2018年2月14日~16日にかけて東京ビッグサイトにて開催されているナノテクノロジーの展示会「nano tech 2018 第17回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」において、科学技術振興機構(JST)のブースでは、大阪大学の松本和彦 教授を中心とした研究グループが、グラフェンを用いたバイオセンサによるインフルエンザ診断キットのデモを行っている。
現在、インフルエンザの診断キットはすでに存在しているが、感度の問題から早くても発症後(発熱などの症状が現れてから)12時間を過ぎてからでないと、判定が難しいという課題があった。研究チームが開発しているグラフェンバイオセンサは、こうした従来手法に比べて感度が高く、ヒト感染性ウイルスが数個レベルであっても検出が可能だという。
具体的な仕組みとしては、グラフェン上にインフルエンザのレセプターである糖鎖を修飾させておき、感染患者から採取した検体に含まれるインフルエンザウイルスのレセプター破壊酵素であるノイラミニダーゼがレセプターが結合すると、わずかに電流値が変化することから、これを測定することで、インフルエンザの検出を行うというものとなっている。
グラフェンは、キャリア移動度が非常に高いことから、この僅かな電流値の変化を測定することができるほか、二次元材料であるため、ゼロ距離での測定することで、より高い感度での検出を可能としたという。
同技術は、インフルエンザウイルスのみに適用できるものではなく、アレルギー診断に用いられるIgEたんぱく質の選択的検出など、修飾する糖鎖により、さまざまな物質の判定などに応用が可能であり、例えば、インフルエンザウイルスが変異した場合でも、それがヒトに感染するのかどうか、といったことを判定するといった使い方も可能だという。
なお、同研究プロジェクトは最終的には、実際に薬局や医療機関などでインフルエンザの検出に用いられる検査キットの提供の販売を目指したいとしている。