気候に、体調に、自分を取り巻く環境に、何かと変化が起こりやすいこの季節。「春眠暁を覚えず」とも言われますが、疲れもたまり、ついついウトウトと眠くなってしまいます。
今週は、すややものと一緒に「眠り」や「夢」に関する哲学のお話を紹介します。東洋哲学の偉大な人物、「荘子」が自らの世界観を表すために作った物語です。
ある日、荘子は自分が蝶になって楽しく飛び回っていることに気付きました。しばらくすると目が覚めて、それが夢の中の出来事だったと気付きます。
しかし、そこで荘子は考えました。
「人間の自分が蝶になって飛んでいる夢を見ていたのか、それとも今が蝶の自分が見ている夢の中なのか?」
これは「胡蝶の夢(こちょうのゆめ)」という、荘子が残した物語の中でも特に有名なものの一つです。
夢も現実も脳が知覚している情報として同じものであって、どちらが真実でどちらが嘘ということはない、というわけです。
同じように人間の形をしていようと蝶の形をしていようと、どちらも一つの自分の意識で世界を体験していることには変わりがありません。
しかし人は「夢/現実」「人間/蝶」と言ったように、言葉によって区別を付けているのです。言葉を使うことで、もともと一つにくくれるものの中にたくさんの境界(区別)が生まれてきます。
所属や肩書き、役職、派閥、○○男子、○○女子……人間の中でも、日々数えきれないほどの区別が生まれ、その中で一喜一憂したり、時には一方の区別から他方の区別を恐れたり、見下したりもしています。
複雑なくくりの中にいることに疲れたら、言葉による区別を思考の中からいくつか捨てて、シンプルに世界を見てみると良いかもしれません。
「もともとは同じもの」と考えることで、気持ちが楽になることもあるはずですよ。
■今回、登場したのは「すややもの」
■著者紹介
Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」もリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。
「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。