルメーカーは値下げを要求している。
b) パネルメーカーは、シェアを確保するため、稼働率を下げていないので、パネルコストは下落傾向にある。
c) TVやIT製品メーカーの需要は増えているが、パネルの注文を増やしたり減らしたりして、最安値で入手できるように調整している。
d) 流通段階では、在庫を持つことがニューノーマルになってきている。
e) 最終製品市場の需要は不安定だが、有機EL(OLED)テレビや折り畳みスマートフォンなどの高級品の需要は増加傾向にある。 - ディスプレイ面積の需要は今後年平均6%で成長し、以前の予想より1年前倒しで2024年に3億m2に達する見込みである。
- 中国での設備投資は、TVよりもIT製品に向かっている。
- ディスプレイの供給過剰は2022年第1四半期でいったん終わり、やや不足状態になるが再び供給過剰に戻るといった具合に極めて不安定である。
- LCD TVパネルメーカーは数量を増やすことには保守的だが、パネルサイズの大型化には熱心である。
- ITパネルは、在宅勤務や遠隔授業が長引いており重要が伸びており、新技術の導入も盛んで2022年は大いに成長するが2023年にはマイナス成長になろう。
- Mini LED バックライトTV LCDパネルが非常に伸びる。OLEDはスマートフォンのほかノートPC向けが伸びる。Micro LEDは、技術的な問題のほか価格が高いというも問題がある。
- 有機ELのスマートフォン普及率は2022年に40%を超え、業界の主流になる。
- 新たなディスプレイの応用分野としてメタバース/AR/VR が注目される。
- パネルメーカーの戦略は、生産能力の向上が一段落し、現在はセットまで含めた垂直統合に焦点を当てている。
ディスプレイ市場天気予報は、晴れから曇りがちに
次にOmdiaディスプレイ技術担当Charles Annis氏が、恒例のディスプレイ天気予報2022年版を示した。2021年はディスプレイ産業にとって、設備投資を除いては晴れで、AMOLEDは快晴という具合に絶好調だったが、2022年は2021年に比べれば曇りがちだが、雨になる予想ではないという。
- 2020年後半〜2021年前半の超需要サイクルに続いて2022年は供給過剰が続く見込みである。パンデミックはまだ終わりが見えていない。現在予測されている需要を簡単に満たすのに十分なTFT生産能力があるが、コンポーネントと材料のサプライチェーンは依然として脆弱である。
- 中国で広範囲にわたるオミクロンの発生が発生した場合、そのゼロコロナ政策により、一部の生産能力の利用が妨げられる可能性がある。
- IT製品の第8.5世代 RGB 有機EL工場計画はまだ確定していないが、上位3社の有機ELメーカーが今後1〜2年でプロジェクトを開始する可能性がますます高まっている。
- これらの工場は、水平または垂直RGB蒸発のいずれかのタンデムを採用する可能性がある。ただし、最初はおそらく有機ELスマートフォンのLTPS/LTPOプロセスのスケールアップになる見込みである。
- 酸化物TFTは、製造コストをさらに下げるための魅力的な代替手段であり続けるが、Omdiaは、現時点では、酸化物を採用するリスクが約10%のコストメリットを上回っていると想定している。
- 月に12万8000枚ものG8.5/8.6 RGB 有機EL生産能力の基板製造が計画されており、2028年には有機EL ITの普及率を20%以上に高める可能性がある。
- ITアプリケーション向けのLCDへの中国のパネルメーカーの投資、IT向けのRGB有機ELへの投資、および中国のLCD TVと韓国の有機EL生産能力のさらなる拡大により、年間約110億ドルの機器市場を一貫してサポートすると予測されている。
- 2017年ごろに製造装置が記録的な売れ行きを見せたが、それに比べれば、今年はそれより大幅に下回っている。けれども、装置メーカーに多くのビジネス機会を生み出すには十分であろう。
(次回に続く)