艦艇は商船以上に復元性、つまり傾斜したときに元の状態に戻す能力に関する要求が厳しい。そして、重心が高くなると復元性が悪化するので、上の方に置くものはできるだけ軽くしたい。そのためには、どうするべきか?→連載「軍事とIT」のこれまでの回はこちらを参照。
構造材を複合材料製にして軽くしたら?
大形で重い電測兵装を高いところに設置するのは難しくなる、という話は以前にも書いた。しかし電測兵装だけでなく、それを取り付けるマストや上部構造物もまた、軽く造れるのであれば、それに越したことはない。
だから、米海軍のズムウォルト級駆逐艦ではIDHA(Integrated Composite Deckhouse & Apertures)と呼ばれる複合材料製の構造物を載せた。複合材料製でも重量は900tあるそうだ。ただしコスト高についたのか、3番艦だけは鋼製に改められている。その関係で重量が増えたのではないかと思われるが、具体的な数字は明らかになっていない。
同じように、複合材料製の上部構造を載せて、そこにフェーズド・アレイ・レーダーを搭載する艦の建造計画が進んでいる。フィンランド海軍が「Squadron 2000」計画の下で建造を進めている、ポフヤンマー級がそれである。
艦の建造はフィンランドのラウマ造船所で実施するが、レーダーを取り付ける複合材料製の上部構造はサーブが担当する。そもそも同級が搭載する戦闘システムは、対空用の多機能レーダーがシージラフ4A、指揮管制装置がサーブ9LV、砲射撃指揮システムがセロス200といった具合にサーブ製品がいろいろある(ただしソナーはノルウェーのコングスベルクが手掛ける)。
そのことと、サーブが複合材料製の構造材についてノウハウを持っていることが、背景にあったと思われる。