自分が運営するブログやWebサイトから収入を得る手段として、「アフィリエイト」と「ドロップシッピング」がよく知られています。アルファブロガーなど多くの読者を集めるサイトであれば、そうした手段を通じてけっこうな額の収入を得ているという話も聞きます。実際には、アフィリエイトやドロップシッピングで稼ぐことはとても大変ですが、わりと簡単に始められることから、自分もチャレンジしてみたいと考えている人も多いでしょう。

そこで今回から2回にわたり、アフィリエイトとドロップシッピングの違いについて考えてみたいと思います。といっても、今回フォーカスするのは「両者の仕組みの違い」ではなく、「法的にどう違うのか?」という点です。似たようなビジネスモデルであっても、運営者にかかる法的責任やリスクは異なります。その点を理解しておくことはけっこう大事ですので、これから始める人も、すでに始めている人も、ぜひお読みいただければと思います。(編集部)


【Q】「アフィリエイト」と「ドロップシッピング」は法的にどこが違う?

最近、副業として「アフィリエイト」や「ドロップシッピング」といったものをよく耳にしますが、これはどのようなビジネスなのでしょうか。また、両者にはどのような相違点や法的問題があるのでしょうか。


【A】自らが広告媒体になるか、売主になるかという点で異なります。

アフィリエイトはもちろん、ドロップシッピングも、自分の運営するウェブサイトなどを利用したインターネットビジネスです。ただ、アフィリエイトは自分が広告媒体といった地位になるのに対し、ドロップシッピングは、自分が原則として売主の地位になる点で異なります。また、このような法的地位の違いから、それぞれ異なる法律問題が発生します。


あらためて「アフィリエイト」とは?

「アフィリエイト(affiliate)」についてあらためて説明すると、例えば、自分のブログなどに、広告主の商品の広告バナーを載せ、閲覧者がそれを通じて広告主のサイトを訪れ、商品を購入したような場合に、広告主から報酬が支払われるもので、成果報酬型広告の一形態を指します(英語の「affiliate」は「提携」「系列」を意味)。

書籍のアフィリエイトを一例としてあげると、(1)アフィリエイター(アフィリエイトにより広告を掲載する者)と広告主(書籍の通販業者)との間でアフィリエイト契約を結び、(2)アフィリエイターのブログなどで広告主の販売する書籍のサムネイルを載せるなどして広告主の広告を掲載し、(3)アフィリエイターのブログの閲覧者が広告主の広告をクリックし広告主のサイトで書籍を購入した場合、(4)広告主がアフィリエイターに対し一定の報酬を支払う、といった流れになります。

アフィリエイトは、広告主にとっては、あらかじめ定めた条件(アフィリエイターのサイトからの誘導による、資料請求・商品販売など)が成立したときに、成果報酬を支払うという意味で、費用対効果が明確な手段といえます。アフィリエイターにとっても手軽に報酬を得ることができる副業といわれており、今日まで拡大してきました。

なお、上記のとおり「広告主」「アフィリエイター」「閲覧者」の3者が登場するアフィリエイトですが、実際には、「広告主」と「アフィリエイター」を仲介する「アフィリエイト・サービス・プロバイダ」が存在することも多いです。

「ドロップシッピング」とは?

「ドロップシッピング(drop shipping)」とは、例えば、ドロップシッパー(ドロップシッピングにより商品を販売する人)が自分のブログなどで消費者に商品を販売し、その後ドロップシッパーがベンダー(メーカー、卸売業者など)に対し当該商品を発注し、ベンダーから消費者へ商品が直送されるもので、小売方法の一種です(英語の「drop shipping」は「直送」の意味)。

ドロップシッピングについては、ドロップシッパーにとって、在庫を自分でかかえずにネットビジネスを営むことができ、またアフィリエイトと異なり、商品の価格設定も自分の裁量で決定できるという点で、アフィリエイトに続いて注目される副業といわれています。

ドロップシッピングについても、アフィリエイトの場合のように、「ドロップシッピング・サービス・プロバイダ(DSP)」といった仲介者が介在することが多いです。

両者の相違点とリスクの有無

アフィリエイトとドロップシッピングは、いずれも自分の運営するウェブサイトを利用して利益を得るインターネットビジネスですが、以下の点で異なります。

まず、一番大きいな違いは、ウェブサイトの運営者(アフィリエイター、ドロップシッパー)の法的地位です。アフィリエイトでは、あくまでも広告主の商品を紹介又は推薦しているにとどまるのに対し、ドロップシッピングでは原則として、ドロップシッパーが売主になります(※)。

※ ただし、DSPの各種サービス内容によっては、DSPが売主としての販売責任を負担することもあります。また、販売責任の他に、消費者からの問合せ対応、返品の処理等について誰が担当するかといった点などについても、DSPの提供する各種サービス内容(契約内容)によりさまざまです。

売主になるということは、売買契約を前提とするさまざまな法的責任(例えば、商品の給付義務や瑕疵担保責任)が発生します。また、アフィリエイトについては、売主としての法的責任はないとはいえ、その他の法的規制により、売買契約に基づくものとは別の法的責任(例えば、景表法や薬事法などの広告規制に基づく責任)を負う可能性があります。

この他にも、前述した価格設定権の有無や、ユーザーの個人情報などの管理の要否(※)といった相違点もあげられます。

※ ドロップシッピングでは、各購入者の個人情報を保有するなどして、「個人情報取扱事業者」(個人情報保護法第2条第3項)に該当すれば、個人情報保護法で定められている義務を負うことになります。

ただ、アフィリエイト、ドロップシッピングのいずれも"ビジネス"である以上、利益をあげるのは決して簡単なことではなく、また、一定のリスクは避けられないものであるということを十分認識する必要があるでしょう(その意味で、「必ず儲かる」とか「完全ノーリスク」といった宣伝文句には十分な注意が必要です)。

平成21年2月には東京都から緊急消費者被害情報として、「ネットショップ運営やネット広告で初心者でも簡単に高収入が得られる? ドロップシッピングやアフィリエイトによる儲け話にご注意!!」がリリースされています。

これによると、相談事例として、高額な初期費用を要求されたが業者の説明するような利益が得られなかったり、業者と連絡がとれなくなったりしたケースや、ドロップシッピング業者の事前の説明よりも卸値が高いため、商品が売れないといったケースなどが紹介されています(詳しくは、こちらをご覧下さい)。本来、アフィリエイトやドロップシッピングは、高額な初期費用が不要であることにメリットがあったはずであり、東京都も上記サイトにおいて、「簡単に高収入が得られるとうたって、高額なパッケージを斡旋する業者には注意しましょう!」と警告しています。

アフィリエイトとドロップシッピングに関するこのような法的問題については、次回具体的にご紹介します。

(北澤一樹/英知法律事務所)

弁護士法人 英知法律事務所

情報ネットワーク、情報セキュリティ、内部統制など新しい分野の法律問題に関するエキスパートとして、会社法、損害賠償法など伝統的な法律分野との融合を目指し、企業法務に特化した業務を展開している弁護士法人。大阪の西天満と東京の神谷町に事務所を開設している。 同事務所のURLはこちら→ http://www.law.co.jp/