より複雑なシステムに対する、より多くのテストを、より短時間で

電池をベースとする電動パワートレインと内燃エンジン(ICE:Internal Combustion Engine)をベースとするパワートレインは根本的に異なるものです。それぞれに対して実施するテストはまったく異なるものになりますし、それらのテストにはまったく異なる機能が必要になります。2種類のパワートレインを無理やりくっつけた(失礼! シームレスに統合した)ハイブリッド車が対象になる場合、テストにかかる時間とコストが急激に増加する可能性があります。

ICEの場合、必要なのは物理的なテストです。燃焼機構、圧力、温度、液体、機械的結合/電力伝送、排ガス管理などのテストが実施されます。ターボやスーパーチャージャなど、制御下で生じる爆発の効率や能力を高めるための仕組みについてもテストが実施されます。さらに、ピストンの直線動作を回転トルクに変換する機構や、フライホイールによるパワー出力のバランス調整などについてもテストで確認が行われます。

一方、電動パワートレインに必要なのは電気的なテストです。パワーエレクトロニクス、スイッチング周波数、電圧と電流、インダクションと逆起電力についてテストを実施するといった具合です。また、電池の容量や放電率、インバータとコンバータの熱管理機能、回生電力の調整機能もテストします。さらに、モータ/ジェネレータの位相角、ラミネート形状、磁石の位置、磁束線のテストなども実施します。

ハイブリッド車のパワートレインはICEと電動パワートレインをさまざまな方法で統合することで実現されます。そこで必要になるのは統合テストです。ICEと電気コンポーネントの間の相互作用を統制する制御機構、状態図、ルール群についてテストを実施します。あらゆる走行条件やシナリオにおいて、システムの応答が適切であるか否かを確認するということです。

ハイブリッド車は(どのような種類のものであっても)、ICEだけで走行する自動車や、電池だけを使って走行する完全なバッテリ電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicles)よりも複雑になります。

  • パワートレインの多様な構成

    図1. パワートレインの多様な構成。ICEとBEVの間にはさまざまなハイブリッド・アーキテクチャが存在する

より多くのコンポーネントがより複雑なシステムに組み込まれるということは、故障の機会が増えるということを意味します。テスト技術者にとって、1+1は2よりもはるかに大きくなります。ICEに対する従来からのテストに加え、より要件の厳しい電動パワートレインのサブシステムについて新たにテストを実施する必要があるからです。

また、統合に関して高いテストカバレッジを確保する方法を考案し、ICEと電動パワートレインがシームレスに連携し、ハイブリッド車の効率、性能、走行性に関する設計目標を達成できているか否かを確認しなければなりません。

Nate Holmes

著者プロフィール

Nate Holmes
National Instruments
プリンシパルソリューションズマネジャー(フィジカルテスト担当)

フィジカルテスト(データロギングやテストセルなど、物理的な計測を伴うアプリケーション)分野担当のソリューションズマネジャーであり、自動車業界や航空宇宙業界で行われる各種テストの課題解決にNIのプラットフォームや製品を活用する方法を提言しています。
ターゲットとする市場やアプリケーションの特定、メッセージの策定、ワールドワイドでのセールスの効率向上、パイプラインの活用を主に担当しています。

2007年にアプリケーションエンジニアとしてNIに入社後、高校生向けロボットコンテスト「FIRST」を積極的にサポートした後、EtherCATやCompactRIO拡張I/O、インダストリアルコントローラに代表される組み込みシステム製品とモーション/ビジョン関連製品のプロダクトマネジメントを担当。その後活躍の場をR&Dに移し、モータ制御やマシンビジョンなどの製品ラインを担当するR&Dグループマネジャーとして慣習の異なるさまざまな国のメンバーから成るチームのマネジメントを行い、製品戦略やロードマップ策定を担当しました。

(次回は8月2日に掲載します)