これは軍民を問わない話だが、通信は「通じてナンボ」である。いくらスペックが立派な通信機材でも、必要なときに必要な相手とやりとりができなければ、存在価値はゼロといってよい。
ソ連崩壊後、通信の相手が変わったら……
それが問題になった一例が、ソビエト連邦の崩壊と、その後に生じた東欧諸国のNATO加盟。ワルシャワ条約機構の傘下にあったときには、当然ながら通信機器は「ソ連軍規格」のものになる。ところがNATOに加盟すれば、今度はNATO諸国との相互接続性・相互運用性が求められる。
通信の場合、周波数や変調方式といった、軍民に関係なく関わる項目だけでなく、暗号化というファクターも関わってくる分だけ話がややこしい。通信の秘匿性を維持するためには暗号化は不可欠の機能だが、もちろん、そちらも同盟国との間で相互運用性を確保しなければならない。
だから東欧諸国ではNATO加盟後に、通信機器や暗号化機器の入れ替えが発生した。理想をいえば、車両や艦艇や航空機といったプラットフォームごと取り替えたいところだが、さすがに、それを即座に実現するのは経済的に難しい。そこで、旧ソ連製のプラットフォームに対して、NATOの標準化規格に適合する通信機を載せる仕儀となった。