今回から2回に分けて、無線LANアクセスポイント「WLX302」とRTX1210を組み合わせることで、さらに管理が楽になる便利な技について取り上げてみよう。

タブレットやスマートフォンの利用開始、あるいは利用拡大によって、無線LANの需要が増している。御多分に漏れず、筆者の自宅もそうで、いったんは使用を取り止めた無線LANを再導入することになった。

無線LANアクセスポイントを導入する際のあれこれ

さて。家庭であれオフィスであれ、無線LANを利用するにはアクセスポイントが必須である。家庭であれば、できるだけ機器の数を増やさずにシンプルにまとめたいところだから、LANとインターネットの境界に設置するルータにアクセスポイントの機能も内蔵させた、いわゆる無線ルータを利用するのが合理的だ。

ところが企業ユーザーの場合、LANとインターネットの境界にはもっと高性能のルータ(もちろん、できることならヤマハRTXシリーズを!)、あるいはプロキシサーバを設置するのが一般的だろう。そして、セキュリティの要求や負荷の高さなどを考えると、より高機能なアクセスポイント専用製品が欲しいという話になる。

そこで問題になるのがアクセスポイントの設定だ。SSIDや暗号化など、ユーザーが独自に設定しなければならない項目がいろいろあるので、箱から出したものをネットワークに接続して「ハイ終了」とはいかない。接続した後で、何らかの設定作業が必要となる。

そして、その設定作業はWebブラウザ経由で行うのが一般的である。ということは、アクセスポイントはIPアドレスを持っていなければならない。しかも、LAN上の既存のノードとは衝突しないアドレスが。

となると、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)でIPアドレスを割り当てるのが、もっとも確実である。しかし、重複がなく、かつ適切なアドレス範囲とサブネットマスクを持つIPアドレスを割り当てるという点においては確実なのだが、「DHCP=動的ホスト構成プロトコル」だから、割り当てられるIPアドレスは一定していない。

つまり、無線LANアクセスポイントを接続して稼働させたのはいいが、必要な設定を行うためにアクセスポイントのIPアドレスを探し回らなければならないということになる。

もうちょっと安直な方法で、ネットワークアドレスもIPアドレスも決め打ちにしてしまい、たとえばネットワークアドレスは「192.168.0.0/24」、アクセスポイントのIPアドレスは「192.168.0.250」と固定した状態にする方法もある。

しかし、ヤマハ製品のようにネットワークアドレスの初期値が「192.168.100.0/24」ということもあるのだ。すると決め打ちでは具合が良くない。

また、家庭であればアクセスポイントは1台だけで済むだろうが、企業ユーザーだと複数のアクセスポイントが必要になる場面が多い。すると、アクセスポイントの「捜索」を反復することになる。もしもIPアドレスを決め打ちにして出荷すれば、今度はIPアドレスが衝突する。

IPアドレスを捜索してWebブラウザで接続するならまだマシで、業務用無線LANアクセスポイントはシリアルコンソール接続して設定するのが一般的らしい。つまりコンソールケーブルでPCとつないでターミナルソフトを起動し、コマンド操作で設定するというわけだ。たくさんの機器を管理する時は欠かせない方法だ。物理的に目の前にあるものを設定するわけだから、IPアドレスを捜索する手間はかからないが、いちいちコマンドを入力するのでは、初心者にとっては敷居が高い。

WLX302を自動的に見つけ出せるLANマップ

と、さんざん前置きを語ったところで、ようやく本題である。

ヤマハルータの最新製品「RTX1210」と、以前からある無線LANアクセスポイント「WLX302」を組み合わせると、無線LANアクセスポイントを導入する際の作業が一気に楽になる。これもまた「見える化」の恩恵だ。具体的に、何がどう楽になるのか?

そこで登場するのが、RTX1210の新兵器「LANマップ」である。RTX1210が稼働するネットワークに購入してきたWLX302を接続するだけで、RTX1210が自動でWLX302を探索してくれる。当然ながらそれもLANマップに現れる。それをクリックして選択したのが、以下の状態だ。

WLX302をひとつ接続した状態のLANマップ。ここで、WLX302のアイコンをクリックして選択すると、[ツリー]の上に[無線APの設定]なるボタンが現れる

そして、この状態で画面左側の中程、[ツリー]の上に現れる[無線APの設定]ボタンをクリックすると、WLX302の設定画面がポップアップする(または別のタブが開く)。ただしこのとき、Webブラウザのポップアップブロック機能が邪魔をしないように、許可設定を行う必要があるかもしれない。

その[無線APの設定]をクリックすると、WLX302の設定画面を呼び出すことができる。上の画面例は、別タブで呼び出すパターン

実質的にはWLX302の設定画面を別画面で呼び出しているのだが、使い勝手の上ではRTX1210の管理用GUI画面からWLX302の設定を行えるといってもよい。その分だけ、見かけ上の手順は簡略化できる。余談だが、アドレスバーの内容を見ると、RTX1210の設定画面を介してWLX302の設定画面を呼び出す形をとっているようだ。

ともあれ、これで「ルータの設定もネットワークの構成・状況把握も、そして無線LANアクセスポイントの設定も、すべてワンストップで用が足りる」機能が実現できたことになる。

ネットワークの設定・管理に限った話ではないが、利用するデバイスが多種多様になる一方だから、管理者が扱わなければならないツールや画面の数も、それに比例して増加する一方というのが一般的な趨勢である。

といって、いまさらデバイスの数や種類を減らしましょう、というのも現実的な話とはいいがたい。そこで、できるだけワンストップで管理者が仕事を片付けられるようになれば、その分だけ作業や学習の手間は減るだろう。このことは専任管理者以上に、兼任管理者にとって大きい恩恵をもたらすと考えられる。

デュアルバンドのメリット

コスト優先の家庭向け製品では2.4GHz帯にしか対応していないことがあるが、2.4GHz帯はどうしても混雑しやすいので、できれば5GHz帯を使いたいところだ。その点、5GHz帯に対応しているWLX302はありがたい存在である。

もっとも、現実的には2.4GHzにしか対応していないクライアントが少なくないし、実際、筆者の手元にあるタブレットもそうだ。だから拙宅では、せっかくのWLX302ではあるが、2.4GHzだけを有効にして使っている。

その2.4GHz帯と5GHz帯に別々のSSIDを割り当てられるのは面白い機能だ。周波数帯ごとに別々のSSIDを用意する使い方が実現可能だから、5GHz帯に対応しているクライアントは明示的にそちらを使わせる、といった設定を無理なく実現できるだろう。

これはSSIDの設定画面。同じSSIDを2.4GHz帯と5GHz帯の両方に割り当てることも、片方にだけ割り当てることもできる

まとめると、RTX1210のLANマップが稼働しているネットワークに「WLX302」を導入して無線LANを使い始めるには、2ステップで良い。

1.RTX1210のLANマップが稼働するネットワークに繋ぐ。
2.SSIDとセキュリティ方式(認証や暗号)を設定する。

もちろん無線LANを使いこなす細かい設定も可能ではあるが、WLX302は問題が出にくい初期値が選ばれているので、最初のうちはWLX302におまかせで運用してよいだろう。面倒な事はRTX1210とWLX302が片付けてくれるのである。

次回は、WLX302の台数が増えたときにどうなるのか、という話を取り上げて解説する予定だ。