Linuxって何だろう?
Linux(リナックス)は、サーバやスーパーコンピュータで使われることが多いオペレーティングシステムだ。Linuxをベースにして開発されたオペレーティングシステムはスマートフォンのオペレーティングシステムになっていたり、コンシューマ向けの組み込み機器に入っていたり、気がつかないだけで世界中で使われている。
とはいえ、Net Applicationsの報告によると、2018年4月時点でデスクトップおよびノートPC向けのオペレーティングシステムとしては、Windowsが88%を超えるシェアを持っている。パソコンを使っているユーザーの10人に9人はWindowsを使っている換算になる。Macは10人に1人が、Linuxは100人に2人くらいが使っている割合だ。普通のユーザーから見れば、Linuxはとてもマイナーな存在だ。
オペレーティングシステム | 2018年4月シェア |
---|---|
Windows | 88.42% |
Mac OS | 9.19% |
Linux | 1.93% |
Chrome OS | 0.29% |
Unknown | 0.16% |
年間の推移を見ると、多少の上下はあるもののWindowsは常に90%近いシェアを確保している。一方、Linuxのシェアは増加しているとはいえ、2%未満にとどまっている。母数が大きいので2%でもかなりの数なのだが、割合で見ると小さい。
では、なぜこのタイミングでLinuxの連載を開始するのかというと、それは昨年、MicrosoftがWindows上でLinuxを利用できるようにしたからだ。最新のWindows 10では、Linuxを簡単に導入することができる。しかも、開発が活発に進められており、これからもっと便利になる予定だ。ここ数年、MicrosoftはLinuxとの距離を縮めている。
さらに、クラウドやAIがITのトレンドになりつつあることも本連載を始めるきっかけになっている。クラウドサービスやAIはLinuxとあわせて使われることが多く、日本マイクロソフトは昨年に「AzureのLinux利用率を1年で60%以上に増やす」といったコメントも出している。
これまで、WindowsユーザーがLinuxを利用する際、壁があったことは間違いないが、Windows 10においてLinuxの導入が簡単になったことで敷居が下がったというわけだ。
Microsoft StoreからLinuxを手軽に導入できるように
Windows 10を使っているなら、Microsoft Storeで「Linux」と検索してみよう。Ubuntu、openSUSE Leap、SUSE Linux Enterprise Server、Debian GNU/Linux、Kali Linuxといったアプリケーション(オペレーティングシステム)が見つかると思う。これらは、すべてLinux(ディストリビューション)であり、今後もっと増えるかもしれない。
本連載はWindowsユーザーを中心に、Windowsの操作と比較しながら、Linuxの基礎知識を説明していくことをテーマとしているので、Linuxの構造自体は詳しく説明しないが、Linuxの種類については説明しておこう。
いわゆる「Linux」と呼ばれるソフトウェアには、いくつものエディションというか、種類がたくさんある。この種類のことを「ディストリビューション」と呼んでいる。Linuxという言葉はソフトウェアの核となる部分を指す「Linuxカーネル」という意味で使われる時、核の上に乗ってくる多くのソフトウェアをとめ上げてオペレーティングシステム「Linuxディストリビューション」という意味で使われる時、まとまりをさらに包括的に示す言葉として使われる時と、文脈に応じて使われ方が違っている。
通常、まとめあげられたオペレーティングシステムの体をなしたものはディストリビューションと呼ばれている。「Linuxを使う」という文章は、より正確には「何らかのLinuxディストリビューションを使う」という意味であることが多い。
Linuxディストリビューションはいくつもあるが、現在のシェアや日本での人気、これまでの動向を考えると、これからWindows 10で使ってみる場合は「Ubuntu」を選んでおけばよいと思う。ディストリビューションが異なるとコマンド体系が多少違ってくるのだが、どれか1つのディストリビューションで一通りの作業ができるようになっておけば、ほかのディストリビューションを使うときでもつぶしが利くので大丈夫だ。
Windows 10でLinuxが利用できると、何が便利なのか?
Windows 10でLinuxが利用できるようになったからといって、新たな技術を学ぶにはそれなりにモチベーションが必要だ。例えば、お金が儲かるとか、面倒な作業を短縮できるようになるとかだ。
では、WindowsユーザーがLinuxを学ぶことでどんな利益の得ることができるのだろうか。まず、Linuxが使えるようになると、Macといった他のオペレーティングシステムも扱いやすくなる。詳しい説明は省くが、MacにはFreeBSDというLinuxのようなオペレーティングシステムのコマンドが移植されているのだ。よって、Linuxの使い方がわかると、Macのターミナルでの作業もわかってくるようになる。
さらに、手抜きができるようになる。Linuxには標準で多くのツールが同梱されている。今までMicrosoft Excelで処理していたような作業も、こうしたツールを使うと自分で簡単なプログラムを組んで処理できるようになる。ここまで到達できれば儲けものだ。
LinuxにもWindowsのようなGUIプラットフォームが存在するので、マウスで操作することもできるのだが、Linuxを使う場合の真骨頂はコマンドプロンプトのようなCUIであるシェルだと思ってほしい。これまでWindowsでGUIしか使ってこなかったユーザーには、この連載でCUIの魅力を感じていただきたい。使えるようになればこれほど強力なツールはない。
次回から、WindowsにLinux環境を構築した後に、Windowsと比較しながらLinuxの操作方法までわかりやすく説明していく予定だ。難しい内容にはしないつもりなので、ぜひLinuxを楽しんでもらえればと思う。