Flashアニメ作家・青池良輔がクリエイターになる方法を熱く伝授する連載「創作番長クリエイタ」。連載第21回では、Flashアニメーションでキャラクターを活き活きと見せる表情の演出を考える。

目パチ

前回前々回とFlashでのアニメーション製作の方法について考えてみました。次にキャラクターを活き活きと見せる方法について考察したいと思います。

どんなに上手に描いたキャラクターでも、1枚の絵ではただのイラストの様に見えてしまいます。ここでアニメーションでは、制止しているキャラクターをより活き活き見せる様に「目パチ」という、いわゆる「まばたき」を入れてゆきます。普通の人をビデオで撮影すれば、よほど特殊な人でもない限り結構瞬きをしているものです。「目パチ」を入れるだけで、より自然に見える様になります。

サンプル動画(目パチあり、目パチなし)

このサンプル動画では、1秒15フレームの動画で、2秒に一度、1フレームだけ目を閉じている絵を入れてあります。これだけでも、「動いていないけど見ていられる絵」になっていると思います。ただ、実際の場合も考えると、2秒に必ず1回まばたきするというのも機械的な感じがしますので、2秒のまばたきの3秒後にもう一度、まばたきするコマを入れ、無機質だったタイミングに変化をもたせます。この様にすることで、「誰かの話を聞いている芝居」を見せるカットでも、ちょっとの間は見ていられる絵になるのではないかと思います。

サンプル動画(目パチ2タイミング)

また、上のサンプルでは、開いている目に対して、1コマの閉じている目を入れてみましたが、もう少し、丁寧にやってみるとどうなるのでしょうか。パターンとして下の3種類を比較してみたいと思います。

パターン1 1コマ閉じ目
パターン2 1コマ閉じ目+1コマ半開きの目
パターン3 1コマ半開きの目+1コマ閉じ目+1コマ半開きの目

サンプル動画(目パチ3種類)

絵の多い方が丁寧に目を閉じているように見えますが、3番では、人間が反射的にするまばたきにしてはタイミングがゆっくり過ぎるような感じがします。しかし、まばたき自体に何か芝居的な意味を持たせたい時には、丁寧に描いても良いでしょう。

目パチの描き方は、開いている目に対して、閉じている目は目の下の縁のラインか、目全体の1/5ぐらいの所に、眼球の丸さをイメージして閉じている目を描くと上手くゆきます。目の真ん中で瞼を閉じてしまうと、下にも瞼のあるように見え、爬虫類っぽくなってしまいます。また、半開きの目は、目の半分よりは、上のラインから目全体の2/5ぐらいのところにまぶたを描くと、目の開く速度の緩急を感じられると思います。

また、まばたきの使いどころとして、「視線の移動」があります。視線を移動させる時に、右を向いている黒目が、アニメーションで左に向くと「ぐるり」と、視線を走らせている印象になります。もっと軽く「ふと視線を下ろす」という芝居をさせたい場合、ぱっと黒目だけが移動すると、見た目にもやや違和感を感じることがあります。その場合、移動する目線の間に一度「閉じ目」の目パチをいれることで、自然に視線を繋ぐことが出来ます。

サンプル動画(目線の移動)

実際、人間の眼球の動きはかなり素早いので、1コマの閉じ目をはさんで視線を移動してもスムースに見えると思います。ただ、通常のまばたきとは、少しだけニュアンスを変えたいというところもあり、僕は、1秒15フレームのアニメーションならば「通常のまばたきは1フレームの閉じ目」、「視線移動は1フレームの閉じ目と、1フレームの半開きの目」というふうに使い分けています。

またこの目パチに、まゆ毛を追従させることで、目線だけでなく表情の切り替えにも応用することが出来ます。一度目を閉じ、まゆ毛の位置も多少下がった絵を入れることで、極端な表情、感情の変化を繋ぐことにも使えます。

サンプル動画(表情の変化)

また、この「目パチ」で、文字通り「目をパチパチさせる」という芝居を付けることもできます。この場合、近いタイミングで、閉じ目を入れれば良いのですが、キャラクターの感情によって、通常の閉じ目より、目尻があがっている「びっくりして閉じた目」を描いてみても、良いかもしれません。ほんのちょっとの手間で、効果の大きな表現方法ですから、常に使うぐらいの感じでもいいと思います。

青池良輔


1972年、山口県出身。大阪芸術大学映像学科卒業後、カナダに渡り映像ディレクター、プロデューサーとして活動。その後、Flashアニメで様々な作品を発表。短編アニメやCFを多数手がける。最新作はDVD『CATMAN』(2008年)、『ペレストロイカ ハラペコトリオの満腹革命』(2008年)。『藤子・F・不二雄のパラレル・スペース DVD-BOX』(2009年)では、 谷村美月主演の実写作品「征地球論」の監督と脚本を担当。森永アロエヨーグルトのWebサイトで、最新Flashアニメ『BABY&GIRLS アロ恵』公開中。全国のTOHOシネマズで本編前に上映されている短編『紙兎ロペ』では、アニメーション制作を担当。