iPhoneユーザーにはおなじみのソフトバンクモバイルのSMS

SMS (ショートメッセージサービス) は、携帯電話同士で70文字程度の短文を送受信できるサービスのことです。海外ではテキストメッセージとも呼ばれ、世界中の携帯電話ユーザーの約74%がSMSを利用していると言われています。これまで同一キャリア間でしか行えなかったSMS送受信が、2011年7月13日よりキャリアを超えて行えるようになります。今回の調査結果では、SMSの認知度や利用実態にキャリアごと面白い傾向が見られます。今回は、当研究所が2011年6月10日から6月20日にかけて実施した「SMSに関する認知度、及び利用実態調査」の結果について考察したいと思います。

SMSの認知度・利用率はソフトバンクユーザーが最も高い

ソフトバンクモバイルでは2人に1人がSMSを利用

SMSの認知度を調査した「SMSを知っていますか?」という設問に対して、「知っている」と回答した人は全体で67.8%となりました。

この結果をキャリア別に見てみると、NTTドコモが75.2%、KDDI(au)が50.0%、ソフトバンクモバイルが82.4%となり、SMSに対するソフトバンクモバイルユーザーの認知度が最も高い結果となっております。

加えて、「SMSを利用したことがありますか?」という設問に対しては、「よく利用している」と回答した人が全体で27.5%、キャリア別ではNTTドコモが12.7%、KDDI(au)が26.9%、ソフトバンクモバイルが53.6%となり、ソフトバンクモバイルと他2キャリアとの差が2~3倍ほど開いています。

これはソフトバンクモバイルがiPhoneの導入を決めた際に、SMSの機能を拡張し絵文字や写真などの送付を可能にしたことや、ホワイトプランによってソフトバンクモバイル同士の通話やメールが無料になっていることが大きく作用していると筆者は考えています。

ソフトバンクモバイルでは、SMSをキャリアメールに近い条件で利用できることが、他キャリアと比較した際の認知度や利用率の差を生んでいるのではないでしょうか。

SMSの認知度 (MMD研究所調べ)

SMSの利用経験 (MMD研究所調べ)

SMSオープン化に対しては大多数が「賛成」

反対意見の多くは迷惑メール関連、今後の普及は迷惑メール対策が鍵

また、SMSオープン化に関して「7月13日から契約しているキャリア以外にもSMSが利用できるようになりますが、あなたはどのように思いますか?」という設問に対して、「賛成」と回答した人は全体で89.3%という結果となりました。逆に「反対」と回答した人は約1割となっておりますが、フリー回答に見られる主な理由としては「迷惑メールが増えそうだから」という内容が非常に多くなっています。

これは、携帯番号さえわかればメッセージを送信できてしまうSMSの特性上、必須の課題だと筆者は感じています。例えば、まったく知らない番号に突然SMSを送信することも、現時点では可能だからです。

私見ですが、オープン化後のさらなる普及については、迷惑メール対策の一層の強化が必要だと思います。

なお現時点では、NTTドコモはSMSについて「200通/日」の送信数制限を設けています。KDDI(au)では、オープン化に際して、これまで「6,000通/月」だった送信数制限を「200通/日もしくは6,000通/月」に変更しています。ソフトバンクモバイルはSMS利用率が高いこともあり「200通/日以上送信した場合に、その後20日の利用規制」をかけています。

SMSオープン化に対する意見 (MMD研究所調べ)

SMSオープン化のMNPへの影響とSIMロックフリー端末の普及

今回の調査で得られた上記の内容から、SMSオープン化がもたらす影響を推察すると、以下の4点が浮かび上がってきます。

  • MNPでのキャリア変更の際に、SMSだけで連絡が取れる
  • メールアドレス変更が障壁にならず、MNPの利用促進につながる
  • MNPの利用がさらに活性化することにより、各キャリアのサービス内容の充実が図られる
  • SIMロックフリー端末の販売が一般化する

筆者自身、MNPの利用に対する障壁はメールアドレスの変更や使用できる端末の違いだと感じておりますが、これらの課題はSMSのオープン化とSIMロックフリー端末の一般化によって劇的に変化する可能性があります。

ですが、その実現にはソフトバンクモバイルのようにSMSの機能をキャリアメールに近づけるような施策を各キャリアが実施することが必要で、デコメールに代表される日本独自の携帯文化との融合が求められるのではないでしょうか。

SMSが進化すると、結果としてキャリアによるユーザーの囲い込みが難しくなるため、キャリア依存系のサービスは淘汰される可能性があります。また、メーカーはキャリアを意識せず、シンプルに端末の開発に注力することができるようになるため、ユーザーにとって真に良いサービス・端末を自由に選べる時代がやって来ると筆者は推察しています。

調査テーマに関するご要望については、Facebookの当研究所ファンページで受け付けていますので、お気軽に声をかけてください。

今回引用した調査データは、下記の当研究所のWebサイトで一部公開しています。

<本稿執筆担当: 湯本尚伯>

著者紹介

MMD研究所

MMD研究所(モバイル・マーケティング・データ研究所)は、モバイルユーザーマーケットのリアルな動向を調査・分析し、社会へ提供することを目的として2006年9月に設立されたマーケティングリサーチ機関(運営は株式会社アップデイト)。本コラムでは、同研究所による調査データをもとに、ヒットにつながる効果的なマーケティング手法について考察していきます。