スマホ普及はいつ?
スマートフォンのキャリア別満足度調査からみる普及のスピード
10月に携帯電話キャリア各社から秋冬モデルがリリースされました。とりわけiPhone4sはこの秋からソフトバンクだけではなく、auからも発売され今回の秋冬モデルの話題になりました。
昨年の秋冬モデルは、おサイフケータイや赤外線通信、ワンセグなどフィーチャーフォンの機能が搭載されたスマートフォンのラインナップが中心でしたが、今年の新機種はdocomoの「Xi」やauの「+WiMAX」など、独自規格通信による通信速度をウリにした機種が目立ちます。
今回の秋冬モデルの発表を機に、フィーチャーフォンからスマートフォンへ機種変更するユーザーも多いのではないでしょうか。
秋冬モデルの発表にあたって、当研究所が2011年10月6日~10月12日に実施した、スマートフォン購入検討者を対象とした「スマートフォンのキャリア別満足度調査」において、今年2月に実施したデータと比較すると大きな変化が見られましたので、今回はこの結果について考察をしたいと思います。
なお、同調査はモバイル・インターネットWEB上で行われ、2,060人の有効回答をもとにした分析です。
スマートフォンを購入する予定がないという回答が3割減に
2月のアンケートでは「スマートフォンを購入する予定はない」という回答が42.3%でしたが、10月の調査では9.2%と30%以上の大幅減となっています。
スマートフォンの購入予定アンケート 2月と10月の比較 |
ここまで意識が変わった理由としては、マスメディアを使った大規模なプロモーションやスマートフォンへの機種変更割引など各キャリアの影響が大きいのではないかと考えています。
この期間のプロモーションについての個人的な感想ですが、auが一番スマートフォンをプッシュしていたイメージがあります。人気アイドルを起用し、女性に興味をひかせることができたのではないでしょうか。
また、ギネスに申請した60種類ものTVコマーシャルも、フィーチャーフォンにはできないスマートフォンの機能を面白おかしく紹介しており、フィーチャーフォンユーザーに興味を抱かせたのだと思います。
他キャリアでは、SoftBankはiPadのプッシュがメインで、iPhoneの露出は少なかったように思います。また、docomoは、大物アーティストや俳優を起用し、情緒あふれるTVコマーシャルで個人的には好感を持ちましたが、結局スマートフォンで何ができるの? という点にはあまりフォーカスされていないように感じました。
また、2010年の秋冬モデルから従来のフィーチャーフォン機能を搭載したスマートフォンが出ており、購入を視野に入れているあるいはすでにスマートフォンに機種変更したユーザーが増えた結果ではないかと思います。
興味をもったもののフィーチャーフォンへ戻ったユーザーが多い?
「スマートフォンにしない理由」についてのアンケートについても、2月の調査と比べて大きな変化がありました。
スマートフォンにしない理由の1位「今の携帯電話に満足しているから」には変動ありませんでした。ここでは、10月調査で55%と、2月調査の29.8%から大きく数字を伸ばした2位の「タッチパネルが好きではないから」と3位の「携帯の公式サイトに対応していないから」という回答に注目していきます。
なお、2月調査で2位となっている「興味がないから」は、今回の調査で興味がない部分をより細分化して回答を得ています。
スマートフォンを購入しない理由 2月と10月の比較 |
まず、10月調査でスマートフォンにしない理由の2位となっている「タッチパネルが好きではないから」と答えたユーザーについては、私見になりますが、2月調査と比べて増加した背景に、ユーザーがスマートフォンに興味を持ったものの、実際に店舗で端末を触った際にタッチパネルに違和感を覚え、機種変更を行わなかったケースが多いのではないかと推測しています。
同じく10月調査の3位「携帯の公式サイトに対応していないから」という回答については、まだフィーチャーフォンと同じような決済形式をとっているサイトが少なく、サイト数自体も少ないためにスマートフォンに興味をもったものの、使いたい公式サイトが対応しておらず、フィーチャーフォンへ戻ってしまったのではないかと考えています。
普及スピードが進むのは2012年春?
このようなフィーチャーフォンユーザーが持つ不満点について、キャリア、端末メーカーは問題の解消に向けて動いています。
タッチパネルでは、シャープが「AQUOS PHONE IS11SH」にフィーチャーフォンと同様のテンキーを搭載するなど、タッチパネルに苦手意識を持っているユーザーの不満解消に動いています。
また、公式サイトの普及では、10月18日の報道発表資料によると、docomoは11月末から「dメニュー」という従来の「iモード」に似たサービスを開始する予定です。これにより、公式サイトの運営側がサービスを提供しやすい環境になり、スマートフォンに対応した従来の公式サイトのサービスが3月頃から拡大していくのではないかと思います。
公式サイトの拡大が3月というのは、dメニューが登場した後、12月と1月はサイト準備期間に、サイトへの集客に費やす期間が2月、そしてユーザーが活発になるのは3月ごろではないかと考えているからです。
もちろん、他キャリアでも同様に、ユーザーや運営側が使いやすいプラットフォームを提供していくのではないでしょうか。
上記を踏まえて、現在もスマートフォンの普及が進んでいますが、公式サイトが本格化するであろう3月頃と、春モデルの端末にフィーチャーフォンユーザーが興味を持ちそうなテンキー搭載モデルが増えることで、普及がさらに加速していくのではないかと筆者は推察しています。
当研究所では、スマートフォンについては定期的に調査を行っていく予定です。
調査テーマに関するご要望については、Facebookの当研究所ファンページで受け付けていますので、お気軽に声をかけてください。
今回引用した調査データは当研究所のWebサイト(10月実施 / 2月実施)で一部公開しています。
<本稿執筆担当 : 早野 竜馬>
著者紹介
MMD研究所
MMD研究所(モバイル・マーケティング・データ研究所)は、モバイルユーザーマーケットのリアルな動向を調査・分析し、社会へ提供することを目的として2006年9月に設立されたマーケティングリサーチ機関(運営は株式会社アップデイト)。本コラムでは、同研究所による調査データをもとに、ヒットにつながる効果的なマーケティング手法について考察していきます。