2016年1月から運用が開始される「社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)」だが、まだまだ、「マイナンバー制度って何?」と、制度についてよく知らない人も多い。そこで、この連載では、マイナンバーの疑問にQ&A形式で解説する。第4回では、法人編をお届けする。なお、この連載の内容は2015年3月末の情報に基づいている。その後、変更になる可能性があることをご了承いただきたい。
77.マイナンバーは法人にも割り振られるのか?
法人にも割り振られる。ただし、法人番号の場合は、利用範囲の制約などはなく、自由に使えるという違いがある。
78.法人のマイナンバーはすべての法人に発行されるのか?
国の機関、地方公共団体、設立登記法人はもちろん、「給与支払い事務所等の開設届出書」などの国税に関する届出書を提出している法人、または団体などに指定される。ただし、指定されない法人でも一定の要件に当てはまる場合は、自ら国営庁長官に届け出ると指定が受けられるケースもある。
79.取引先からマイナンバーを取得、提供する必要はあるのか?
支払調書に法人マイナンバーを記載するために、やりとりする必要がある。取引先から報酬を受ける場合には、法人マイナンバーを提供する。また、取引先に報酬を支払う場合には、法人マイナンバーの提供を受ける。
80.個人事業主にも法人マイナンバーは発行されるのか?
個人事業主は法人ではないため、法人マイナンバーは発行されない。法人と報酬の発生するやりとりを行う場合には、個人事業主自身のマイナンバーを利用する。
81.個人用と法人用のマイナンバーの形式は同じ?
個人のマイナンバーは1人で1つの12桁の番号、法人のマイナンバーは数字のみで構成される13桁の番号となるため、形式は同じではない。
82.法人マイナンバーと、既にある会社法人等番号との関係は?
法人が会社法などの法令規定によって設立登記をしたのであれば、現在使っている12桁の会社法人番号の前に検査用の数字を1桁を加えた番号になる。
83.法人に割り振られたマイナンバーはどう使うのか?
「法人番号で、わかる。つながる。ひろがる。」というキャッチフレーズがあることから想像できるように、誰でも自由に法人マイナンバーが使える。いまのところ、名称、所在地、法人マイナンバーの3つはインターネット上で検索できる対象となっている。法人マイナンバーを公表することで、この番号を軸とした法人同士の繋がりを強くしたり、新しいサービスに使われたりすることを想定している。その他の具体的な活用としては、法人税の申告時に記載するなどが予定されている。
84.法人マイナンバーは、個人マイナンバーと同様に利用目的が限定されるのか?
法人の場合は利用範囲に制約はない。インターネット上であらゆる人が検索できることが予定されていて、公表される内容は、商号または名称、本店または主たる事務所の所在地、法人マイナンバーの3つが予定されている。
85.法人マイナンバーは、どうやって取得するか?
個人とは違い、通知カードが届くのではなく、書面によって通知され、インターネットを通じて公表される予定だ。
86.支店や営業所には、本社とは別の法人マイナンバーが発行されるのか?
法人番号は企業単位で割り振られる。そのため、支社や営業所のような企業内の組織であれば、法人番号は割り振られず、本社と同じものを使用する。
87.法人名が変わったら、法人マイナンバーも変わるのか?
法人番号が公表された後に、会社名を変更した場合や、所在地が変わったときは、公表される情報に所在地変更があった事が加えられた状態で更新される。しかし、法人マイナンバー自体はそのまま活用される。
88.法人は従業員のマイナンバーを何に使うのか?
「社会保障」「税」「災害対策」の分野で利用されることから、社会保障や税に関わる部分、例えば、給与支払いや源泉徴収などは「税」、厚生年金や健康保険などは「社会保障」に分類されるので、そのような分野に法人として関わるものについて利用することになる。
89.他の事業者の法人番号を知ることはできるのか?
できる。法人番頭は名称、所在地と共にインターネット上で公表され、名称や所在地で検索加工になる。
90.他の事業者の法人番号を一括してダウンロードできるのか?
できる。月末時点のすべての最新情報や日時の更新情報をCSVまたはXML形式で取得可能。
91.法人マイナンバー以外に公開される情報は何か?
商号または名称、本店または事務所の所在地。これらに変更があった場合には公表情報を更新するほか、変更履歴もあわせて公表される。
92.マイナンバーを発行された法人はすべて、商号または名称・本店又は主たる事務所の所在地・法人番号の基本3情報が公開されるのか?
人格のない社団等の場合のみ、国税庁長官が代表者または管理者に同意を得る必要があるが、そのほかについては基本3情報が公表される。
93.法人がマイナンバー情報を目的外利用した場合、どのような罰則があるのか?
番号法で定められた罰則がある。正当な理由なく番号を外部に提供したり盗用したりした場合や、報告・資料提出を求められた際に虚偽の資料提出や検査の拒否を行った場合などに懲役および罰金の規定がある。
94.マイナンバーを扱うためには、特定個人情報保護評価を受ける必要があるのか?
民間事業者が行う必要はないが、任意の判断で実施することはよい。特定個人情報保護評価を行う義務があるのは、行政機関、地方公共団体、独立行政法人等、地方独立行政法人、地方公共団体情報システム機構と、健康保険組合などの情報連携を行う事業者のみとなっている。
96.証券会社や保険会社は、顧客のマイナンバーを取得しなければならないのか?
税や社会保障の手続きを個人に変わって行う場合、証券会社や保険会社、金融機関でもマイナンバーを取得する必要がある。たとえば法定調書等を提出する際に、顧客のマイナンバーを記載する必要がある。
96.法人は、マイナンバー制度開始に向けて何か準備する必要はあるのか?
マイナンバーを管理するシステムや環境を構築するとともに、従業員に対するマイナンバー制度の周知と、教育を行なう必要がある。特に通知カードが届いた時にきちんと保管することと、マイナンバーの扱いには厳しい罰則もついていることなどの教育を行っておきたい。
97.情報システム部門以外でマイナンバーに関して特に注意が必要な部門は?
人事部門や総務部門など、従業員を管理する部門で特に注意が必要。年金番号や扶養控除申告書類にもマイナンバーが記載されるため、こうした書類を扱う部署はマイナンバーを扱う部署ということになる。
98.従来は許されてきた業務が違反になることはあるのか?
企業が個人の事務処理を代行していた部分が問題視される可能性はある。たとえば、健康保険に関する手続きは健康保険組合と個人が直接やりとりすることを想定した法律になっている。人事部門等が一旦書類を預かり、健康保険組合に提出するような手法は、マイナンバーが記載された書類を必要なく扱うことになりかねない。直接のやりとりを促すか、委任状を提出させて企業が正式な代理人となる、健康保険組合の業務委託先になるなど準備が必要。
99.マイナンバーを管理する専門システム以外に新たに構築すべきシステムはあるのか?
マイナンバーを扱うすべてのシステムに、個人情報を扱うシステムとして適正なセキュリティを確保する必要はある。代表的なものは人事・総務関連のシステムだが、外部講師への依頼や不動産の賃貸関連などを営業管理システムで処理していた場合などは、そこにも相応のセキュリティを導入するか、営業管理システムではマイナンバーを扱わないで済むように処理方法を変更しなければならない。
100.マイナンバー対応のための社内システム変更や構築は社内で行えるのか?
技術と知識があれば不可能ではない。しかし短期間で情報を把握しながら全面的な対応を行うのは難しく、社内の負担が大きくなる。社内の状況をよく理解した専門チームを構築した上で、専門的なサービサーと協力して構築するなどの対応が望ましい。