現時点で主流となるには至っていないが、軍用衛星の分野にも「小型衛星の多数配備」を追求する動きが出ている。高性能だが大形で高価な衛星ではなく、いわば「安い、早い、うまい」を目指す考え方だ(牛丼屋か?)。→連載「軍事とIT」のこれまでの回はこちらを参照

大型・高性能・高機能の衛星の課題とは

人工衛星といっても「ピンキリ」だが、軍事用途の衛星についていえば、大形・高機能・高性能を求める傾向が強い。しかし、当然の話として、大形・高機能・高性能の衛星は高価になる。ところが、それだけの話では済まない。

大形で重い衛星を軌道に投入しようとすれば、打ち上げロケット(SLV : Space Launch Vehicle)は大型の衛星を収容できるだけのサイズを備えたペイロード区画と、重い衛星に十分な速度をつけるための大きな推力を持たなければならない。

すると、衛星だけでなく、それを打ち上げる際に使用するSLVもまた、大型で高価なモノになってしまう。そして、大型で高価で高性能のロケットは開発にも費用がかかるし、射点の設備も大がかりになる。

  • 2013年8月28日にヴァンデンヴァーグ基地で行われた、「デルタIVヘビー」ロケットによる偵察衛星の打ち上げ 写真:USAF

結果として、大型・高性能・高機能の衛星を打ち上げようとすると、衛星だけでなくその周辺も含めてコストが上がる。グロース・ファクターの典型例といえよう。しかも、衛星やロケットの製作には時間がかかるから、急に需要が発生しても対応しがたい。

なぜ小型化という発想が出てきたか

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