ディスプレーはモバイル機器を構成する重要なデバイスである。現在、私たちが使用している典型的なモバイル機器は、スマートウォッチ、スマートフォン、タブレット、ノートブックPCなどであるが、今後はAR/VR技術の進展に伴ってXR(Extended Reality)映像を映し出すディスプレーも普及していく。これは「手のひらの2次元情報」から「身の回りの3次元情報」への大きな転換を意味する。

さらには、車のモビリティ化に伴って、自動車が単なる移動手段から電動化、自動運転、そしてサービスのプラットフォームに変化し、この移動空間でも情報表示が重要な役目を負うことになる。これらの情報を表示する車載ディスプレーも今後のモバイルの重要な範疇と見なすことができる。これらモバイルディスプレーの2030年に向けた方向を、2回に分けてレポートする。

スマートウォッチはOLEDからマイクロLEDへ

現在市場に出ているスマートウォッチの代表と言えば「Apple Watch」であり、その最高機種のUltraには薄くて軽いという利点を活かしたフレキシブルOLEDが採用されている。このフレキシブルOLEDは主に韓国のLG Displayが供給しているが、最近はOLEDでも技術力を付けてきた中国企業が参入を狙っている。

  • スマートウォッチ用ディスプレーの動向

    図1 スマートウォッチ用ディスプレーの動向。現在のフレキシブルOLEDに代わって将来は高輝度、低消費電力のマイクロLEDが期待されている

今後のスマートウォッチには、マイクロLEDも期待されている。マイクロLEDが望まれるのは、高輝度と低消費電力であるが、現状ではコストを含めた製造技術が課題であり、マイクロLED搭載の製品が市場に出るのは2025年~2026年以降とみられている(図1)。

スマートフォン・タブレット・ノートPCはフォルダブルやスライダブルへ

モバイルの代表例であるスマートフォンには様々な機能が詰め込まれている。中でも人々の関心が高いのは「折り畳み機能」であろう。表示は大画面で見たいが持ち運ぶ際にはコンパクトに折りたたむのが理想である。折り畳みの出来る機種にはフレキシブルOLEDが採用されているが、このOLEDパネルをカバーする為の多層の材料があり、これら全体に無理な応力をかけずに信頼性を確保しなければならない。最表面のカバーには、硬度と質感を保つために超薄型ガラス(UTG)が採用される。その他にもディスプレーの下にカメラを配置するアンダーパネルカメラ(UPC)対応や外光反射を防止する為に設けられていた円偏光板を外して光の透過率をアップするなど、様々な最新技術が盛り込まれている。

  • モバイル用ディスプレーに搭載されている様々な機能の代表例

    図2 モバイル用ディスプレーに搭載されている様々な機能の代表例。(1)折り畳み(左)、(2)アンダーパネルカメラ(中)、(3)円偏光板レスによる外光反射防止(右) (Samsungのデモ展示などから整理)

フレキシブルOLEDの実用化によって、従来の固定された機器から柔軟な形状変更が可能な機器へと進化させることができ、個人のライフスタイルやビジネスシーンに合わせた柔軟な使用が可能となる。フレキシブル性を活かして、フォルダブルでは二つ折りから三つ折りタイプへ、スライダブルで必要なときに画面サイズを引き延ばすタイプ、ローラブルでは不要な時はコンパクトに巻き取るタイプなど様々な方式が提案されている。さらにスマートフォンだけでなくノートブックPCでも、表示画面部分と併せてキーボード部分もタッチ操作出来る一体のディスプレーにして、使わないときは折りたたんで持ち運ぶという使い方も可能になってくる(図3)。

  • フレキシブルディスプレーの数々

    図3 フレキシブルディスプレーの数々。(1)フォルダブル(左)、(2)スライダブル(中)、(3)ローラブル(右) (K- Display 2023 Exhibition(8/16-18@Seoul)のSamsungブースにて撮影)

(次回に続く)