先日、ある方と話をしていたら「衛星で監視するといっても、衛星が破壊されるかもしれないし、衛星からデータを送るための通信が妨害されるかも知れないから役に立たない」との主張を開陳される事態になった。「はて、そういうものなのか?」と疑問に思った次第。→連載「軍事とIT」のこれまでの回はこちらを参照。
数を増やすアプローチ
物書きの身辺で発生した出来事は、何でも原稿のネタにになり得るという経験則がある。そこで今回は、この話を「つかみ」として、衛星群(constellation)の抗堪性について考えてみようと思う。
ちなみに最近、「コンステレーション」というと特定の衛星を指すものだと勘違いしているような話が見受けられるが、本来は「衛星群」を意味する一般名詞である。
さて。その衛星群の抗堪性という観点からすると、極端な言い方をすれば「数は勝利」というアプローチが考えられる。それを具現化しているのが、御存じスターリンク。何千基もの小型衛星が軌道上に上がっていれば、それを1つずつ狙い撃ちしてつぶすのは、まったく現実的ではない。一部の衛星がつぶされたとしても、残った衛星で機能を維持できる。
どこかで聞いたような話だと思ったら、アクティブ・フェーズド・アレイ・レーダーと同じである。あれも、一部の送受信モジュールが壊れたり機能不全を起こしたりしても、残ったモジュールで動作を継続できる。多少の性能低下は発生するだろうが、いきなりゼロにはならない。
ただ、スターリンク並みに大量の衛星を打ち上げるのは、そうそう誰にでも真似できる仕事とはいえない。同じように小型衛星を多数打ち上げて通信サービスを提供するワンウェブの場合、計画している衛星の総数は648基で、桁がひとつ違う。
さらに桁がひとつ減ると、衛星携帯電話でおなじみのイリジウムは当初、77基の衛星を使う計画だった(それが名称の由来になのは御存じの通り)。また、グローバルスターは52基、うち実働48基である。スターリンクの突出ぶりが分かる。