工場のIoT化や自動運転車の開発、スマートフォンの高度化などの影響で電子機器の製造量が増加している。それと同時に増えているのが電子機器の受託生産(EMS)だ。本連載では、2018年よりOKIのEMSグループに編入し、EMS事業へと力を入れているOKIテクノパワーシステムズのEMS事業の現状や今後の戦略などについて紹介する。
OKIテクノパワーシステムズが外販力強化のために行った事業構造変革について紹介した前回に引き続き今回は、同社の工場、生産ラインの様子をお届けする。
1階 : 自動挿入・SMT工程
同社の工場は3階建てで、製造は1~2階で行われている。1階で主に行われているのは、基板への部品の自動挿入・SMT工程だ。ほとんどの工程が機械によって行われるため、作業員は部品実装後の基板チェックを行う人とマシンオペレータの数人のみ。
2階 : 実装・組立・検査工程
2階では、1階にて細かな部品が実装された基板の組み立てから検査までの作業がなされる。大きな部品の実装は人が行っているため、1階と比べると作業員の数が多い。さらに同階には、生産技術、品質管理、生産計画、購買などの担当者の作業スペースもあることから、製造の中核を担う場所であることがわかる。
ここでは、1階から上がってきた基板の検査を行ったのちに各種部品が実装される。生産するのは、1ロットあたり200から1000ほどの製品を1日当たり4から5種類。1か月で60から70種類の製品を製造しているという。
大きな部品は熱容量が大きくはんだにムラが出やすいため、これまたはんだ付け後にも目視・画像認識でムラがないかを確認をする。各工程ごとに細かなチェックが入ることが同工場の特徴だろう。ここではんだ付けが正しくなされていない場所や、ショートしてしまっている部分があれば修正する。
実装工程を終えたら、インサーキット・テスタ(ICT)を用い、製品が正しく作用するかを検査する。
その後、パワーテスタによって実際に電源を入れて動作させながら検査を行う。検査を終えた製品は、そのまま完成品となるか組込み工程へと進み、すべての工程を終えたら最終検査がなされる。
製造現場の先を見つめて
以上、工場の様子を紹介した。実際に見学してみて感じたのは、”現場の作業員と製造管理や購買、設計者との距離の近さ”だった。まるで銀行のカウンターのように、製造現場を向いて仕事をする従業員。その前には「私たちは製造現場とその先のお客様を見て仕事をします。」という看板が下げられているのが印象的だ。
「製造現場と設計・生産管理の担当者との距離を近づけることで、トラブルがあってもすぐ対応できるようにしている。また、現場の作業員が感じた意見をすぐに伝えられるようにすることによって、ラインの効率化につなげたい」と佐藤社長。「現場で何か気づいたことがあっても、設計や生産管理の担当者が背中を向けてたら話しかけづらいじゃないですか」と語る同氏は、誰よりも製造現場、そしてそこから生まれる新たな価値へと目を向けている。
実際にラインの見学中には、現場作業員と設計の担当者が意見交換をしている様子も見られたことから、現場からの意見が、製品の設計に少なからず反映される機会は多いようだ。同社のスローガンである「日々進化する工場」を象徴するワンシーンであるように見えた。
このように、働く人が少しでも環境をよくするために声を掛け合い、社員一丸となって作り上げていく同工場はまさに、顧客のもつ同社への信頼性を高める「ショールーム」と言えるものであった。
次回【OKIグループのシナジーを活用し、さらなる成長を目指して】は7月9日に掲載予定です。