本連載では日本ヒューレット・パッカード(HPE)のさまざまな社員の「こぼれ話」を綴ります。今回は半導体にまつわる話を紹介します。→過去の回はこちらを参照。
電子カルテとPACS
病院とは縁のない生活をしていたのですが、昨年から病院にお世話になるようになって驚きました。私の病院のイメージは、受付に診察券を出して名前を呼ばれるまで待って、指示に従って診療を受けるというものだったのですが、まったく違っていました。
病院に入ると自動受付機があって、診察券を入れると診療スケジュールが出てきます。書かれている指示に従って検査する場所に行って診察券を渡すと、検査する人は事前に医師から指定された検査内容を確認して検査を実施します。
検査が終わったら医師の診察を受けるのですが、直前に受けた検査での画像やデータがすでに目の前のモニターに表示されていて説明を受けます。最後の会計も自動精算機で行われます。
驚いたので家族に話をしたら、「大きい病院ではそんなの当たり前。IT屋さんなのに知らなかったの?」と笑われてしまいました。調べてみると、400床以上の病院での電子カルテの導入率は、すでに90%を超えているということです。
この裏側ではサーバーが動いています。医師が検査結果の画像を動かしながら見せてくれる時、操作しているパソコンがサーバーに繋がっていてサーバーが裏側で頑張って働いているのです。
受付の時や、会計の時も同じです。小さな診療所ではパソコンですべて動かしている場合が多いですが、大きな病院では何台ものサーバーが連携して動いています。その中で中心になるのが、電子カルテと呼ばれる診療の履歴を記録していくシステムと、PACS(パックス、Picture Archiving and Communication System)と呼ばれるX線やCT、MRIで撮影した医療画像を管理するシステムです。
電子カルテやPACSはソフトウェアとハードウェアがセットになったパッケージとして販売される場合が多いので、私たちのようなサーバーを販売する会社も電子カルテやPACSを提供する会社と一緒に活動しています。
診療所だったら設置場所が狭いので小型のサーバーを使ったり、PACS向けには大量の画像データを安全に保存できる仕組みを提供したりして陰ながら貢献しています。
医療画像を人間ではなくAIが分析するシステムも出てくるなど、医療システムでのIT活用は今後も進歩していきます。HPEでは、こういった特定の業務向けのシステムを「産業別ソリューション」と呼んでいて、重要な事業領域として位置付けています。ブログ記事でも紹介していますので、興味のある方はご覧ください。
電子化される病院、課題も
その一方で、今後の課題となっていることも体験しました。地元の診療所から病院を紹介してもらった時や、病院での治療がひと段落して地元の診療所での診療に戻る時には“紹介状”として診療の履歴の情報を“紙で”持っていくのです。
病院内ではすべて電子データになっていたものを、わざわざプリントアウトして人が運んでいくのです。「地域医療連携」として診療所と病院の役割分担と連携が行われていますが、お互いのシステムはつながっていないので、情報は紙で渡すしかないのですね。
地域で連携した電子カルテシステムを構築する動きが出てきていますので、何年かしたら紙での情報連携はなくなっていくと思います。
もう1つの課題がセキュリティです。病院のシステムがランサムウェアに感染してデータにアクセスできなくなり、復旧までに長期間かかったという例がいくつか報道されています。皆さんも新聞やWebなどで目にされているのではないでしょうか。
病院での診療ができなくなることは文字通り生死にかかわることですし、医療情報は究極の個人データですので、万が一外部に漏れてしまったりしたら一大事になります。セキュリティは医療以外でも重要な課題ですので、またの機会に詳しく書きたいと思います。
今回は病院で使われているサーバーについて書かせていただきました。この[連載のタイトルは「マシンルームとブランケット」]ですが、実はマシンルームにないサーバーは他にもたくさんあるのです。今後も、「こんなところにサーバーが?」という話題を提供していきたいと思います。
日本ヒューレット・パッカードの社員によるブログをぜひ一度ご覧ください。製品やソリューションの紹介だけではなく、自身の働き方や日々のボヤきなど、オモシロ記事が満載です。