ここ数ヵ月、当研究所にも「スマートフォン対応をどのように考えればよいのか」というコンテンツ配信事業者からの相談や問い合わせが増えてきました。Android端末の売れ行きが好調とのウワサも聞かれますが、今回はモバイルコンテンツを運営している企業50社に協力いただき、現状のアクセス状況、1年後のアクセス比率予測、スマートフォン対応の予定など、普段はあまり公開されることのない情報についてアンケート調査を実施しましたので、その結果について触れてみたいと思います。

現状、スマートフォンはPCと同じ扱い

まず、現状の携帯電話端末とスマートフォンのアクセス比率について調査したところ、平均してスマートフォン 14.0%、携帯電話端末 86.0%という結果が得られました。

事業者別では、回答の多くが「スマートフォン 10%に対し携帯電話端末 90%」となっており、多くのモバイルコンテンツにおいて、すでにアクセス数の1割をスマートフォンが占めていることが伺えます(もちろん、各コンテンツの内容やユーザー属性によって差が出るところですが、デリケートな情報ゆえ全体結果での考察のみに留めさせていただきます。

また、現状のスマートフォンのアクセスに対する各コンテンツでの対応方法としては、「PC用サイトを表示(PC扱い)している」という回答が35.8%と最も多くなり、「スマートフォンアプリ、もしくはスマートフォン専用サイトで対応している」という回答は13.3%、「ブロックしている」という回答(15.1%)もありました。

スマートフォンからのアクセスに対するコンテンツ側での対応方法(2010年12月 MMD研究所調べ)

スマートフォンからのアクセスは1年後に2倍以上に

続いて、1年後のアクセス比率について、各社がどのように予測しているのかを調査したところ、平均するとスマートフォン 32.0%、携帯電話端末 68.0%という結果が得られました。

現状の比率からみるとスマートフォンは2倍強の伸びとなりますが、事業者によっては「スマートフォン70%に対し携帯電話端末30%」あるいは「スマートフォン80%に対し携帯電話端末20%」と予測するなど、各社によって大きな開きがあります。しかし、スマートフォン比率の拡大という点では、ほぼ全社が一致する結果となっています。

1年後、スマートフォンと携帯電話端末からのアクセス割合はどうなっているか?(2010年12月 MMD研究所調べ)

また今後、これら拡大するスマートフォンからのアクセスについて、どのような対処法を予定しているかという問いに関しては、「TOPなど一部のページだけを対応(部分スクラッチ)」という企業が18.6%、「スマートフォン向けサイト構築(フルスクラッチ)」が23.3%、「専用アプリを開発」が16.3%と様々で、「まだわからない(検討中)」という回答も多く(41.8%)、コンテンツごとに目下試行錯誤中……という様子が伺えます。

コンテンツのスマートフォン対応状況(2010年12月 MMD研究所調べ)

スマートフォンへの対応に決定打を見いだせない要因の1つとして、Flash対応の有無、アプリフォーマットの違い、個別のマーケットプレイスなど、様々な違いがある2大プラットフォーム(AndroidとiPhone<iOS>)への対応をどのようにすべきかという課題があります。

今回の調査では、「Andoroid対応を優先する」という企業が13.0%、「iPhone対応を優先する」という企業は17.4%、「両方同時進行で対応」という回答は34.8%、そしてそれ以外の企業は「検討中、あるいは予定なし」と、ここでもやや事業者が混迷している姿が見えます。

今後、公式サイト(携帯キャリア課金)の扱いがスマートフォンではどうなるのか、AndroidとiPhone(iOS)のシェアの推移はどうなるのか……など、まだまだ不確定要素が多く、今後も業界全体で試行錯誤が続くのではないかと思います。ただ、いずれにせよ看過できないボリュームになりつつあることは間違いないようです。

業界ではこれまで「女性層とガラケー(従来のキャリア携帯電話端末)のヘビーユーザーはスマートフォンに浮気しない」と考えられており、ユーザーのスマートフォンへの移行はゆるやかに進むだろうという見方が大勢でした。

しかし最近では、若年層の女性向けモバイルメディアを運営している企業の担当者からの「Android端末のアクセスが、11月と12月を比較すると10倍増の勢いを見せている」といった情報もあり、どうやらスマートフォンへの移行は、予想に反して急ピッチで進んでいるというのが実情のようです。

■ 協力モバイルコンテンツ(一部抜粋)
DECOLOG / 魔法のiらんど / P+KACHI SNS / AD TUNE / フォレストページ / マイクロアドモバイル / ネイルクルー / モンキータウン / 着メロ.com / ジャンカラケータイ会員サイト / ネットマイルモバイル(他・全53社)

今回の調査データは下記のMMD研究所Webサイトで公開しています。

モバイルメディアのスマートフォン対応に関する運営者アンケート調査 - MMD研究所

<本稿執筆担当: 田川悟郎>

著者紹介

MMD研究所

MMD研究所(モバイル・マーケティング・データ研究所)は、モバイルユーザーマーケットのリアルな動向を調査・分析し、社会へ提供することを目的として2006年9月に設立されたマーケティングリサーチ機関(運営は株式会社アップデイト)。本コラムでは、同研究所による調査データをもとに、ヒットにつながる効果的なマーケティング手法について考察していきます。