スマートフォンの紛失経験から学ぶユーザーに必要な自覚と責任

あなたは携帯電話を紛失したことがありますか?

先日、友人と海外旅行に行った際に、友人がiPhone 4を盗まれました。すぐに現地の警察に行き被害届を提出し、その後、ホテルに戻り友人が登録していたMobileMeにアクセスしてGPSを使い遠隔操作で現在の位置情報を探し出しました。

残念なことにすでに電源が切られていたため、位置情報を突き止めることができませんでした。海外でこのような被害に遭うとは思っていなかったので、今回の体験を交えてコラムを執筆しました。

今回は、当研究所が2012年6月15日~2012年6月16日に実施した「スマートフォンのパスワードロック設定および、紛失・故障サービスの利用実態調査」の結果から、スマートフォンの情報の重要性について考察したいと思います。同調査はインターネットWEBによるオンライン調査で行い、スマートフォン所有の857人の有効回答をもとにした分析となっています。

まず、最初に携帯電話の紛失経験について調査したところ、12.3%の回答者が携帯電話を紛失した経験があり、そのうちの35.2%が戻ってこなかったという結果となりました。また、紛失・故障した際に保証してくれるサービスへの登録率は55.3%、そのうちの33.3%が保証サービスを使って修理や買い替えをした経験があることがわかりました。

「携帯電話の紛失経験」と「保証サービスの登録率」をクロス集計した結果では、紛失経験はないと回答した人の52.9%が保証サービスに登録しているのに対して、紛失経験のある人では72.4%が保証サービスに登録し、紛失経験の有無で約2割の差がつく結果となっています。

スマートフォンユーザーの半数が保証サービスを利用する背景には、数年前から携帯端末の販売形態が変わり端末自体の価格が高騰したことから、以前と比較して通信料金は安くなったがひとつの端末を使う期間がより長くなったことで、利用者の紛失や故障した場合のリスクヘッジとしてこのようなサービスへの登録に繋がっていると推測できます。

パスワード設定をしているスマートフォンユーザーは約半数

次に、現在所有しているスマートフォンのパスワード設定について質問したところ、「設定していない」と回答したユーザーは40.8%、「設定している」と回答したユーザーは54.3%になりました。設定していると回答したユーザーにおいても、57.2%が「パスワードを変更していない」という結果となっています。

この結果を見て、設定している人が多いと思いましたか? それとも少ないと感じましたか? 筆者は少ないと感じました。

フィーチャーフォンは、電話機能とメール機能とブラウザ機能があれば事足りていました。フィーチャーフォンを利用していた時、ロック設定をしていた人はどれだけいたでしょうか? ロックをしていた理由として挙げられるのは、恋人や家族、友達に通話記録やメールを見されたくないといった理由だった人は多いのではないでしょうか。

スマートフォンは小さなパソコンと言われている通り、プライベートでの利用のみならず、ビジネスシーンでの利用も多くなりつつあります。またクラウド化が進み、仕事関係のメールをスマートフォンで受信できるように設定している人も多いと思われます。フィーチャーフォンを使っていた時の通話、メール機能だけの感覚ではなく、情報の機密性や重要度を十分に考慮した上でスマートフォンを使うことが大切だと筆者は感じています。

冒頭の盗難に遭ってしまった友人は、iPhoneで写真撮影をしていたため、パスワードの入力が面倒だという理由で旅行時はロック設定を解除していました。友人は登録しているすべての人に迷惑がかかること、直近で連絡を取った人の情報が盗まれてしまうことを心配していました。

スマートフォンを触るたびにパスワードを入力しなければならいという手間はかかりますが、そのひと手間で大事な情報が流出せずに済むことも大いに考えられます。

米シマンテック社が「The Symantec Smartphone Honey Stick Project」というプロジェクトを立ち上げ、ダミーの企業データや個人データを入れた50台のスマートフォンを、人通りの多い公共の場所に故意に「紛失」させ、それらのスマートフォンを見つけた人がどのような行動をとるかを調べたところ、発見した人の6割がソーシャルメディア情報や電子メールを見ようとし、8割が企業情報にアクセスしようとしたという結果が出ました。また、見つけた人のうち持ち主に返そうとした人は半数でした。

アメリカでの調査結果となるので、全てが日本に当てはまるとは思いませんが、他人のスマートフォンにどのような情報が詰まっているのかという好奇心が、このような結果になったのではないかと思います。

スマートフォンユーザーの認識や理解・リテラシーは追い付いているのか

ウィルス対策について調査したところ、「対策をしている」と回答したユーザーが43.3%と最も多く、35.4%が対策していないことがわかりました。これをOS別に見てみると、Androidユーザーの62.7%がセキュリティ対策をしているのに対して、iOSユーザーは12.0%と、セキュリティ対策への意識が異なる結果がでました。

Androidユーザーにウィルス対策をしている人が多いのは、各自のウィルスに対する意識が高いということではなく、キャリア各社が提供しているアプリがあるということと、端末によって異なる場合もありますが、プリインストールされているから対策をしているというのもひとつの要因であると考えられます。

普及、変化し続けているスマートフォンは、今後も利用シーンから派生する情報の重要性にユーザーの認識や理解・リテラシーが追い付いていないということを、提供側は改めて認識する必要があるでしょう。

キャリアや携帯電話の販売店は、販売するだけではなく、まず先にスマートフォン購入者にセキュリティの重要性とリスクについて教えるべきだと思います。

調査テーマに関するご要望については、Facebookの当研究所ファンページやtwitterで受け付けていますので、お気軽に声をかけてください。また、調査結果やコラムについて、「参考になった!」「面白かった!」と感じましたら、お気軽に「いいね!」やリツイートをしてもらえると幸いです。

今回引用した調査データは当研究所のWebサイト (スマートフォンのパスワードロック設定および、紛失・故障サービスの利用実態調査)で一部公開しています。

<本稿執筆担当 : 妹尾 亜紀子>

著者紹介

MMD研究所

MMD研究所(モバイル・マーケティング・データ研究所)は、モバイルユーザーマーケットのリアルな動向を調査・分析し、社会へ提供することを目的として2006年9月に設立されたマーケティングリサーチ機関(運営は株式会社アップデイト)。本コラムでは、同研究所による調査データをもとに、ヒットにつながる効果的なマーケティング手法について考察していきます。