「すべてのものは生まれては消滅していく」という教えの通り、ブッダにも死期が訪れます。そんな時「師がいなくなったら、我々は何を拠り所として生きていけば良いのでしょう」と嘆く弟子もいました。
その問いにブッダは、「私や他者ではなく、自分自身と法(真理)を頼りに生きていきなさい」と答えています。「自灯明 法灯明(じとうみょう ほうとうみょう)」(「灯明」は暗い道を照らす明かりという意味です)という言葉で表される教えで、ブッダの最後の教えとされています。
「法灯明」の「法(真理)」とは「変わらないものなどない(無常や無我)」「自分の身体や精神、周りの物事も思いのままにはならない(一切皆苦)」「さまざまな原因が集まって物事が生じている(縁起)」といった、この世のありのままの姿やそこから見つけ出した法則のようなものです。
これらを意識せず永遠不変のものや状態を求めたり、因果関係のない妄想に囚われたりすると、迷いや苦しみに振り回されてしまうというわけです。
「自灯明」は自分の思うまま、欲望のままに生きよということではなく、常に変化し続ける自分の身体や心の状態を正しく観察できてこそ(正念)、他のものに依存することなく生きていくことができるということです。
経典や伝統、支持されている言葉、権威ある人の言葉、ブッダの説いた哲学でさえも、盲信したり依存したりせず、自らの修行や自らの体験によって確かめていくべきであるとブッダは考えました。
「成功している人は皆これをやっている」「このやり方が多くの人に評価される」「誰にも褒められないから価値はない」「皆この考え方を支持している」「偉い人が言っていた」「週刊こむぎに書いてあった」…
身の周りは色々な情報であふれていて、ひたすら振り回されてしまいそうになりますが、自分を支えるものを外側にばかり求めると、いつまでもグラグラと不安定な心でいなくてはなりません。
ただただ周りの情報や他者の評価・反応に流されるのではなく、自分自身で確かめ、自分自身の内面を通じて消化してこそ、糧となる答えが見えてくるはずです。
■こむぎこをこねたもの、とは?
■著者紹介
Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。
「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。