XPからの置き換えで8.1を導入

ローソンは2014年、フランチャイズ店舗の経営指導を担うスーパーバイザー(SV)向けに、1500台の2-in-1型Windows 8.1端末を導入し、現場の生産性向上に活用してきたという。その狙いはどこにあるのか、ローソン 業務統括本部 システム基盤部 部長の高原理彦氏と、同社 情報活用推進部 アシスタントマネージャーの本田 恵美氏に話を聞いた。

ローソン 業務統括本部 システム基盤部 部長の高原理彦氏(左)と同社 情報活用推進部 アシスタントマネージャーの本田 恵美氏(右)に、Windows 8.1タブレットの導入について話を聞いた

導入のきっかけは、2014年4月にWindows XPのサポート終了を迎えるにあたって、それまで社内で運用してきた業務用PCの一括更新が必要になったタイミングという。「7000台程度のWindows 8.1端末を導入した。その際、SV向けのPCとしてタブレットとノートPCの両方のスタイルで利用できるレノボのThinkPad Helixを採用した」と高原氏は語る。

ローソンによるIT活用は、それ以前から続いてきたものであるという。「かつては情報を扱うために、常にノートPCを広げる必要があった。しかしスマホ、タブレットの普及に伴い、2012年にはAndroidタブレットを導入している。ITを活用して生産性を上げるという課題には、継続して取り組んできた」(高原氏)と説明した。

社内端末の刷新にあたって、なぜWindowsタブレットを選択したのだろうか。

高原氏は「2年前に配布したAndroidタブレットの更新時期も重なり、かつ現場での情報活用も広がり、利用ニーズが一段と高まった。そのためSVの使いやすさとニーズを両立するためにWindowsタブレットへ統合した」と、2-in-1導入に踏み切った背景を語った。

「タブレットとノートPCを別々に持ち歩くのではなく、1台に統合したかった」と語る高原氏

具体的な導入機種の選定にあたっては、国内、海外メーカーのあらゆる選択肢を検討したという。「その中でもThinkPad Helixは、端末としての機能面、HWの性能を総合的に比べた結果」と本田氏は語る。

「ThinkPad Helixは機能・性能ともに魅力を感じた」と語る本田氏

通信環境については、ThinkPad Helixのセルラー通信に対応したモデルを採用しており、NTTドコモのSIMカードを入れて運用しているという。「これまでの経験から、モバイルルーターではバッテリーが切れる場合があるなど、使い勝手に問題があった。セルラー通信が本体と一体化していれば、Wi-Fi接続の手間が省けるなどストレスも少ない」(高原氏)とメリットを語った。

セキュリティ面では社内ネットワークへの接続にVPNを利用するため、ドコモのセルラー通信以外にも、ローソンの店舗に導入している業務のネットワークや、来店客用の「LAWSON Wi-Fi」など、一般的なインターネット接続環境を利用できるという。「ワンクリックで自動的に接続できるタイルをスタート画面に用意している」(本田氏)と工夫を語った。

業務用ストアアプリは積極的にバージョンアップ

業務用アプリとしては、SVの日常業務に必要な情報をダッシュボード状に集約した独自のストアアプリ「SV Pit」を新たに開発したという。「アジャイル開発の経験がある会社と協力し、短いサイクルでリリースを繰り返してきた。日本マイクロソフトのサポートも役立ったので、特別に苦労した点はない」(本田氏)と経緯を語る。

現在もアプリは積極的にバージョンアップを続けており、2015年1月からのフェーズではアプリのユーザーインタフェースを刷新。新機能として、SNSで話題になった商品など全社的に共有したい情報を盛り込んだ。「あちこちの情報源を参照する必要がないよう、一カ所に集約したい」(本田氏)と方向性を語った。

アプリの特徴としては、使いやすさを挙げる。「SVの年齢層は20代~50代と幅広い。マニュアルを見なくとも、誰もが直感的に使えるインタフェースにこだわった」(本田氏)と語った。タブレットの特性を活かした機能として、フランチャイズ店舗のオーナーに手書きでサインをしてもらう、といった機能も備えている。

ローソンがフランチャイズ店舗の経営指導に利用している業務用ストアアプリ「SV Pit」の画面

アプリの配布には、社内PCを管理するために運用しているSystem Centerをそのまま用いることができたという。「ユーザーであるSVの視点では、いつの間にかアプリが入っているように感じる。インストールを意識する必要がない」(本田氏)と語った。サーバー側はプライベートクラウド上に構築しており、オープンソースのソフトウェアを組み合わせた内製のシステムとしている。

SV Pitではローソンの顧客に訴求するキャンペーンをフランチャイズのオーナーへレコメンドする機能なども備える

Windowsストアアプリとして構築したことで、一方ではiOSやAndroidへの展開が困難になってしまう。この点は高原氏も「たしかにその通り」と認める。しかし、「汎用性の面ではWebアプリが有利だが、常にオンラインで使えるとは限らない」(同)と課題を挙げる。ストアアプリはオフラインでも利用可能な設計となっており、データを溜めておくことで、再度オンラインになったときにアップロードする仕組みを用意しているという。

SV用アプリの利用状況の分析には、Excel 2013の「Power BI」を活用している。「アプリ動作のログをサーバー側に記録しており、誰がどの機能を使っているか、といった傾向を分析し、今後の改善につなげている」(本田氏)と語る。

これに対してPower BIは、「自ら画面を作る必要がなく、手軽に使える。KPIなど全社的に標準化が必要なデータ分析は別途あるが、自由な分析について活用している」(同)とメリットを語った。

Windows 10は今後検討

スマートフォンについては2010年ごろから活用しており、タブレットやノートPCを使うまでもない、簡単な入力作業や写真レポートなどに、iPhoneとAndroidの両方を活用しているという。「スマートフォンの機種は定期的に更新している。今後、Windows PhoneがWindows 10になれば検討するかもしれないが、未定」(高原氏)とした。

Windows 10については、「XPのサポート終了前に、3ヶ月で8.1に移行を完了させるなど、大きな労力をかけた。業務アプリの対応も必要になるため、今後検討する」(高原氏)とした。現在でもレガシーシステムについては、仮想環境を活用。Internet Explorer 6に依存する業務アプリなどを、VMware ThinAppで実行しているという。「OSの選択というよりも、いかに業務ができるか、という視点が重要。現場の人が使いやすいものを優先していく」(同)と今後の方向性を語った。