キーワードは"大型化"と"高機能"、夏の新携帯端末トレンド

MMD研究所では、5月にdocomo、au、SoftBank3社から夏発売の新端末が発表されたことを受けて、「2012年夏発売の携帯電話・スマートフォン新端末購入意欲調査」を実施しました。この調査結果から、最近のスマートフォン端末のトレンドを考察していきます。

各キャリアの新端末発表会で感じたこと

まず、各キャリアの端末ラインナップについて感じたことを記載します。docomoは、キッズケータイやルーター、タブレットを除く16機種全てがスマートフォンとなっています。「らくらくスマートフォン」など、過去のフィーチャーフォンシリーズもスマートフォン化されています。また、ARROWSやAQUOSといった国産ブランドのタイプ別端末が多く発表され、コラボモデルの登場など印象に残る端末が多いと感じました。

発表された全ての端末がスマートフォンだったdocomoに対して、auはスマートフォン5機種とフィーチャーフォン3機種、SoftBankはWILLCOMを含めてスマートフォン5機種、フィーチャーフォン5機種とバランスよく発表された反面、スマートフォン端末に関してはdocomoとは対象的な印象を受けました。

2011年の夏頃から発表されているスマートフォンとフィーチャーフォンの端末数を比較すると、今後は今回のdocomoの発表と同様に、他キャリアにおいてもスマートフォン端末のみの発表となることも予測されます。スマートフォンへの機種変更希望の有無にかかわらず、選択肢としてスマートフォンしかないという状況になりつつあります。このような状況の中で、既存のスマートフォンユーザーや、スマートフォンを持っていないユーザーはどのような点をスマートフォンに求めているのでしょうか。

スマートフォンに求めるものは、画面に関することが重視されている

今回の調査で、「スマートフォンに求めるもの」をデザインや防水性など10項目についてそれぞれ「重視する」から「重視しない」の5段階評価で回答を得ました。結果としては、過去の調査でも毎回上がっていますが、やはりトップは「バッテリーの持ち」の87.2%でした。

続いて、重視する比率が多かった項目は「画面の大きさ・見やすさ」が86.7%、「タッチパネルの反応の良さ」が84.5%、「液晶の画質」が81.9%、通信速度の速さ(次世代通信機能の有無)が80.5%となっており、画面について重視する傾向が強く表れる結果となりました。

フィーチャーフォンと比べると端末のデザインよりも、画面それ自体がデザインの大きな部分をしめているスマートフォンは、画面について重視されるのも納得がいきます。

特に画面のサイズについては、スマートフォンが出始めた2010年ごろに主流だった4インチというサイズが、2011年夏モデルでは4.3~4.5インチというやや大きめのサイズが主流となり、今回の夏モデルでは4.3~5インチが中心と画面の大型化が進んでいます。

フィーチャーフォンや初期のスマートフォンを使っていたユーザーからすると、このサイズは大きいと感じるかもしれません。私も2010年から4インチのスマートフォンを使い始め、最近になって画面の大きさが4.7インチのスマートフォンに機種変更しました。最初こそ、その大きさに使いづらさを感じていましたが、一度に表示される情報量が多いことで非常に見やすく、操作がしやすいため、4インチのスマートフォンを使用していた時よりも、端末に触れる時間が増えました。

実際に今回の調査結果の通り、画面の大型化は重要視されており、既にユーザーに受け入れられていることがわかります。また、ユーザーにとって重要視されているバッテリーの持ちも、画面大型化にともない電池の容量が大きくなっているため、改善傾向にあります。この点も従来サイズよりも大きなスマートフォンが求められる理由となっていると考えています。

この夏の人気の機種トップ3はコレ! 人気ブランドがランキング上位に

では、次に実際にユーザーが気になる今夏発売の端末を聞いてみました。その結果、トップ3は「GALAXY SIII」が15.0%でトップ、次いで「Xperia GX」が11.1%、「AQUOS PHONE sv」が8.6%となりました。

今回トップ3にランクインした上記端末は、そのブランド性もさることながら、ユーザーがスマートフォンに求める「画面の大きさ」や「タッチパネルの反応のよさ」「次世代通信の搭載」というニーズを全て満たしているということが大きな理由と考えています。

圧倒的な人気を誇るiPhoneですが、今回の調査でトップとなった「GALAXY」シリーズを筆頭に、スペック面でiPhoneを超えるAndroid端末も増えてきています。日本市場では、今までの「スマートフォン=iPhone」といったような、イメージ先行の選択が多く見られましたが、今後はより自分に合った端末を選択するユーザーが増えると思っています。

端末の満足度よりも、キャリアの満足度が重要視される時代に

ユーザーのニーズを満たす端末がこれまで以上に今後発売されていくことで、ユーザーの選択肢として端末はもとより、キャリアのサービスや環境が重要視されていくと考えています。実際に、その状況を各キャリアとも示唆しており、今回の発表においても、自社の弱点と言われている「端末価格の改善」や「電波状況の改善」など、スマートフォンを持ちやすい環境を提供するとしていました。さらに、キャリア独自のサービス展開の強化を発表するなど、これまでの端末を軸とした発表からサービス軸への発表に切り替わってきています。

今後、スマートフォンへ機種変更するユーザーの選択は、各社が発表しているサービスの質やスピードに対しての判断が大きくなるのではないでしょうか。

当研究所では、各キャリアが展開するスマートフォン端末に関する動向や新端末について定期的に調査を行っていきます。

調査テーマに関するご要望については、Facebookの当研究所ファンページやtwitterで受け付けていますので、お気軽に声をかけてください。また、調査結果やコラムについて、「参考になった!」「面白かった!」と感じましたら、お気軽に「いいね!」やリツイートをしてもらえると幸いです。

今回引用した調査データは当研究所のWebサイトで一部公開しています。

<本稿執筆担当 : 早野 竜馬>

著者紹介

MMD研究所

MMD研究所(モバイル・マーケティング・データ研究所)は、モバイルユーザーマーケットのリアルな動向を調査・分析し、社会へ提供することを目的として2006年9月に設立されたマーケティングリサーチ機関(運営は株式会社アップデイト)。本コラムでは、同研究所による調査データをもとに、ヒットにつながる効果的なマーケティング手法について考察していきます。