前回は、マウスコンピューターの小型サーバ「MousePro SV220STシリーズ」の構成例や延長保証メニューについて取り上げた。もちろん、スペックや保証メニューが優れていることは重要だが、実際のサーバとしての性能はどうだろうか。かけられる負荷には限界があるが、可能な範囲で試してみた。

高速/大容量ストレージの必要性

本連載の第1回目で「ファイル共有用のサーバは自前で持っている方が望ましい」と書いた。それはその通りだと思うが、キロバイト単位の文書データが大半を占めていた昔と異なり、昨今ではデータ量は肥大化している。

デジタルカメラで撮影した静止画ひとつとっても、1ファイルあたり軽く数メガバイト、RAWデータなら数十メガバイト、動画データであれば、さらに大きい。そういった膨大なデータを捌きつつ、充分なパフォーマンスを確保するには、サーバの性能、とりわけストレージのI/O性能が鍵になる。

これを書いている筆者自身は個人事業主だから、データ量といってもたかが知れている。そうはいっても、取材の際に撮影した写真、とりわけRAWデータが膨大な量(当社比)になっている。会社や事務所であれば、なおのことだろう。

しかも、空き容量をいちいち気にしながら使うのも、イライラしながらファイルのコピーが終わるのを待つのも、どちらも精神衛生上よくない。だから、サーバのストレージについては、十分な容量とI/O性能の確保が必須といえる。

では、そのストレージをどう選択するのか。一般的にはHDDとSSD(Solid State Drive)という二種類の選択肢があり、SSDの方が高速だ。ただし、SSDの容量は比較的少ないので、共有フォルダをSSDに置くような使い方は非現実的だ。

SSDというと高速性に注目されることが多いが、サーバで使用することを考えた場合、機械的な駆動部分がないために故障の可能性が低下する点にも着目したい。それが活きるのは、OSや各種アプリケーションソフトをSSDに、データをHDDに、という使い分けだろう。OSや各種アプリケーションソフトをSSDに置くことで、ストレージの故障で動作が不能になる事態を回避しやすくなるからだ。

「故障したらドライブを交換して再インストールすれば良い」といっても、再インストールだけで済むわけではなく、各種の設定やユーザーアカウント情報の復元、セキュリティ修正プログラムの再適用といった手間がかかる。それを考えると、OSや各種アプリケーションソフトを配置するドライブはできるだけ故障してもらいたくない。そのため「機械的な可動部分がないSSDが最適」というわけだ。

一方で、データはバイト単価が安いHDDに置き、ドライブが故障する可能性についてRAID-1、ないしはそれ以上のレベルのRAIDを組んで対処する。もちろん、RAIDを構築したからといってバックアップをとる必要性がなくなるわけではないが、安心感は確実に高まるし、多数のドライブをアレイ化すればパフォーマンスも向上する。

「MousePro SV220STシリーズ」の場合、HDDを最大4台まで、SSDを含めて最大5台まで内蔵できるので、RAID-5の構成にすると3TB×4台、利用可能容量は3台分の9TB、という計算になる。もっとも、容量よりも冗長化を重視したいということであれば、バックアップ用HDDまでミラーリングする目的で、3TB×2台ずつのRAID-1(合計4台)、という構成も選択できる。

実は、バックアップという話になると、データだけ複製しておけば済むというものでもない。システム全体のバックアップをこまめにとることも必要だ。毎月のようにセキュリティ修正プログラムがリリースされる昨今、OSを含めたサーバの動作環境一式を迅速に復活させることができれば、その方が望ましいからだ。

実機で試してみよう!

では、前置きはこれくらいにして、実際に「MousePro SV220STシリーズ」(ハイエンドモデル)を使ってみた結果についてレポートしよう。ハードウェアの仕様は以下の通りだ。

・CPU : Intel Xeon E3-1265Lv3(4コア/2.5GHz)
・RAM : 4GB ECC
・SSD : Intel DC S3500 300GB×2、RAID 0 構成で総容量530GB ※実表示値
・HDD : SATA 7200rpm 2TB×2、RAID 1 構成で総容量1770GB ※実表示値

まずはお約束で、ベンチマークプログラムを走らせてみた。使用したのは「CrystalDiskMark V3.0.3b」で、結果は以下の通りだ。

「CrystalDiskMark V3.0.3b」の計測結果(システム用SSD、RAID-0構成)

「CrystalDiskMark V3.0.3b」の計測結果(データ用HDD、RAID-1構成)

さすがにSSDでアレイを組んだCドライブは速い。容量を考えると共有フォルダの配置場所としては使いにくいが、「さほど大容量ではない一方で、より速さを求められるデータ」であれば、SSDに配置する選択肢もあるかもしれない。

それはともかく。ローカルで動作するベンチマークプログラムだけでは、実際の運用状況に即したテストにならない。サーバなのだから、ネットワーク経由でデータをどれだけ迅速に出し入れできるかが勝負である。といったところでちょうど、取材で撮ってきたJPEG画像とRAWデータがひと山あったので、それをコピーしながら速度を測ってみた。

コピー元は仕事用本務機にしている自作PCで、CPUはIntel Core i5-760(4コア/2.8GHz)、HDDはWD Red 2TB、RAIDは組んでいない。OSはWindows 7(32bit版)。もちろん、ネットワークはギガビット・イーサネットである。

ただし、MouseProサーバにコピーしたときの数字だけでは比較にならないので、自宅で常用しているサーバと比較してみた。こちらはCPUがIntel Atom 330(2コア/1.6GHz)、HDDは東芝製1TB(5400rpm)、RAIDは組んでいない。OSはWindows Server 2008 R2(64bit版)だ。

コピーに際しては、エクスプローラとマウス操作の組み合わせではなく、コマンドプロンプトでrobocopy.exeを使っている。robocopy.exeはコピー終了時に転送速度を表示してくれるので、手作業で時間を計測するよりも精確だろうと考えたためだ。その結果は、このようになった。

<< 自宅サーバ >>
・所要時間 : 53秒
・転送速度 : 2,558.109MB/min
<< MouseProサーバ >>
・所要時間 : 36秒
・転送速度 : 3,707.869MB/min

コピー速度は実に1.5倍近い差になった。もともと、CPUとストレージの性能差は圧倒的だから、比較対象にされた筆者の自宅サーバにとっては酷な話だが。

サーバでは複数のユーザーから同時に読み書きのリクエストが集中することが前提になる。すると、単一ユーザーによるアクセス性能のテストだけでは参考にならないかもしれない。しかし、負荷が増大すれば、「遅いHDDの単独使用」と「速いHDDのRAID」の差は開く一方だろうから、よもや逆転はないだろう。

だから、よほどユーザー数が少ない小規模事業所でなければ、大量のファイルを読み書きするサーバではRAID、なかでもRAID-10の構成を取りたい。負荷が増大するほど、アレイ化のメリットは効いてくる。

ただし、しつこいようだが、RAID構成でもバックアップは必要だ。その点、MouseProサーバは、高速なUSB 3.0とeSATAポートを搭載しており、外付けHDDへのバックアップも高速かつ容易に行えるので安心だ。さらに、Windows Server 2012であれば、OS標準装備の高機能なバックアップツールがあるので、それを活用できる。