オンラインプログラミング学習サービスを提供するProgateは2024年1月、渋谷区宮下公園近辺に構えていた本社オフィスを、同じ渋谷エリアの恵比寿や代官山寄りのビルへと移転した。140坪ほどあった前オフィスから一転、新オフィスの広さはなんと40坪ほどである。本稿では同社新オフィスのコミュニケーションに特化した魅力と、オフィス移転に至った経緯などをお届けしたい。
コミュニケーションを生み出すカフェのような新オフィス
新オフィスに入ると、まるで「おしゃれなカフェ」のような空間が広がる。内装は気軽なコミュニケーションの創出を狙っているという。個別に1人で集中するための空間はほとんど無く、基本的にはオープンな雰囲気。
オフィスの入口では、代表取締役である加藤將倫氏の手書きメッセージが迎えてくれる。同社のバリューである「Deliver the best」「One team, one goal」「Take your action」の各頭文字を取った「DOT」がモチーフ。
オフィスフロアのドアには「PROGATE BASE(プロゲートベース)」の文字が。このオフィスを「秘密基地」(Secret base)や「新たなスタートの基準」だと捉える意味が込められているという。また、新入社員向けの歓迎メッセージも書かれるそうだ。
オフィスに入ると、すぐに大きなカウンターが目に飛び込んでくる。ここで作業すればオフィスを往来する人の様子が一目で分かるため、声をかけやすいのだという。
カウンター内に設置したモニターには、オフィスの様子が分かるRPG(ロールプレイングゲーム)風の画面が映し出される。ここには出社の有無にかかわらず各社員がログインしており、バーチャルオフィスのように使える。バーチャルオフィス上の会議室ではビデオ通話も可能で、テレワーク時にも他の社員とコミュニケーションが取れるそうだ。
同社オフィスの特長的な設備として、ウッドデッキがある。キャンプにも使えそうなローチェアを設置しており、会議室に閉じこもるような1 on 1ミーティングよりもざっくばらんに近況を相談できるような工夫が見られる。ここで、悩みの相談などウェットなコミュニケーションの活性化を狙う。
会議室は壁一面がホワイトボードになっており、自由に記述できる。議論が白熱すると、参加者総立ちでの議論がホワイトボード上で繰り広げられるそうだ。
大幅にオフィス空間を縮小したものの、その分は社員へ還元
ここまで案内してくれたのは、COO(Chief Operating Officer)を務める宮林卓也氏。同氏によると、本連載で紹介している他の企業と同じように、Progateのオフィス移転もコロナ禍が大きなきっかけとなったという。以前のオフィスはフラットでオープンな社風を表現するような、開放的なオフィスだったそうだ。
しかしコロナ禍によって出社の制限も余儀なくされ、140坪ほどの広いオフィスに2~3人しかいない状況が続いた。出社を控えてオンラインでのコミュニケーションが主となる中で、テキストでの情報共有がうまくいかない場面や詳細な感情まで伝えられずさまざまな問題も顕在化していたそうだ。
また、コロナ禍で遠方へ引越しをした社員やフルリモート勤務を軸とした生活スタイルを安定させた社員も増えつつあったことから、無理に全員を出社させるのではなく、リモートでも成果が出せることを前提にコミュニケーションを創出するためのオフィス設計へと切り替えた。
縮小したオフィスには、30人が座れるかどうかの席しか備えられていない。先に紹介したように、1人で集中するための空間もないなど思い切ったデザインだ。オフィスのコンセプトを「社員が一緒に何かをする空間」に特化した結果、カフェのような空間が出来上がったという。
「オフィスを縮小するのは勇気がいる決断でした。しかし、限りある経営資源を有効に活用するためにも無駄なスペースが生まれていた以前のオフィスから移転し、そこで捻出したコストをIT機器に投資して社員に還元しようと考えました」(宮林氏)
実際、自宅での集中作業を支援するために、4Kモニターや高機能チェアをはじめとして社員それぞれが必要な備品をレンタルできるサービスの導入を開始しているとのことだ。
7月で創業から10年を迎えるProgate。筆者も同社サービスを利用して勉強してみたが、非常に分かりやすく今後もプログラミングを続けてみようと思うきっかけとなった。次の10年やその先に向かって、このベースからの同社の再出発が楽しみだ。