秋になり、空に浮かぶ月がいつもより綺麗に見えるのが楽しみになってくる季節です。今週のこねたものは月見うどんとなって、お椀の中に卵を浮かべながら語ります。
「掬水月在手」(みずをきくすればつきてにあり)という言葉があります。中国・唐の詩人、于良史(うりょうし)が詩の中に詠んだ言葉とされ、月夜に両手で水を掬うと、水面に映る月が両手の中に浮かんでいるという美しい情景を詠んだものです。
仏教では、たびたび月を真理に例えるというお話をしましたが、この言葉でも月は真理の象徴とされ、水を掬うことでそれを手の中に収めるという情景は「誰もが真理を手にするチャンスを持っている」という意味に解釈されます。
しかし、誰もが手にすることができるとはいえ「水を掬えば手の中に月を浮かべることができる」ということに気づいて実際に行動を起こさなければ、月は手の中に収められないわけです。
自分と他人を比べて「どうしてあの人ばかり…」と自分の持っていないものを気にしてしまいがちですが、他人のことばかり気にしていては、自分に与えられたチャンスや自分の持っている良さを見逃してしまいます。
人と自分で条件が違うことに不満を持っても、それはどうすることもできないもの。「あっちのほうがおいしそう…」と余計な思考を巡らす前に、せっかく目の前にある月見うどん、冷めないうちに召し上がれ。
■こむぎこをこねたもの、とは?
■著者紹介
Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。
「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。