2022年11月のChatGPT登場から始まった生成AIムーブメント。最近になってようやくトレンドが一周した感がありましたが、2024年にまた新たに大きな話題がやってきました。AIの話題に関して唯一沈黙を保っていたビッグテック、Appleの参入です。
Apple参入により、生成AIを取り巻く状況はどう変わるのか。今回は、進化し続ける生成AIの現状と課題、そして今後について見ていきたいと思います。
激化する生成AIの開発競争
まずは簡単に生成AIについておさらいしておきましょう。
生成AIとはAIの一種であり、文章や画像、動画、音楽といったさまざまなコンテンツを「生成」できるAIです。ChatGPTの登場が衝撃的だったため最近誕生したAIだと思われがちですが、実際にはもっと以前から存在していました。ただ、現在の生成AIほどの精度が出せなかったため、一般ユーザーからは注目されていなかったのです。
そんな生成AIがブレイクするきっかけとなったのはやはりChatGPTです。米OpenAIが2022年11月に発表し、その高い応答精度とチャット形式を採用したキャッチーなインタフェースによって世界中で大ブームを巻き起こしました。当初のChatGPTはテキストで指示を与えてテキストを生成させることしかできませんでしたが、現在ではOpenAIが開発した画像生成AI「DALL·E 3」との統合によって画像を生成したり、ExcelやPDFのファイルを読み取らせてさまざまなコンテンツを生成したり、ユーザーがGPTをカスタマイズできるGPTs機能が実装されたりと、できることが拡大しています。
進化しているのはChatGPTだけではありません。Googleからは「Gemini」、Facebookを運営するMetaからは「Meta AI」、Anthropicからは「Claude 3」といった生成AIが続々登場し、しのぎを削っています。これらがわずか1年半の間に起きた出来事なのですから、いかに生成AIの開発競争が激化しているかがうかがい知れます。
一歩先を行く米国
こうした生成AIの開発競争の中心となっているのは米国です。前述した生成AIはいずれも米国製であり、現時点では他国にライバルと呼べる生成AIは存在しません。むろん、米国以外の国々が生成AIの研究や開発を行っていないわけではありませんが、どうしても米国のスピードや規模感には追いつけていないのです。
その理由は、生成AIの性能を決める大きな要因が「物量」だからです。生成AIは「大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)」と呼ばれるAIモデルを搭載しており、このLLMの性能を決める要素の1つがデータセンターやGPUといった計算資源です。計算資源を増やすにはコストがかかるため、米国の大規模なIT企業が有利になるというわけです。
ちなみに計算資源によって増やせる生成AIの性能は、AIモデルの「パラメータ数」で表せます。2020年に開発されたGPT-3.5のパラメータ数は推定ですが355B(ビリオン)といわれており、これは2019年の生成AIの3500倍のボリュームです。そこから2年たった現在はおそらくもっと加速度的にパラメータ数が増えていることでしょう。生成AIの開発競争は留まることを知らず、今後も拡大し続けていくと思われます。
進まない生成AI活用の現状とApple参入の衝撃
一方で、開発競争ほど進んでいないのが肝心の「生成AI活用」です。ChatGPTが登場した当初こそ人々は熱狂し、2023年はまさに生成AI一色といえる状況でした。しかし、どんなに素晴らしい技術も、生活に根ざした使い道が生まれなければいずれ廃れてしまいます。これは、過去に何度も起きては消えていったAIブームが物語っています。
実際のところ、生成AIの活用は初期の予想ほど進んでいるとはいえません。話しかければ答えてくれるし、絵も音楽も作り出せる。でも、それをどう使えばいいのか。さまざまな企業が業務やビジネスでの生成AI活用を模索していますが、今のところ「多少便利なFAQ」か「プログラミングのコード生成」くらいしか有用な活用方法が見いだせていないのが現状なのです。
そんな状況に一石を投じたのがAppleです。
2024年6月、Appleは開発者向けのイベント「WWDC24」にて独自の人工知能「Apple Intelligence」を発表しました。Apple Intelligenceの特徴は、一般的な生成AIのようにブラウザやアプリからアクセスするのではなく、OSレベルで組み込まれていることです。