アイリッジの渡辺と申します。弊社では、アプリを活用したO2O(online to offline)マーケティングの領域で、数多くのクライアント企業様をサポートしております。流通業や小売業を中心に、最近では金融機関向けのアプリを開発し、クライアント店舗への集客や販売促進の企画を立案・実行しております。
この連載では、O2O領域における最近の潮流と、その中で大きなトレンドとなるFinTechの取り組みを紹介し、読者企業の今後のO2Oの取り組みの参考にしてもらえればと思っています。第1回目となる今回は、O2Oにおける最近の動向を紹介したいと思います。
少し前のアプリでは、ユーザーへの情報提供を目的に、スマホサイトで閲覧できるコンテンツをアプリ内で表示したり、何らかのお知らせをプッシュ通知で伝えたりすることが目的のアプリが多く存在していました。今では、こうしたアプリが巷に広まってきている中で、アプリが会員証の代わりをするようなものが増えてきています。例えば、店頭で見せていたプラスチックのカードをアプリ化し、アプリ内でバーコード表示することで会員証の代わりをするようなアプリが出てきています。
また、店頭でアプリを利用してもらうだけではなく、アプリの中にECを内包させることによって、店頭とEC双方に集客させるようなオムニチャネル化した機能を持つアプリもあります。例えば、マツモトキヨシのアプリでは、会員バーコードによって会員証の代わりになるだけではなく、店頭で商品バーコードをスキャンさせることで、アプリ経由でECに遷移し、その商品を購入することが可能です。重い荷物になりがちな洗剤やかさばるティッシュボックスなどの日用品は、店頭で購入して持ち帰るよりも、EC経由で購入して、あとで届けてもらったほうがユーザーにとって便利です。
このように、アプリ内に会員機能を持つことが一般的になりつつある中で、各企業が次の取り組みとして乗り出してきているのが、FinTech(フィンテック)関連のサービスです。フィンテックのサービスといっても様々ありますが、現在の各社の取り組みを大きく3つのカテゴリーに分けて紹介します。
(1) ポイントサービス
会員に対してポイントマーケティングを展開している企業の場合、ポイント機能をアプリ内にもちはじめています。商品を購入して獲得できるポイントをアプリ内で残高表示できたり、クーポンやその他ノベルティにポイント交換できたりする機能をアプリ内で完結させているものがあります。また、位置情報と連動して、来店した際に、チェックインすることで獲得できるポイントサービスも増えてきています。例えばJA全農のアプリでは、JA全農が展開する焼肉レストランにユーザーが来店すると、Bluetoothを検知してチェックインポイントが獲得できます。それを一定ポイントまで貯めると、クーポンに交換し、お会計時に使用することができるサービスを提供しています。
(2) 決済サービス
アプリの中で決済することができるサービスです。クレジットカードを登録して、事前購入して利用するプリペイド式から、店頭でアプリを利用して精算する方式までいくつかのタイプがあります。最近リリースしたスターバックスコーヒージャパンのアプリでは、クレジットカードを事前登録してもらい、もともと展開していたプリペイドカード方式をアプリ内で利用できるようにしています。中国ではQRコードを中心としたアプリ決済が一般的になりつつあり、米国ではWalmartがセルフレジの実証実験を開始するなどしています。これらのサービスについては、次回以降で詳しく紹介したいと思っています。
(3)ブロックチェーン
O2Oと融合したブロックチェーンでは、プライベート・ブロックチェーンによる「高いセキュリティ」 と 「効率の良いアプリ開発」を実現することができます。
ブロックチェーンは暗号技術を元に作られているため、ユーザーのポイント残高、電子マネー残高など、プライバシーに関わる情報を安全に保存し、そのアクセス権限を厳密に管理することができます。また、ブロックチェーンには勘定機能が基本機能として実装されているため、ポイントサービスや電子マネーサービスといった金融関連サービス基盤を、開発無しに設定だけで整備することができます。
次回では、決済に関する最近の動向をご紹介いたします。
著者略歴
渡辺智也
株式会社アイリッジ セールス&マーケティンググループ シニアマネージャー。慶應義塾大学卒業後、楽天株式会社に入社。オークション事業で営業、マーケティング、経営企画、トラベル事業にて事業開発を担当。2013年9月に当社に入社。大手企業を中心として多数O2Oアプリのコンサルティングやマーケティング支援を行う。University of MichiganでMBAを取得。