Flashアニメ作家・青池良輔がクリエイターになる方法を熱く伝授する連載「創作番長クリエイタ」。連載第17回からは、Flashアニメ制作を実践する。
Flashで絵を描く
今回から、「Flashアニメーション制作 実践編」ということで、作品制作の過程に沿って連載を進行してゆこうと思っています。一口に「Flashアニメ」と言っても、「Adobe Flash」自体がアニメーション専用ツールという訳でもないので、作り方は人それぞれに結構違っていたりします。この連載では、僕の独断と偏見で「こういう風に作ってます!」と提示していく形になるでしょうが、そのあたりはご理解ください。ということで、今回はFlashで絵を描くということに触れてみたいと思います。Flashでお絵描きをする場合の2大派閥に、鉛筆ツールとブラシツールがあります。
鉛筆ツールとブラシツールの特徴
鉛筆ツールは、描いたストロークがそのままベジェ曲線になるツールです。そのため、線の太さや、ラインのカーブ等を後から調整する事ができます。オプションの鉛筆モードの設定(「ストレート」、「スムーズ」、「インク」)やプロパティのスムージング設定によって、手描きの線をどこまで滑らかに補正するかを決める事ができます。またFlashの鉛筆ツールで描く線の特徴として、ラインが重なり合うと、その交点で自動的に分割されますので、ちょっと描き始めは驚くかもしれません。でも、慣れてしまえば、線がはみ出し交差するように作画し、消しゴムツールのオプションの「流し消す」ではみ出した部分だけを消し、塗りの時に隙間のない奇麗な作画が可能です(オプションの「オブジェクト描画」が選択されていると、描いたものがオブジェクトとなり、それぞれに干渉する事はなくなります)。
ブラシツールは、その名の通りブラシっぽい線がかけるツールです。タブレットの筆圧感知をオンにしておくと、様々な表情の線を引く事ができます。この線は、ベクターで描かれた「線のような形」なので、鉛筆ツールのように、線自体の長さやカーブ等を後から調整する事はできません。また、オプションでブラシの形や、太さを選択できますが、注意しないといけないのは、画面の表示比率が100%でも200%でも、選んだブラシの太さは変わらず、描かれてゆく線の太さは一定になるという部分です。ブラシツールで描いた線は、同じ色の線が交差すれば、統合されますし、違う色であれば、基本上書きし、前の線を塗りつぶす事になります。そこで、オプションの「ブラシモード」で、塗りがその他の塗りにどのように干渉するかを決める事もできます。
僕の場合は、デザイン色の強いパキッとした見た目やラインのキャラクター物や、きれいな直線の求められる機械等の描画には、線ツールや矩形ツール、ペンツールとも併用しながら作画できる鉛筆ツールを使い、多少なりともアナログ感が欲しいプロジェクトの時には、ブラシツールで描画するように使い分けています。線ツールや矩形ツールで描いたラインは後から「修正」→「シェイプ」→「線を塗りに変換」で、ブラシツールで描くラインのように、「塗り」でできている線に変換する事ができます。この方法を用いて、鉛筆ツールできれいなラインを描いてから「塗り」に変換し、アウトライン化されたオブジェクトのアンカーポイントを調整して、奇麗で表情のある線を引く方法もあります。
Adobe Flashのブラシツールはスムージングにちょっと癖があり、思い通りのブラシストロークの結果を得るには、スムージングの調整や、タブレットサイドの設定を触りながら一番自分にしっくりくる感触を掴まないと、使いづらいも思われる人もいるようです。個人的には、最終的には鉛筆ツールで仕上げる予定のプロジェクトでも、絵コンテや下書きの時には、ブラシツールでガシガシ描いくのが気持ちいいなぁと思っています。
鉛筆ツールとブラシツールの使い分けの一例として、消しゴムツールのオプション「塗りを消す」、「線を消す」など、一方だけを消す設定を使い、塗りで描いた絵に、鉛筆ツールの「線」で色の塗り分け線を描き、着色。着色が終わった後は、「線を消す」オプション状態の消しゴムでクリーンナップをしてしまう方法もあります。
またこれらのツールとは別に、「Illustrator」等でおなじみのペンツールもあります。奇麗なベジェ曲線を描くには便利なツールです。クリック、クリックで、直線。クリックしてそのままドラッグするとアンカーポイントにハンドルができて、曲線を描く事ができます。アニメーションを制作するときには、鉛筆ツールで描く方が直感的で、ほとんど使用した事がないのですが、ロゴとか描などを描くには重宝するかもしれません。
実際に作画してゆく上で、鉛筆ツールで「線」、ブラシツールで「塗り」の両方をいじり倒してみて、自分の作品に似合う線を探してみられてはいかがでしょうか?
青池良輔
1972年、山口県出身。大阪芸術大学映像学科卒業後、カナダに渡り映像ディレクター、プロデューサーとして活動。その後、Flashアニメで様々な作品を発表。短編アニメやCFを多数手がける。最新作はDVD『CATMAN』(2008年)、『ペレストロイカ ハラペコトリオの満腹革命』(2008年)。『藤子・F・不二雄のパラレル・スペース DVD-BOX』(2009年)では、 谷村美月主演の実写作品「征地球論」の監督と脚本を担当。森永アロエヨーグルトのWebサイトで、最新Flashアニメ『BABY&GIRLS アロ恵』公開中。全国のTOHOシネマズで本編前に上映されている短編『紙兎ロペ』では、アニメーション制作を担当。