今回は、"3大モバイルSNS"と言われるGREE、モバゲータウン、mixiのそれぞれが提供しているソーシャルゲームの課金ユーザー比率に関する調査結果を元に、ケータイゲームユーザーのターゲットを絞るためのヒントを提供したいと思います。
有料ソーシャルゲームのコアユーザー層は?
通勤電車の中で年配の男性サラリーマンがケータイでゲームをする姿もすっかり珍しくなくなりました。しかし、依然として「"ケータイゲームユーザー"と言えば10代~20代の若者が中心」というイメージは根強く残っています。果たして実際のところはどうなのでしょうか?
今年の8月30日~9月2日に当研究所が実施した調査では、その答えとして非常に興味深い結果が得られました。
下のグラフは、各SNS単位で年代別に有料ソーシャルゲームの利用率を調査した結果です。
GREE、モバゲータウン、これらは共に10~20代の若年層の課金率がいずれも10%前後と低く、20代後半から30代以降の年齢層から課金率が高まる傾向が見られます。そして、調査分母の絶対数は他の年代にくらべ若干少ないものの、40~50代においても15~20%前後と10代よりも課金率が高いという結果が得られました。
これはあくまで有料ゲームの利用者比率なので、「10代がケータイゲームで遊んでいない」ということではありません。学生が多い10代に比べ、20代~40代の社会人は当然ながら可処分所得が高いので、有料ゲームを利用するための障壁が低いことは容易に想像できます。しかし、そうは言っても年代別でここまで顕著な差が表れるとは筆者も想定外でした。
もちろん、有料ゲームを利用しているのは社会人の男性ばかりではなく、30代、40代の主婦層も含まれています。ちなみに、当研究所でさらに詳しく性差年代別にこの結果を分析してみたところ、男女で大きな差は見られませんでした。
これらの結果の背景にある要因を「10代はお金がないから」で片づけてしまうのは簡単ですが、果たしてそれだけなのでしょうか?
あくまで確証のない筆者の私見ですが、もしかすると10代~20代の層は、「ケータイ以外にニンテンドーDSやPSPなどのポータブルゲームデバイスを併用しているので、ケータイではお金を払ってまでしてゲームをすることはない」のではないかと考えています。筆者のこの仮説については、またの機会に調査してみたいと思います。
ソーシャルネットワークか、ゲームサイトか
30代~40代の層にケータイのソーシャルゲームが浸透している一因としては、テレビCMの影響が大きいのではないかと思います。
上述の各SNS別集計グラフを見ると、「ソーシャルネットワークのプラットフォーム」をコンセプトとするmixiと比べ、「ケータイゲームサイト」としてのプロモーションを続けているモバゲータウン、GREEの方が全年代で課金率が高い傾向にあります。
余談ですが、先日開催された「mixi meetup 2010」の壇上で、ディー・エヌ・エーの守安氏が「モバゲータウンはSNSではなくゲームサイト」という主旨のコメントをしていたのが非常に印象的でした。mixiと比較した場合、その傾向が顕著に現れているように思います。
キャリアではauが狙い目!?
この調査では、課金ユーザーの比率だけでなく、課金ユーザーの平均月額費用についても利用者にアンケートを行っているのですが、いずれもGREEがモバゲータウンを上回るという結果が得られました。
この結果に対し、明確に「コレだ!」という要因はまだ見つかっていませんが、回答結果を携帯キャリア別に集計してみると、興味深い傾向が見られました。
キャリア別では、auユーザーの有料アプリ利用率が最も高い。今回の調査分母におけるキャリア比率は、NTTドコモ: 44% / KDDI(au): 44% / ソフトバンクモバイル: 12% (資料: MMD研究所) |
NTTドコモとKDDI(au)についてはほぼ同数のサンプルをベースに調査しているのですが、課金ユーザー比率で5%近い差が見られます。
年代別の結果を見ずにこの結果だけを見ると、「auは若年層が多いからだろう」と思ってしまいがちですが、やはりキャリア別に見ても、30代~40代が課金のボリュームゾーンとなります。
すでに各SNSとも大量のゲームをリリースしており、「ヒット作を生み出すのは至難のワザ」ということをよく耳にしますが、このあたりのデータを元にすると、もしかすると抜け道が見つかるかもしれませんね。
詳しいデータは当研究所にて公開していますので、ぜひチェックしてみてください。
<参考> 3大モバイルSNSにおけるソーシャルゲームの課金ユーザー比率に関する実態調査 - MMD研究所
その他のソーシャルゲームに関する調査
<本稿執筆担当: 田川悟郎>
著者紹介
MMD研究所
MMD研究所(モバイル・マーケティング・データ研究所)は、モバイルユーザーマーケットのリアルな動向を調査・分析し、社会へ提供することを目的として2006年9月に設立されたマーケティングリサーチ機関(運営は株式会社アップデイト)。本コラムでは、同研究所による調査データをもとに、ヒットにつながる効果的なマーケティング手法について考察していきます。