東京都台東区に本社をおく株式会社内外出版社は、1959年創業の伝統ある出版社だ。会社設立と同時に創刊した新車バイヤーズガイド誌『月刊自家用車』をはじめとする自動車雑誌からヘアスタイル&ファッション誌まで、12誌を定期発行。趣味から実用まで幅広いジャンルをカバーし、読者の期待に応え続けている。しかし「雑誌が売れない時代」と言われて久しい日本社会。同社はどのような経営戦略をもって出版氷河期を生き抜いてきたのだろうか。トップである代表取締役社長 清田氏にこれまでの歩みと今後のビジョンについて伺った。

--御社の事業フィールドとその特徴についてお聞かせください。--

当社は「月刊自家用車」などの自動車関連雑誌やヘアスタイル&ファッション誌『ChokiChoki』『ChokiChoki girls』、モーターサイクル誌『YOUNG MACHINE』、フィッシング誌『ルアーマガジン』など、趣味の領域に特化した雑誌出版物をメインに、セルDVD、モバイルサイトを発行・運営している出版社です。

雑誌には大きく二通りの種類があると思っています。

一つは「夢を売る雑誌」。手が届かない高級車やハイブランドを載せているような雑誌がこちらに当たります。そしてもう一つは「等身大の雑誌」です。こちらは実用性を第一にした構成で、読者が"実生活に取り入れられる"ものが掲載されています。 私達が手掛けるのは後者の「等身大の雑誌」。当社の雑誌に掲載されているものは、国産車や身近なファッションが大半を占めます。読者が実践できる情報を発信してきたことこそ、長年読者に支持していただけている理由なのだと思います。

--創業からこれまでの53年の歩みとは?--

当社は『月刊自家用車』の創刊と共に産声を上げました。

モータリゼーションの盛り上がりにより、市民生活の中に自動車が根付き始めた1959年に生まれたこの雑誌は、今や業界屈指の老舗雑誌です。

そんな『月刊自家用車』には30年以上続く看板企画があります。それは読者の新車購入における値引きドキュメント「X(エックス)氏の値引き大作戦」。いまでこそ多くの雑誌で見かける読者参加型企画ですが、実は当社のこの企画が先駆けなのです。「X(エックス)氏の値引き大作戦」は当社の編集スタンスが如実に表れており、『ユーザー目線』であることに徹底してこだわりました。メーカーの意向に左右されず、"読者が欲しい情報"だけを厳選・追求していることが継続した人気を誇る理由なのだと思います。

また、53年の中でも常に新創刊へのチャレンジを欠かしていません。近年ではヘア&ファッション誌『ChokiChoki』を創刊し、男性版・女性版ともに順調に部数を伸ばしています。また『ChokiChoki girls』は女性がカバンに入れて持ち歩いたり美容院に持ち込みやすいよう、判型を小さく仕上げるなど、やはり実用性を重視したつくりにしています。

このように読者の立場で「役に立つ」ことをモットーにした雑誌づくりの積み重ねが、53年という歴史につながっているのです。

出版業界はオイルショック、リーマンショック、東日本大震災などの社会的危機に大きく左右される業界です。経営状況が悪化したこともありましたが、その度に経費の見直しや引き締めを行うきっかけになりましたし、社員の結束を高める契機にもなり、一つ一つ乗り越えることができました。また、当社は同一ジャンルの中でも様々な派生誌を発行していたため、一つの雑誌が売れなくなっても他でリカバリーできたことが功を奏したのでしょう。

--今後創立100年=1世紀を目指すために思い描いている経営ビジョンを教えてください。--

1990年代をピークに出版業界は右肩下がりとなっており、創刊しては消えていく雑誌も数多くあります。そんな市況下で当社が描く経営戦略は5つあります。

まず、既存の雑誌を守ること。同時に新しい雑誌や電子書籍、インターネットと雑誌のクロスメディアなどへも挑戦していきます。

そして、ゆくゆくは中国や韓国、台湾を中心に海外進出も視野に入れています。ただしこのグローバル展開は内需縮小を受けての逃げ道としての選択ではありません。当社の未来を築く新たな事業展開として、じっくり準備を進めており、国内で基盤をしっかりと固めてから、現地の人口分布や年齢層のリサーチ・分析を行った上で流通と連携して販売戦略を練っていく予定です。

これから100周年に向けて、当社が目指すのは雑誌の各ジャンルでトップを目指すこと、そして盤石な体制でトップを守り続けること。また社員に対しては、健康第一に元気で働ける環境づくりを進めていきたいと思います。

そして何より、いつの時代も読者の立場で役立つ情報を発信し続けること。これはどんな時でも変わることのない大切な当社のテーマです。

--社員にどんな活躍を期待していますか?また、これからの人材戦略を教えて下さい。--

自由で好奇心の塊のような編集部気質、アイディアが豊富で協調性がある広告部気質、締めるところはしっかり締める管理部気質、セクションごとに個性がありますね。その個性の根底にある、全社員に共通するマインドが、「困難があっても自ら考え行動する」点です。

組織でうまく立ち回る優等生タイプではなく、10段階評価で言えば2や3がどんなに多くても、「このジャンルでは誰にも負けない」など、一つでも飛び抜けた10があればいいんです。今の若い方は上品ですが小さくまとまっている印象があります。綺麗にまとめるだけでは雑誌は面白くありません。一癖も二癖もある"とんがった部分"を雑誌づくりに発揮してほしいと思っています。

また当社は近年ヤングヘア&ファッション誌などの新ジャンルへ挑戦しており、これまでとは異なる購読層へのアプローチを強化してきました。特に女性の購買意欲の高さは非常に魅力的ですので、これからは女性誌の分野を伸ばしていきたいと考えています。そこで必要になるのが若手の感性や女性ならではのアンテナ。今後は若手層の人員強化を図り、事業基盤の強化を推進していきます。

会社概要
社名:株式会社内外出版社
設立:1959年(昭和34年)
資本金:1200万円
代表者:代表取締役 社長 清田 名人
事業内容:各種雑誌、セルDVDの企画・編集・発行 (モーター誌「月刊自家用車」「オートメカニック」「輸入車中古車情報」「Street VWs」「高速有鉛デラックス」、モーターサイクル誌「YOUNG MACHINE」「BIG MACHINE」、フィッシング誌「ルアーマガジンソルト」「磯釣りスペシャル」、ファッション誌「チョキチョキ」「チョキチョキ ガールズ」 等)
事業所:本社 / 東京都台東区台東4-19-9 支社 / 大阪府大阪市淀川区西中島町4-6-24
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