打ち上げ翌日の7月1日、回収された観測ロケット「MOMO2号機」の機体を見ることができた。同機は、ロケット開発ベンチャーのインターステラテクノロジズ(IST)が開発。宇宙への到達を目指し、前日早朝に打ち上げを実施したものの、約4秒後にメインエンジンが停止、射点付近に落下して失敗していた。

  • 観測ロケット「MOMO2号機」が落下した瞬間

    観測ロケット「MOMO2号機」が落下した瞬間 (提供:インターステラテクノロジズ)

機体は地面に激突した衝撃で中央付近から折れ、激しく炎上。しかし、あれほど激しく炎上していた割りには、溶けずに残っていた部品が多かった印象だ。ISTの稲川貴大・代表取締役社長は「メインエンジンは丸ごと残っていたし、アビオニクスは落下後もしばらく動いていた。検証しやすいモノの残り方だった」と、前向きに捉える。

  • 射点で回収された機体

    射点で回収された機体。激しく損傷してはいるが、大部分が残った

  • エンジン周りの部品

    エンジン周りの部品。燃焼室も残っており、社内で検証が始まっていた

  • 燃焼室の上部

    燃焼室の上部。アルミ製の支柱が折れ曲がってしまっている

  • 燃焼室の上に付く2軸ジンバル

    燃焼室の上に付く2軸ジンバル。これで噴射方向を制御する

液体酸素タンクなど、損傷が激しい部品もあるものの、主要な部品はほぼ残っていたという。これは、今後の原因究明を進める上で、非常にプラス材料だ。もし10秒20秒とエンジンの燃焼が続き、より高い位置から海中に落下していたら、これほど多くの部品を回収するのは難しい。変な言い方ではあるが、不幸中の幸いだったと言えるかもしれない。

  • 液体酸素タンクは原形をとどめていない

    液体酸素タンクは原形をとどめていない。完全に潰れている

  • アルミ製のタンクが高熱のため変形

    アルミ製のタンクが高熱のため、まるで布のように変形している

やはり気になるのは、メインエンジンで何が起きたのか、だ。同社は今後、まずはメインエンジンで発生した異常について、原因の究明に全力を挙げる方針。想定されるシナリオはいくつかあるが、事故原因を調べる手法として一般的なFTA(故障の木解析)を活用し、テレメトリや物的証拠と整合性のあるシナリオを探る考えだ。

なおMOMO2号機は、ロール制御のために、新たにガスジェネレータを搭載、尾翼下の可動ノズルからガスジェットを噴射している。離床直後、この可動ノズルから大きな炎が出ているように見えるが、通常であればこれほど見えることはないそうで、メインエンジンで発生した事象との関連性を調べているとのこと。

  • 離床直後の様子

    離床直後、横方向に通常より大きな噴射が見られた (提供:インターステラテクノロジズ)

MOMOを商業化し、超小型衛星用ロケット「ZERO」(コードネーム)の開発に注力するために、なるべく早く3号機を打ち上げ、再チャレンジしたいところではあるが、今後のスケジュールが見えてくるのは、この原因究明の後になるだろう。

  • 最初に地面に激突したノズル

    最初に地面に激突したノズルのグラファイトはバラバラに壊れている

  • カーボン製の尾翼は4枚中、1枚だけが行方不明

    周囲を捜索したものの、カーボン製の尾翼は4枚中、1枚だけが行方不明

  • 2号機打ち上げの延期の原因となったレギュレータと窒素タンク

    2号機打ち上げの延期の原因となったレギュレータと窒素タンク(上)

  • エタノールタンクは損傷が小さい

    液体酸素タンクに比べると、エタノールタンクは損傷が小さい

  • 「なつのロケット団」のロゴが入っている基板

    何かの基板。「なつのロケット団」のロゴが入っている

  • 推進剤の押しガスとして使われている高圧ヘリウムのタンク

    推進剤の押しガスとして使われている高圧ヘリウムのタンク

また、射点の様子も見ることができた。機体が落下し、液体酸素タンクが見つかった部分のコンクリートは激しく損傷。炎上によりかなりの高温になったことをうかがわせる。しかし、それ以外の場所については大きな損傷は無く、次の打ち上げに向け、大規模な改修は必要無さそうに見えた。

  • 落下直後、射点は炎に包まれた

    落下直後、射点は炎に包まれた (提供:インターステラテクノロジズ)

  • 射点の設備

    射点の設備。左奥に寝ているのが、ロケットのランチャー

  • 液体酸素タンクが落ちた地面

    液体酸素タンクが落ちた地面は、コンクリートが激しく損傷

  • 炎上地点を上から見たところ

    炎上地点を上から見たところ。機体は写真上方に向け寝ていた

  • フェアリングがあった場所

    フェアリングがあったのはこの場所。地面に赤い塗料が残っていた

  • 配管系のダメージが大きい

    やや痛いのは、配管系のダメージが大きいところ。高価らしい

  • 無傷だった吹き流し

    吹き流しはなぜか無傷だった。これで、大体の風速が分かる