われわれが普段何気なく使っている「自由」という言葉は、実は仏教に由来する言葉で、明治時代に西洋思想が日本に入ってきた時「freedom」「liberty」などの単語にこの「自由」という訳が当てられたとされています。では、仏教の哲学における「自由」とはどんなものなのでしょうか。

仏教では「自らを由とする」、つまり自分自身をたよりに生きるという意味で「自由」という言葉が使われます。ブッダは弟子たちに「他のものではなく、自らを拠り所として生きていきなさい」と教えていました。自分自身に由来するものではない、周囲の物事や実体のないものに惑わされることなく、主体的に生きることこそが「自由」であると考えたのです。

この考え方からすれば、我々が普段「思い通りにふるまっている」と感じていることの多くは、実はただの思い込みに過ぎなかったりします。

例えば、「ああしたい、こうしたい」といったような欲望は、自分の思考の中に勝手に浮かんできては勝手に消えていくもので、自分が欲望を操作して心の中に浮かばせているわけではありません。

それに従って「思い通りに」ふるまうことは、自由であるように見えて本当はただ思考の癖や傾向に振り回されているだけで、自らを拠り所とする主体的な生き方とは言えないというわけです。

他人のアドバイスや評判、流行、いかにも正しそうな言葉や理論など、手放しで寄りかかってしまいたくなるものが沢山ありますが、ただそれだけでは自分の思考の癖や傾向が強まるのみで、自分で自分を支える考え方を育てていくのは難しいでしょう。

周囲の流れや単なる癖に振り回されていると感じた場合はもちろんですが、「自分は自由だ」「自分はこういう自由を求めている」と感じている場合もあえてそれを疑ってみて、「自らに由るものではないもの」を整理してみると、発見があるなど、自分なりの考えを持って進むきっかけがつかめるかもしれません。

■こむぎこをこねたもの、とは?

■著者紹介

Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。

「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。