mixi、GREE、モバゲータウンの登録会員数が揃って今年2000万人を突破しました。GREEの会員数(2125万人。2010年7月末時点)を例に取ると、日本国民の約17%が登録している計算になります。さらに細かく0~15歳未満の子供たちと70歳以上のシニア層を除いた世代で計算すると、約24%、おおよそ4人に1人がこれらのサービスの会員になっていることになります。今回当研究所では、日本国内で大きなシェアを持つこれら3大サービスに加え、シェアを伸ばしつつあるTwitter、Facebookなどを含む主要なオンラインサービスの日本国内での認知度や個人情報公開(実名利用)に関する意識調査を実施してみました。

TV・雑誌への露出で認知度に大きな差

まず、テレビCMを展開しているGREEやモバゲータウン、mixiの3大サービスに次いで認知度が高いのは「Twitter(93.6%)」であることが判明しました。そして、僅差でこれに「YouTube(93.0%)」が続きます。

CMこそ展開していないものの、TwitterやYouTubeなどは雑誌やテレビのバラエティ番組の中で紹介されるケースも非常に多く、認知度のアップに貢献していると考えられます。また、これらの5つのサービス共通の傾向として、性差年代問わず幅広く認知されていることもわかりました。

ちなみに、最も年代によって差が見られたのはFacebookの認知度で、男女とも20~30代をピークに約3割の認知度があるものの、全体平均では20.9%に留まっています。

また、完全登録制のサービスと、登録しなくても閲覧・利用できる(TwitterやYouTubeのような)サービスが混在しているので単純に比較することはできませんが、利用率については下のグラフの通り、かなりの開きがあることもわかっています。

「ソーシャルメディア及びSNSなどのオンラインサービスの認知度・利用経験」(2010年11月 MMD研究所調べ)

「匿名利用」のmixiか「実名利用」のFacebookか

ここでは、これらのサービスの中からライバルとして比較されることの多いSNS、mixiとFacebookについて触れたいと思います。

日本国内でのシェアを伸ばしつつある「黒船」と、シェアを守ろうとする「メイドインジャパン」という構図で語られることが多いFacebookとmixiですが、果たして日本国内でのシェアは今後どのように推移するのでしょうか?

現状の両サービスの違いを見ると、機能の有無や携帯対応のレベルなどのシステム的な違いも含め、シェアの行方を決定づける程の大きな違いはないように見受けられます。では、実名登録を前提としているFacebookと、そうではないmixi、この違いについてはどうでしょうか?

このあたりの事情を知らない人のために簡単に説明すると、Facebookは登録時に「姓」と「名」の入力を求められますが、ユーザー名(ハンドルネーム)の入力項目はなく、原則として「実名」での利用が前提となっています。これに対しmixiでは、「姓」と「名」の入力項目の前に「ニックネーム」の入力項目があり、姓名については登録後に詳細な公開・非公開の設定ができるようになっています。

もちろん、mixiで実名を公開することもできますし、Facebookに偽名で登録することも(実名を証明するための審査がないので)事実上可能です。しかし、今回の調査で「サイト上で実名を公開しているか否か」についてリサーチしたところ、mixiで実名を公開しているユーザーは16.5%、Facebookについては(利用者数が少なく参考程度の結果ではありますが)51.3%のユーザーが実名を公開しているという結果が得られました。この結果はそれぞれのサービスの特性(実名利用か匿名利用か)が現れていると考えられます。

両サービスの違いがわかったところで、では日本のユーザーがこの「実名利用」に対してどのような意識を持っているかが気になってきますが、今回の調査では下のグラフのような結果が得られています。

「SNSやブログなどのオンラインサービスでの個人情報公開について」(2010年11月 MMD研究所調べ)

まだまだ「実名」への抵抗は大きい

本名、写真、勤務先の公開など、ほぼ9割近いユーザーが「抵抗を感じる」と回答したことが判明したこの結果を見る限り、現在の国内市場においてはまだまだ個人情報の公開に対する抵抗は大きいようです。

FacebookやTwitterでは、勤務先や職種などの仕事上の立場と実名を公開している人をよく見かけます。ゆえに利用者自身がビジネス用途で利用している場合(筆者もそうですが)は、自然と周囲に同じような利用者とのネットワークが形成されるため、ついつい実名利用者が多くなるような印象を受けがちです。 しかしこの調査結果を見る限りでは、まだ「匿名性」が担保されたmixiのようなサービスに分があると言わざるを得ないのかもしれません(かくいう筆者自身、Facebookとmixiの両方を利用していますが、前者は本名で、後者はハンドルネームで利用しています)。

アメリカでは、Facebookの普及とともにオンラインサービスでの実名公開の文化が浸透しつつあるというウワサも耳にします。日本のユーザーにも同様に実名公開が文化として広がっていくのかどうか、今後も継続して調査したいと思います。

今回引用した調査データは当研究所のWebサイトで公開しています。

インターネット上での個人情報公開に関する意識調査 - MMD研究所
ソーシャルメディア及びSNSなどのオンラインサービスの認知度及び利用実態調査 - MMD研究所

<本稿執筆担当: 田川悟郎>

著者紹介

MMD研究所

MMD研究所(モバイル・マーケティング・データ研究所)は、モバイルユーザーマーケットのリアルな動向を調査・分析し、社会へ提供することを目的として2006年9月に設立されたマーケティングリサーチ機関(運営は株式会社アップデイト)。本コラムでは、同研究所による調査データをもとに、ヒットにつながる効果的なマーケティング手法について考察していきます。