最後に、過去3回の記事で述べてきた話を踏まえつつ、サーバの機種選び、およびスペック決定に際して念頭に置いておきたいポイントについてまとめてみたい。

新しい酒は新しい革袋に

まずはもう一度、評価用にお借りした機材のスペックをおさらいしておこう。

「MousePro SV220STシリーズ」

・CPU : Intel Xeon E3-1265Lv3(4コア/2.5GHz)
・RAM : 4GB ECC
・SSD : Intel DC S3500 300GB×2、RAID 0 構成で総容量530GB ※実表示値
・HDD : SATA 7200rpm 2TB×2、RAID 1 構成で総容量1770GB ※実表示値

さすがにこれぐらいのスペックになると、Windows Server 2012 R2は「瞬時」とまではいかないものの、それに近い速さで起動してくれる。

実はこれまで、手元で実験に使用していたPCはCPUとしてCore 2 Duo(2コア/2.4GHz)を搭載しており、Windows Server 2008やWindows 7ならまだしも、Windows Server 2012になるとレスポンスが悪くてイライラさせられていた。それと比べると、今回お借りしたMouseProサーバの速さは圧倒的で、雲泥の差どころではない。

さすがにCore 2 Duoというのは極端すぎるが、CPUをはじめとするハードウェアの性能不足はOSの足を引っ張り、能力を発揮するのを妨げることもあるので、古いデスクトップPCをサーバに転用するのはお薦めできないのだ。新しい酒(OS)は新しい革袋(サーバ)に入れるべきである。

とはいっても、投じることができる費用には限りがある。それであれば、コストパフォーマンスに優れたサーバ専用機を選び、運用に差し支えのない範囲で台数を集約して、できるだけ高性能のサーバに集中投資する方が望ましいのではないだろうか。

性能面で見劣りするサーバが何台も林立していたのでは、管理が面倒になり、場所をとり、電力消費が増えて、しかも業務の効率が上がらない。さらに、ハードウェアが古ければ故障や動作不安定のリスクが増えて、そちらの面でも業務の足を引っ張りかねない。それでは、あまり賢明な投資とはいえない。

導入はどれぐらい楽にできるか?

とはいうものの、新しいサーバを導入しても、立ち上げに手間がかかるようでは困る。Windowsサーバであれば、デスクトップOSとしてWindowsの扱いに慣れている人にとっては取っ付きやすい。

では実際のところ、MouseProサーバでもってWindowsサーバを稼働させるために、どの程度の手間がかかるものだろうか。

今回、お借りしたMouseProサーバを据え付けて電源を投入した後、ログオン画面を表示するまでに要した作業は、以下の3ステップである。

・1画面目 : [国または地域]と[アプリの言語]の選択
・2画面目 : ソフトウェアライセンス条項への同意
・3画面目 : 管理者パスワードの設定

これで設定が完了してログオン画面になる。以後は通常のWindowsサーバと同様、[Ctrl]+[Alt]+[Del]キーを押してログオンすればよい。当初はAdministratorユーザーのアカウントしかないから、それでログオンする必要がある。その他のユーザーアカウントについては、個別に作成する必要がある。

ただし、それでいきなり運用を開始するのではなく、やっておきたい作業がまだいくらかある。

これはMouseProに限らずWindows Server 2012全般に共通することだが、初期状態ではランダムなコンピュータ名が割り当てられているので、それを最初に変更しておきたい。初期設定のコンピュータ名のままでは覚えにくいし、あとあと、管理がしにくいからだ。

また、TCP/IP設定についても同様だ。最初はDHCPによる自動割り当てになっているが、それではIPアドレスが変動する可能性があり、管理上は問題がある。サーバごとに割り当てるIPアドレスを事前に決めておいて、固定割り当てにする方が望ましいだろう。

これらの作業の手順については、MouseProサーバというよりもWindows Server 2012の話になるので、本稿では割愛する。拙稿「にわか管理者のためのWindows Server 2012入門」などを参照していただきたい。

ともあれ、ここまでの作業をこなせば、サーバOSの部分は立ち上がる。あとは、ファイルサーバであれば共有の設定、Active Directoryの構築であればドメインコントローラの構成、WebサーバであればIIS(Internet Information Service)の役割追加と所要のプログラム導入、といった具合に、用途に合わせた設定作業やソフトウェア導入作業を行う必要がある。

このように、Windows Server 2012は導入が比較的簡単ながら、より高度なことをしたければ、それに応えてくれるポテンシャルも併せ持っている。このあたりの情報は、「Microsoft TechNet」を筆頭として豊富な情報量を誇っているから、比較的、導入の敷居は低いといえるのではないだろうか。それを活用すれば、結果的にMouseProサーバを存分に働かせることができる、という図式である。

豊富な情報を利用すればMouseProサーバをさらに活用できる