以前に第468回で取り上げたように、米軍が推進しているJADC2(Joint All Domain Command and Control)戦闘コンセプトにおけるイネーブラの一つとして「クラウド関連技術」が挙げられている。今回はこのクラウドとエッジを取り上げてみよう。→連載「軍事とIT」のこれまでの回はこちらを参照。
エッジ処理の必要性
艦艇や航空機といった個々のプラットフォームが自己完結、スタンドアロンで動くのであれば、所要の機材やシステムは、すべて自前で抱え込む必要がある。しかし、ネットワークにつながっていることが前提で、その上で「すべての戦闘空間にまたがる一元的な情報の共有・一元的に指揮統制」を実現するとなると、話は変わる。
まず、共有すべき情報をネットワークの向こう側に置かなければ始まらない。そこで、イネーブラとしてクラウド関連技術が関わってくる図式となる。
ところが、ネットワークにつながっていることが前提となると、ネットワークの接続性(connectivity)ならびに伝送能力が問題になる。
接続性の話は後で触れるとして、まず伝送能力の話から。ネットワークにつながった各種センサーが、生データをそのままネットワークに流したら、伝送能力がいくらあっても足りない。しかも、その生データのすべてが有意なものとは限らない。中には不要な「ゴミ」も含まれるであろう。すると、なにがしかの「前処理」が必要になる。
だから、市中で使われているクラウドサービスでは、「エッジ処理」という話が出てきているのは御存じの通り。すべての処理をクラウド・サービス側にぶん投げるのではなく、出先(エッジ側)で処理できるものは出先で処理して、分担しましょうというわけだ。