ノベルは今年、仮想化とクラウドコンピューティングにフォーカスした製品を積極的に展開する予定。「IT業界のパラダイムシフトが確実に来ていると感じている。Linuxや仮想化技術など"ノベル=技術に強い"というイメージを武器に、企業インフラのあり方を変えるソリューションを提供していきたい」(徳永氏) |
だいぶ間があいてしまった本連載、ようやく第2回目をお届けできることになりました。これからはもうすこし短いスパンで掲載できるはず……である(すみません>各方面)。
さて、今回ご登場いただくのは米Novellの日本法人であるノベル 代表取締役社長の徳永信二氏。2009年5月に同社社長に就任した。
徳永氏は1970年生まれの39歳。代表取締役社長としてはかなり若いほうだが、「海外の企業では私くらいの年齢の社長やCEOはざらにいますよ」とさらり。ノベルの前に同じく外資のボーランドで代表取締役社長を務めたキャリアをもつためか、年齢によるプレッシャーは少ないように思える。
そうは言ってもやはり外資のほうが若くして組織のドライブを任せられるケースが多いのは事実。「私自身は外資のほうが性にあっていたと思う。外資の場合、自由にやらせてもらえる範囲は大きいが、その一方で成果に対しての責任も相当求められる」 - 国内/外資の両方の営業畑でキャリアを積んできた徳永氏は、「与えられた環境にあって、きちんとパフォーマンスを出す」ことをつねに心がけてきた。つまり、具体的な目標値を期のはじめに定め、それをクリアする、もし達成できなければ、なぜできなかったのか、その理由を周囲に対して伝える努力を怠らない。そして、結果を出した人間にはそれなりの評価を与えられるという外資のスタイルのほうが、同氏にとっては「おもしろく」感じられたようである。
だが若いうちに組織の運営を任されるようになれば、必然的に自分よりも年上の部下をもつコトになる。やりづらかったりする場合も多分にあるのでは? とつい、勘ぐってしまうのだが、徳永氏は「あまり意識したことはない」とのこと。もちろん自分より年齢が上の人間に対して敬語を使うなどは当たり前だが、それ以外はさして気にならなかったという。「キャリアを積むにあたっては35歳くらいが大きなターニングポイントになると思う。マネジメントの道に進むか、スペシャリストとして生きるのか。ここできちんと自分を見極めないと不幸になってしまう可能性が高い」、そして営業のスペシャリストでもあった徳永氏は、マネジメントの道を選択し、組織のリーダーとなることをみずからに課した。「人によって選ぶ道はもちろん異なる。ただ、最大限の結果を長く出していけるほうを選ぶべき。そして決めたら、今までとは違う一歩を踏み出す勇気をもってほしい」とアドバイスする。メンバーが年下であろうが年上であろうが、リーダーはメンバーとビジョンを共有していく義務がある。リーダーとしてあるべき姿を追い求めていれば、自然と周囲も年齢のことを気にしなくなるのかもしれない。
39歳という働き盛りの年齢でもあるせいか、自身はあまり休むことを考えないという。米国本社の意向もあって、日本法人でもたとえば水曜日は18時に帰宅するように推奨しているが、「強制ではない。ワークライフバランスの実践で生産性が上がるならそれでいい。要は集中して仕事に取り組むべきということ。私自身はすこしワーカホリックの気があるが(笑)、週に1回のゴルフは何よりの楽しみ」とのこと。ちなみに出社は(どんなに前日飲んでも)毎朝8時だという。
20代から数回の転職を経験してきた徳永氏だが、つねに「3年で営業のトップに」「1年後にはセールスマネージャに」と細かく目標を設定し、それをクリアすることを繰り返しながら、現在の地位に至った。リーダーとなることを決めてからは、それまで以上に、さまざまな人びとと交流を重ねたという。「トップを目指す若い人に伝えたいのは、一流の人物と接しなさいということ。本物から吸収できるものを大切にしてほしい。自分と同じくらいの立場の人間と飲み会ばかりしていても成長は望めない。もちろん、たまにはいいけど(笑)」 - そして自分自身には「枯れたら、おわり」と言い聞かせているという。「もう、これくらいでいいや、と思うと成長が止まる。年齢は関係ない。つねにモチベーションを保つ努力を忘れないようにしたい」 - 社長になったからゴール、ではない。成長をとめることは、自身にとっても会社にとっても許されないことなのだ。ノベルの日本市場でのシェア拡大と、自分自身の器を大きくすること - この2つは徳永信二にとって当面、追い続けなければならない目標のようだ。
好きな言葉や座右の銘にしているフレーズは? との質問に『宮本武蔵』(吉川英治 著)の「波騒は世の常である。波にまかせて、泳ぎ上手に、雑魚は歌い雑魚は躍る。けれど、誰か知ろう、百尺下の水の心を。水のふかさを」をそらんじた徳永社長。「周囲がいろいろで騒いでも、本質は何もかわらない」とのこと。深い!! |
(イラスト ひのみえ)
プロフィール
徳永信二 (TOKUNAGA Shinji)
ノベル 代表取締役社長。千葉県出身。1970年10月4日生まれの39歳。1995年3月 法政大学文学部 卒業。同年4月に東京機器 入社。以後、フジ産業、サイトデザインを経て、1999年 ボーランド入社、2002年には同営業部長、2003年には同営業本部長に。2006年8月、36歳で同 代表取締役カントリーマネージャー 兼 営業統括本部長に就任、同年11月には代表取締役社長に就任する。2007年1月よりBorland Software Corp バイス・プレジデントを兼任していたが、2009年4月をもって同社を退社し、5月にノベルに入社、代表取締役社長として就任し、現在に至る。趣味は本文にもあるようにゴルフとジョギング。「昨年、タバコをやめたんですよ。強い禁煙の意思もなく(笑)、なんとなくやめられたので。健康にはたしかにいいんですが、ひとつ困ったことがあって…ゴルフの成績が一時ガタ落ちになりました。なんとなく、タバコでリズムをとっていたんでしょうね。今はそんなことないですが(笑)」