艦艇における電測兵装の設置場所決定に際して、「高所の奪い合い」を筆頭とする争奪戦が勃発するのは毎度の恒例。その中でも、とりわけ条件が厳しい艦がある。それが空母である。なぜか。→連載「軍事とIT」のこれまでの回はこちらを参照

飛行甲板を広くとることが至上命令

空母の本来業務は搭載機の発着艦、つまり「浮かぶ飛行場」の機能が最優先される。だから、いわゆる “flat top” の形態が考え出された。とはいえ、見張や操艦指揮、そして電測兵装設置などの必要性から、上部構造物をまったくなくしてしまうのも現実的ではない。第二次世界大戦の頃までは、そういう形態の空母もあったが。

結局、右舷側に必要最小限のサイズの構造物、いわゆるアイランド(日本語では「島型艦橋」と訳される)を設置するのが通例となった。原子力機関なら排煙は出ないから煙突は不要となり、結果としてアイランドは必要最低限のサイズにできる。原子力空母のメリットのひとつ。

  • 米空母「ロナルド・レーガン」の飛行甲板。右端に必要最小限の規模のアイランドを設けて、飛行甲板を広くとっている 撮影:井上孝司

米空母のニミッツ級にしろジェラルド R.フォード級にしろ、あるいはフランスのシャルル・ドゴールにしろ、みんなアイランドは小さい。それは航空機運用の観点からすると良いことだが、電測兵装を設置する立場からすると辛い。物理的にスペースが乏しいのだから。

おまけに、対空捜索レーダー、対水上レーダー、通信関連のアンテナ群に加えて、航空管制レーダーや着艦進入誘導レーダーなど、空母ならではの電測兵装が追加で加わることもある。着艦進入誘導レーダーは後方向きに設置しなければならないし、航空管制レーダーは全周をカバーできないと困る。

ニミッツ級とフォード級のアイランド構造物

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