プログラミングをぐっと身近にする「なでしこ」を使って、プログラミングを習得しましょう。プログラミングができれば、コンピューターをもっと楽しく使うことができます。今回は、プログラミングにおける変数の役割について紹介します。

プログラミングを学ぶ利点

日本語プログラミング言語「なでしこ」公式サイト

ところで、プログラミングができると、何か良いことがあるのでしょうか。一般的に、プログラミングができると、論理的な思考能力(ロジカルシンキング)を高めることができると言われています。

プログラムを作るためには、仕事を細分化し、何をどのように行うかの手順を、しっかりと決めて一つずつ記述していく必要があります。しかし、仕事を各工程に分け、手順を決めて、それに沿って行うというのは、プログラミングだけでなく、あらゆる仕事を行う上で役立つものです。

つまり、プログラミングを学ぶことで、将来あらゆる分野で役立つ思考力を鍛えることができるというわけです。そう思うと、多くの国で、小学生からプログラミング教育が行われているというのも納得です。

また、事務作業を行う上で、プログラミングができる人と、できない人では、作業時間が大きく異なります。最近では、書類作成や会計処理を行う時には、必ずコンピューターを使います。その際、多くの作業は単純作業なので、プログラミングができれば、処理を自動化して、作業時間を最小限に押さえることができるのです。

このように、プログラミングを学ぶと良いことがたくさんあります。それでは、なでしこを使って、プログラミングを学びましょう。

変数を使ってみよう

前回、なでしこを使って、簡単な四則演算を行う方法を紹介しましたが、今回は「変数」を紹介します。数学で「変数」と言えば、「y = ax + b」など、公式や計算式を表現するのに利用したり、方程式を解くのに使ったりしました。数学が嫌いだったという人は、「変数」と聞くと、どうも、逃げ腰になってしまうかもしれませんが、大丈夫です。

プログラミングにおける「変数」は、難しいものではありません。あるデータを分かりやすいように、名前を付けるというだけのことだからです。

ご存じのように、コンピューターには、いろいろなデータを保存することができます。そして、データを保存するときに名前を付けておけば、後から利用する時に便利です。

例えば、250円のリンゴを12個買ったとします。合計金額はいくらでしょうか。なでしこで、この計算を行うプログラムを作ってみましょう。

 250×12を表示。

このプログラムを実行するには、以下のURLにアクセスし、テキストボックスに、上記のプログラムを書き入れて実行ボタンを押すだけです。

なでしこ3簡易エディタ

250円のリンゴを12個買った合計額は?

しかし、一週間後に、このプログラムを見たとき、何を計算するプログラムなのか、すぐに思い出すことができるでしょうか。どんな記憶力の良い人でも、すぐには思い出せないでしょう。

そこで、変数の出番です。変数とは、コンピューターのメモリの中に数値や文字列などのデータを保存するときに、分かりやすい名前を付けることのできるもので、上記の計算式を変数を使って書くと、以下のように書き直すことができます。

 リンゴ価格=250
 リンゴ個数=12
 合計金額=リンゴ価格×リンゴ個数
 合計金額を表示。

改めて、プログラムを実行してみましょう。プログラムを実行して、表示される実行結果は、同じ「3000」です。しかし、変数を使って書いてあれば、250や12が何を表す数値だったのか、すぐに分かります。変数を使うには、「変数名=値」あるいは「変数名は値」のように書きます。

コメントについて

それから、変数と共に使いたいのが、「コメント」と呼ばれる機能です。コメントは、プログラムの説明を書くときに使うものです。なでしこでは、「#」から改行までがコメントです。コメントの部分は、プログラムの動作に何も影響を与えません。

例えば、以下のようにコメントを書くことができます。

 #リンゴの価格と個数を計算 --- (一行目)
 250×12を表示。# 3000が表示される ---(二行目)

「#」から改行までがコメントなので、一行目は、何も実行されません。二行目は行頭から「#」の部分は実行されますが、「#」以降の部分は何も実行されません。

文字を表示する

ここまでの部分で、数値を表示する方法を紹介しましたが、文字を表示する場合も、「表示」命令を使います。ただし、数値と文字を区別するために、文字はカギ括弧を用いて「文字」のように記述します。

 「こんにちは」と表示。

そして、この文字の部分に、変数を埋め込んで表示することもできます。以下のように記述します。

 値段は500
 「リンゴの値段は、{値段}円です」と表示。

文字列の中に変数を埋め込んで表示できる

割り勘を計算しよう

ところで、日本では、学生同士や同僚で食事に行ったとき、お会計は、割り勘にするのが一般的でしょう。割り勘を計算する場合、以下のようなプログラムを書く事ができます。

 # 割り勘の計算
 金額=5600
 人数=5
 負担額=金額÷人数
 「{負担額}円」と表示。

それから、勉強会や何かのイベントで、社会人と学生が一緒に食事に行くことも多くありますが、学生分を社会人の半額にしてあげるよう配慮した割り勘を行う場合も多いものです。

社会人は学生の二倍の金額を払います。つまり、学生の金額を基本にして、社会人数を学生数×2として考えれば、金額を計算できます。このような割り勘計算を行うには、以下のようなプログラムを書く事ができるでしょう。

 # 金額や人数の設定
 金額=5600
 学生数=4
 社会人数=6
 # 割り勘の計算
 学生金額=金額÷(学生数+社会人数×2)
 社会人金額=学生金額×2
 「学生:{学生金額}円」を表示。
 「社会人:{社会人金額}円」を表示。

学生半額を考慮した割り勘電卓のプログラム

変数名を付けるときの注意点

さて、なでしこで変数名を付けるときに一つだけ注意することがあります。それは、「の」「を」「が」「へ」「から」「は」などの助詞を変数名に含めることができないという点です。これらは、なでしこの構文で意味あるものなので変数名に使うことができません。

例えば「リンゴの値段」という変数名は付けることはできません。「リンゴ|の|値段」と三語に分けられてしまうからです。そのため、できるだけ、カタカナと漢字・アルファベットだけを使うと良いでしょう。

今回のまとめ

今回見たように、変数を使って計算プログラムを作っておけば、金額や人数が変更になっても、後からすぐにプログラムを直すことができます。

当然、簡潔で分かりやすい名前を付けておけば、修正や改良がやりやすくなります。ですから、良いプログラマーの条件の一つに「名前を付けることが上手な人」というのを挙げることができます。

プログラミングにネーミングセンスが必要だったなんて、意外ですか?次回もお楽しみに!

自由型プログラマー。くじらはんどにて、プログラミングの楽しさを伝える活動をしている。代表作に、日本語プログラミング言語「なでしこ」 、テキスト音楽「サクラ」など。2001年オンラインソフト大賞入賞、2005年IPAスーパークリエイター認定、2010年 OSS貢献者章受賞。技術書も多く執筆している。